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藤嶋咲子(アーティスト)✕吉田寛(美学者・ゲーム研究者)対談:鑑賞者をプレイヤーへ、沈黙を表現へ。「作動するアート」としてのシリアスゲーム【3/4ページ】

展覧会「Re: Play」にインストールされる個の言葉

──藤嶋さんが《SAVE 0 : マインドクエスト》で収集した対話は、3月にCCBTで開催される展覧会「Re: Play」にどのように生かされるのでしょうか。

藤嶋 展覧会「Re: Play」のメインとなる作品は、アンリアルエンジン(Unreal Engine)を用いたデジタルゲームです。《SAVE 0 : マインドクエスト》が「対話を通じた声の収集」の場だったのに対し、このデジタルゲームでは、収集された生々しい「本音」を語るNPC(ノンプレイヤーキャラクター)と、プレイヤーが対話するという構造になっています。

 このゲームにはAIが搭載されており、ボードゲームから得られた多様な属性の声をもとに、NPCたちがリアルタイムでプレイヤーと会話を繰り広げますが、最大の特徴はその「ギャップ」にあります。ゲームエンジンによってつくられた、顔の表情や毛穴の一つひとつまで描き込まれた実存感のあるキャラクターが、匿名性を担保されたまま、誰かの「本音」を語り出します。まるで本当にそこに匿名の誰かが存在しているかのような、生々しいリアリティがそこに宿るわけです。今回の目的は、正確な情報の伝達ではなく、自分とは異なる属性の誰かが「こう感じているかもしれない」という想像力をプレイヤーに持ってもらうことにあります。

ゲームインスタレーション「Re: Play」の開発風景

吉田 「プレイヤーとNPCの境界を曖昧にする」という試みは、非常に現代的な批評性がありますね。日本の伝統的なRPGゲームのお約束としては、村人に話しかければ決まったセリフが返ってきます。しかし藤嶋さんの作品では、そこに現実の他者の実存が流れ込んでくる。

藤嶋 ごく当たり前のことですが、現実世界でも自分以外のすべての人にとって、自分はNPCなんですよね。でも、街ですれ違う一人ひとりは、それぞれの悩みや物語を抱えた「プレイヤー」でもある。それを、アバターというフィルターを通したAIとの対話によって、直感的に理解させたいと考えています。

藤嶋(左)と吉田(右)、CCBTにて

編集部