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陶芸と布が呼応するIM MEN「DANCING TEXTURE」とは。京都国立近代美術館「加守田章二とIM MEN」でデザインチームが語る

三宅一生の「一枚の布」の思想を男性の身体という視点から捉え、ものづくりを追求するメンズブランド、IM MENの2026年春夏コレクション「DANCING TEXTURE」は、陶芸家・加守田章二の作品との濃密な対話から産声を上げた。単なる柄の引用ではなく、陶器が持つ圧倒的な質感や、作陶の背後にある哲学を、いかにして衣服へと昇華させたのか。デザインチームはいかに加守田の足跡を辿ったのか。加守田の作品とコレクションがそろう、京都国立近代美術館の特別展示「加守田章二とIM MEN」の会場で話を聞いた。

聞き手・構成=編集部 ポートレート撮影=来田猛

職能の境界を溶かし、横断的に「物」と向き合う

──本日はIM MENのデザインチームに所属する、小林信隆さん、河原遷さん、板倉裕樹さんに、加守田作品と2026年春夏コレクション「DANCING TEXTURE」を同時に展示する特別展示「加守田章二とIM MEN」の会場に集まっていただきました。まずはみなさんのIM MENにおける役割について教えてください。

小林信隆 私はテキスタイルエンジニアとして、衣服の素材としてのテキスタイルの制作統括を担っています。

河原遷 私と板倉の2人は、デザインとエンジニアリングの双方を担当しています。IM MENのチームは、役割を完全に分断しないのが特徴です。従来はデザイナー、パタンナー、テキスタイルデザイナーと職能が分かれているのが一般的ですが、僕らのチームではその境界が極めて曖昧です。私の場合、デザイン画を描くこともあれば、自分でパターンを引くこともありますし、服だけでなく靴や眼鏡、バッグまで横断的に手がけます。

板倉裕樹 私はレディースのパタンナーとしてキャリアを積んできましたが、このブランドの立ち上げを機にメンズを担当することになりました。役割としては河原と同じですが、今回のコレクション内では、とくにメッセージ性の強いものやコンセプチュアルなもの、特徴的なカッティングの開発を主に担当しています。

左からIM MENデザインチームの板倉裕樹、河原遷、小林信隆。「加守田章二とIM MEN」(京都国立近代美術館)会場にて

──河原さん、板倉さんがおっしゃっていた、職能の境界を越えるような体制は、ブランドとしての実験的な試みなのでしょうか。

河原 これは、ものづくりに対する根源的な考え方が反映されています。「プロダクトは単一の要素だけでできているわけではない」という信念のもと、スタイル、機能、素材のすべてが完璧に調和して初めて、真に優れたプロダクトが生まれると考えています。しかし、職能で完全に分断してしまうと、調和のための連携が非常に難しくなります。だからこそ絵を描くだけのデザイナーではなく、絵では表現できない細部を具体的に形にできる知識と技術を持ってほしい、という考えがこのチーム体制には込められています。それぞれの領域に深く精通しながらも、隣の領域へと踏み込んでいく。このクロスオーバーがあるからこそ、セクション分けされた組織では不可能な、有機的なものづくりが可能になるんです。

加守田章二の作品との邂逅、陶器を「着てみたい」という直感

──今回のコレクション「DANCING TEXTURE」の着想源となった、陶芸家・加守田章二さんとの出会いについてお聞かせください。

河原 最初は加守田さんの作品《壺》(1978)との出会いから始まりました。その濃淡のあるストライプは、まるでかつてISSEY MIYAKEの70年代のコレクションで発表されたファブリックだと言われても信じてしまうほどにブランドのイメージとぴったり重なるものでした。そこから、この陶器を着てみたいという思いはすぐに湧き上がりました。

加守田章二《壺》(1978)、奥が本作を着想源とする《CURVINESS SHIRT》

 ISSEY MIYAKEのアーカイブを見ると感じますが、50年前の衣服は、いまでいう「工芸」に近いものだった時代があったと思います。手仕事の痕跡が残った衣服には、いまの均一な工業製品からは決して感じ取れない野性味が宿っていた。それを、加守田さんの作品を見たときにも同じように感じたんです。加守田さんの作品を通して感じた、服飾において失われつつある野性的で粗野な力をいま改めて伝えたい。それが今回のプロジェクトの原点でした。

 興味を持って加守田さんの作品を調べ、作品を収蔵している美術館を回ってみると、加守田さんが本当に様々な種類の作品をつくっていることがよくわかりました。作品ごとに違うアプローチがあって、それを衣服に落とし込むときに、どのように翻訳できるのかを考えながら、1着ずつ違うアプローチで素材やパターンを考えていきました。

コレクションと向かい合うように会場に並ぶ加守田章二の作品

──加守田さんのバリエーション豊かな作品のなかで、どの作品をコレクションに取り入れるのかを判断する選定はどのようなプロセスで行われたのでしょうか。

河原 どの作品も魅力的だったので、初めに候補に挙げたものでも30種類を超えるものがありました。そこから絞り込むために、それぞれを簡易的に紙や布にプリントしてイメージを探っていきました。ポイントとなったのは、その過程において衣服としてのイメージが立ち上がっていくかですね。同時に、布に落とし込んだとき、加守田さんの作品の持つ印象がちゃんとそこに写し取られるか、という感覚的な基準ではあったと思います。

編集部