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原宿の地でリニューアルしたCCBT。SIDE COREが語るアーティストと都市をつなぐ場のあり方

アートとデジタルテクノロジーによる創造拠点「シビック・クリエイティブ・ベース東京(CCBT)」が、渋谷から原宿へと拠点を移す。新しいスペースでこけら落とし個展をおこなうのは、CCBTが展開してきたコア・プログラム「アート・インキュベーション・プログラム」の2022年度アーティスト・フェローであるSIDE COREだ。メンバーである松下徹、高須咲恵、西広太志、播本和宜が個展の内容とCCBTとのつながり、今後への期待までを語ってくれた。

聞き手・文=山内宏泰 撮影=手塚なつめ

旧CCBTにて、左から松下徹、高須咲恵、播本和宜、西広太志

リニューアルのこけら落とし展「新道路」とは

──シビック・クリエイティブ・ベース東京[CCBT]は、2022年の開所以来、アートとデジタルテクノロジーを通じて人々の創造性を社会に発揮するための活動拠点として機能してきました。なかでも、公募・選考によって毎年度5組のクリエイターを選定し、彼らが「CCBTアーティスト・フェロー」として、企画を実現していくアート・インキュベーション・プログラム(AIP)は、CCBTの活動の大きな軸のひとつとなっています。

 CCBTはたんなる展示のための場所ではなく、都市の公共性と文化との結節点を目指してきたことが、これまでの活動を見るとよくわかります。原宿への移転リニューアル記念展「新道路」(〜2026年1月25日)は、2022年度のアーティスト・フェローであったSIDE COREによって開催されるわけですが、みなさんのこれまでの活動もまた、場や公共と文化の新たな関係性を問い続けるものだったと思います。新たなCCBTでの個展は、どのような内容なのでしょうか。

松下徹(以下、松下) 《living road》という映像作品を主に展示します。ロードムービーを題材にしたもので、異なる場所をつなぐことがテーマになっています。ひとりのフォトグラファーが車を運転して、東京から能登半島まで1日かけて出かけていき、能登半島の写真を撮るという内容で、その途中に様々な出来事が起こります。戦後日本の高速道路の歴史になぞらえながら重要な場所がフォーカスされており、都市は独立して存在するのではなく、他の地域とのかかわりのなかで成り立っているものであることを示す内容となっています。

SIDE CORE living road 2025

 それに加えて会場では、制作の背景にあるリサーチの過程やインスピレーション源など、資料の展示も行います。現在、金沢21世紀美術館で開催中の個展「Living road, Living space /生きている道、生きるための場所」に同名作を出品していますが、今回の出品作はその東京バージョンという位置づけとなります。

SIDE CORE rode work. under city 2025

CCBTとの共創

──「アート・インキュベーション・プログラム」は、アーティスト・フェローに対して経済的・環境的なサポートを始め、メンターをはじめとする専門家によるアドバイスや技術支援等、作品制作のための多角的なサポートを行うことを謳っています。SIDE COREが作品を発表するうえで、CCBTとの共創は制作にどのような変化をもたらしましたか?

播本和宜(以下、播本) 「アート・インキュベーション・プログラム」は、アーティストが制作することをサポートし、そのプロセスやアイデアを東京に暮らす人たちと共有していくことだと聞きました。表現を成果物だけではなく、制作のプロセスを重要視するという考えがあります。これを尊重したいと考えている機関は多いですが、現実は理想の域を抜けていません。CCBTは実際にそれを実現しようとしているのが面白いと思います。プログラム初年度となる2022年度のフェローとして「rode work ver. under city」という作品を制作しましたが、テクノロジー面でのサポートの手厚さを感じられましたし、渋谷にメディアアート関連のスペースができるということに対する期待感もありました。

高須咲恵(以下、高須) スタジオなどアートの施設は、作業場の確保の都合もあって郊外にあることが多いですが、渋谷という都市空間の中心に拠点を設けるというのは、おもしろいなと思っていました。雑踏にまみれて「門は開かれている」という姿勢が、よく伝わってきたことを憶えています。

旧CCBTにて、左から播本和宜、西広太志、松下徹、高須咲恵

西広太志(以下、西広) SIDE COREだけでは難しい制作ができたと思います。CCBTは東京都という公の立場から話を通してくれるので、いち個人ではアクセスしづらい場所を撮影地として使いたいときの交渉や、制作環境の調整などに力を発揮してくれました。行政組織や民間企業とアーティストが直接話すと、うまくいくときもあるし、話が通じないときもある。交渉に関して、僕らが自分自身でやらないと、こういう結果が出るのかと驚きました。色々な機関と交渉していく中で、最終的には「担当者が興味持ってくれるかどうか」が鍵ということを知ることができました。

SIDE CORE「rode work ver. under city」(2023年、目黒観測井横 空地) photo:Tada(YUKAI)

播本 メディアアートの流れから生まれてきた施設なので、制作分野に強い人が揃っています。機材や制作環境も充実していて、僕は「とても充実した道具箱」だと考えています。自分に知識が無いものごとについて人に話を聞くとき、そもそも何をどう聞いていいかわからないと思います。そういうときに、こちらの考えを予測して相談に乗ってくれたり、提案をしてくれて、とても助かりました。

高須 担当者とのやり取りも、ぶっちゃけた話からスタートできるのは良かったです。CCBT側からも色々な話や提案をどんどんしてくれるので、アーティストとうまく協働していくかたちを、いっしょに探っているんだという意識を感じます。

西広 僕らは路上からスタートしているし、いまでもすべてにおいてルールのなかで生きているわけではありません。個人的な規模でしかできないこともあるし、大きいプロジェクトだからこそ可能なこともある。この2つの選択肢を持つことができたので、見えるものの幅が広がった気がします。

 CCBTのスタッフも知識や経験が豊富な人が多いですよね。グラフィティ・リサーチ・ラボという団体が2009年代に「アイ・ライター」という目の動きをセンサーで感知して、レーザーで絵や文字を描くというシステムをつくりました。それを使ってALSで体が麻痺してしまった「TEMPT1」というライターが光でグラフィティを描くというプロジェクトがあります。これはストリートアートの歴史ですごく重要なプロジェクトなんですが、「Openframeworks」というプログラムでつくられています。このプログラムをつくるチームにCCBTのテクニカルディクレクターの伊藤隆之さんが参加していたのもびっくりしました。

SIDE CORE「rode work ver. under city」(2023年、目黒観測井横 空地) photo:Tada(YUKAI)

松下 ニューヨークの80年代のアートをみても、NPOが運営しているPublic Art Fundが担った部分がじつはすごく大きい。デイヴィッド・ハモンズもゲリラ・ガールズも、ジェニー・ホルツァーもキース・ヘリングも、ファンドを通して制作をしていますし、彼らの代表作の多くもプロジェクトで制作されたものだったりします。Public Art FundはNPOが運営していますが、ニューヨーク市とかなり深く連携しています。もともと、市の建設予算の1パーセントをパブリックアートに充てる完全な公費プログラムがありましたが、ただ広場にオブジェを置くという形式にとどまらず、それを超える実践のためにPublic Art Fundが一役買ったという感じでしょうか。企画の内部にもアーティストが参加していて、例えば「メッセージズ・トゥ・ザ・パブリック」という電光掲示板にアーティストの作品を写すプロジェクトも、ジェーン・ディックソンというアーティストの提案で始まりました。このように、個人とNPO、企業と行政など異なるレイヤーが同時に関わるから実現できることがあるのだと思います。

高須 美術館で上映される映像作品は「わかる人に届けばいい」という側面もあるけど、SIDE CORE としては誰にでも見てもらいたいと思っています。そうした私達にとっての「開いていく」感覚を、CCBTと共有できていることは嬉しいです。

新たな「場」、原宿の可能性

──支援のみならず、アーティストが集い、また発表するための「場」としてもCCBTは重要な役割を果たしてきたと思います。移転にともない、展示空間が縮小されたいっぽうで、原宿という新たな「場」とのつながりも生まれているはずです。SIDE COREはそこにどのような可能性を感じていますか。

高須 移転後の場所は竹下通りに隣接していて、周りがにぎわい混雑しているのは事実。そこで今回は導線を考えて、竹下通り側からではなく、裏側からアプローチするようにしてみました。

西広 改めて向き合ってみると、原宿というのはすごく不思議な地域です。例えば竹下通りは日中は人であふれ返っているのに、早朝や夜には人が急にいなくなる。一本裏へ入ると意外なほど静かで、古い建物がたくさん残っていたりして迷路のように入り組んでいます。昔からよく知っている場所のような気がしていたけど、未知の顔もまだまだいっぱいありそう。展示を通してこれまでとは違った角度からこの地域を見てみるのはすごく意味があることだと思います。

松下 私たちの仕事としては、既存のイメージをさらに向上させるというより、これまでとは異なる風景を提示し、経験として共有することです。「原宿といえば」「竹下通りってこうだよね」といった固定観念を解体していく。都市を生きた空間として捉え直すのが目的です。

高須 観光で原宿を訪れた人たちはみんな、クレープ片手に竹下通りの入口で写真を撮ったりして、同じように街を楽しんでいる。裏は明治神宮の森だし、祝祭的な空間として確立された原宿のイメージに、今後アーティストがどう向き合うのか興味あります。     

旧CCBTに残されたSIDE COREのサイン

播本 僕たちが最初に新しいスペースを使わせてもらうことになりましたが、これからたくさんのアーティストが、予想もしないような活動をそこでしてくれると思います。それを見るのが純粋に楽しみですし、表現する側が繰り出す手にCCBTがどう対応し、現実化していくのかにも注目したいです。加えるなら、日進月歩のテクノロジーをしっかりキャッチアップしていただいて、折に触れて機材などの相談に乗ってもらえればうれしいですね。

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