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2020.12.28

STARS展から石岡瑛子展まで。年末年始も見られる展覧会をピックアップ

日本現代美術のスター・アーティストたちから石岡瑛子、河鍋暁斎まで、年末年始も見ることのできる展覧会を首都圏を中心にピックアップ。予約方法や注意事項については、各館の公式ウェブサイトを参照してほしい。

「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」展示風景より、奈良美智《Voyages of the Moon(Resting Moon)/ Voyage of the Moon》(2006)と《Miss Moonlight》(2020)
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 まず、年末も見られる展覧会としては、六本木・森美術館の「STARS展:現代美術のスターたち―日本から世界へ」(年末年始無休、会期は1月3日まで)に注目してほしい。本展は、村上隆、李禹煥(リ・ウファン)、草間彌生、奈良美智、杉本博司、宮島達男といった、日本現代美術の第一線で活躍するスター・アーティスト6名が集結する展覧会だ。それぞれの初期作品と近作を中心に紹介し、日本固有の社会的、文化的、経済的な背景をふまえながら、各アーティストの実践が世界からどのように評価されてきたのかを考えたい。

「STARS展」展示風景より、村上隆のセクション (C) 2020 Takashi Murakami / Kaikai kiki Co., Ltd. All Rights Reserved.

 箱根のポーラ美術館も年末年始は無休で開館。同館では現在、ポーラ美術館のコレクション約80点を軸に、国内外から約50点を借用し日仏2つの国双方の「美の往還」をたどる展覧会「Connections - 海を越える憧れ、日本とフランスの150年」が開催中。黒田清輝の師であるラファエル・コランによる幻の作品が120年ぶりに公開されるという点でも注目を集めている。

 上野の森美術館の「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING& QUEEN展 ─名画で読み解く 英国王室物語─」も年末年始に休まずオープンする。世界屈指の肖像専門美術館である「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー」から約90点を紹介する本展は、王室の肖像画を通じて君主制のあり方や、肖像画がアート作品として進化していく過程をたどるものだ。

「ロンドン・ナショナル・ポートレートギャラリー所蔵 KING& QUEEN展 ─名画で読み解く 英国王室物語─」展示風景より、左からゴドフリー・ネラー《アン女王》(1690頃)、ウィレム・ウィッシング《メアリー・オブ・モデナ》(1685頃)、ヤン・ファン・デル・ファールトに帰属《メアリー2世》(1692-94頃)

 また、三菱一号館美術館の「1894 Visions ルドン、ロートレック展」(12月31日~1月1日休館)とBunkamura ザ・ミュージアムの「ベルナール・ビュフェ回顧展 私が生きた時代」(1月1日休館)も年末は開館する。

 前者は、三菱一号館が竣工した1894年という年を軸に、フランスの画家オディロン・ルドンやアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック、そして同時代の日仏の画家たちを紹介するもの。ルドンとロートレックの木炭とパステル画、ピエール=オーギュスト・ルノワールやポール・セザンヌらの油彩画、ゴーギャンの多色刷りの木版画、そして山本芳翠、藤島武二など明治洋画の旗手たちの作品など140点以上が一堂に紹介されている。

「1894 Visions ルドン、ロートレック展」展示風景より、左はアンリ・ド・トゥールーズ=ロートレック《アリスティド・ブリュアン》(1893)

 いっぽう後者は、サルトルの実存主義やカミュの不条理の思想と呼応し、戦後のフランスで一世を風靡した具象画家ベルナール・ビュフェの画業をたどる展覧会。「時代」をキーワードに据え、世界一のコレクションを誇る静岡県のベルナール・ビュフェ美術館が所蔵する油彩を中心とした約80点を展示している。

 そのほか、大阪の国立国際美術館に巡回した「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」(12月30日〜1月2日休館)や、静岡県熱海市にあるMOA美術館のコレクションから肉筆美人画や浮世絵版画を紹介する展覧会「所蔵 浮世絵展 江戸の華」(年末年始無休)、熊本市現代美術館で開催中の、ムーミンの奥深い物語とアートとしての魅力にふれる展覧会「ムーミン展 THE ART AND THE STORY」(12月31日〜1月1日休館)も年末に見られる。

「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」東京会場の展示風景より、フィンセント・ファン・ゴッホ《ひまわり》(1888)

 1月2日から見られる展覧会のなかでは、東京都現代美術館で開催中の「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展(12月28日〜1月1日休館)をチェックしてほしい。アート・ディレクター、デザイナーとして世界を舞台に活躍した石岡瑛子(1938〜2012)。その世界初となる大規模回顧展である本展では、グラフィックデザインから、映画やオペラ、サーカス、演劇、ミュージック・ビデオなどの衣装デザインまで、膨大な作品群を展示。石岡のデザイナー人生を総覧する貴重な機会だ。

「石岡瑛子 血が、汗が、涙がデザインできるか」展示風景より、『ミシマ─ア・ライフ・イン・フォー・チャプターズ』の金閣寺

 東京国立近代美術館の「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」(12月28日〜1月1日休館)は、人間がその生命を維持するうえで欠かせない「眠り」に関する表現にフォーカスした展覧会。国立美術館の約4万4000点におよぶコレクションから、ゴヤ、ルーベンス、クールベから、河原温、内藤礼、塩田千春まで33人のアーティストによる119点の作品が一堂に展示されている。

「眠り展:アートと生きること ゴヤ、ルーベンスから塩田千春まで」展示風景より

 また、河鍋暁斎の素描、下絵、画稿、宴席などで即興で描かれた席画、絵手本などだけで構成された東京ステーションギャラリーの展覧会「河鍋暁斎の底力」や、江戸時代から1900年のパリ万国博覧会に至る約300年間に生みだされた品々を選びとって展示するサントリー美術館の展覧会「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」(いずれも12月28日〜1月1日休館)も1月2日からオープン。正月から日本の伝統文化に触れてみてはいかがだろうか。

「美を結ぶ。美をひらく。美の交流が生んだ6つの物語」展示風景より、左から《藍色ちろり》(18世紀)、《色絵花鳥文六角壺》(17世紀)

 日本の文化に触れることのできる企画としては、東京国立博物館による恒例の正月企画「博物館に初もうで」(会期は1月2日〜31日)もある。2003年より実施されてきた同企画は、今年で18年目の開催を迎える。今年の干支「丑(ウシ)」をテーマにした作品の特集や国宝である長谷川等伯《松林図屛風》など、新年の訪れを祝する吉祥作品や名品が同館の各展示室に登場する。

 首都圏以外では、金沢21世紀美術館で開催されている、ヨーロッパを代表するアーティストであるミヒャエル・ボレマンスとマーク・マンダースの2人展「ダブル・サイレンス」(12月28日〜1月1日休館)が1月2日からオープン。ふたりが見せる静寂に向き合ってほしい。また、「小沢剛展 オールリターン―百年たったら帰っておいで 百年たてばその意味わかる」(12月26日〜1月1日休館)を開催中の弘前れんが倉庫美術館や、青森市出身の画家・阿部合成の過去最大規模の回顧展(12月28日〜1月1日休館)を開催中の青森県立美術館も2日から開館する。

「ダブル・サイレンス」展示風景より、マーク・マンダース《4つの黄色い縦のコンポジション》(2017‒2019)