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藤嶋咲子(アーティスト)✕吉田寛(美学者・ゲーム研究者)対談:鑑賞者をプレイヤーへ、沈黙を表現へ。「作動するアート」としてのシリアスゲーム【4/4ページ】

都市の「セーブデータ」を響かせる

──藤嶋さんの一連の「コエノクエスト —都市に残されたセーブデータ」プロジェクトは、ボードゲームでの対話から始まり、AIアバターを用いたデジタルゲームへとつながっていきましたが、本プロジェクトは「これからのコモンズ」というCCBTから投げかけられたてテーマに対して、どのような回答になると考えていますか。

藤嶋 私の実践の根底にあるのは、都市のノイズにかき消されがちな、個々人の小さな「本音」をかたちにしたいという思いです。このプロジェクトを通じて、街中に「セーブポイント」のような対話の拠点を点在させることで、日常に沈んでいる違和感やつぶやきを可視化し、共有できると考えています。それは匿名だからこそ話せる生々しい実存を、デジタルとアナログの両面から都市に再接続する試みです。

藤嶋が描いた「コエノクエスト —都市に残されたセーブデータ」プロジェクトのイメージビジュアル

吉田 それは「ゲームの制作」に留まらず、ゲームの構造を用いた「都市の再解釈」と言えますね。ゲームの良さは、アップデートがリアルタイムで可能であり、かつ「痕跡」を蓄積できる点にあります。前のプレイヤーが世界に残した何かが次のプレイヤーに引き継がれるといった「循環型の構造」は、まさに都市そのもののメタファーのように感じます。

藤嶋 プロジェクトを進めるにあたって、CCBTという場所の持つ「風通しの良さ」には非常に助けられました。この場所は、誰でもふらっと立ち寄れるオープンな空気がありながら、同時に表現や技術の実験場でもあります。《SAVE 0》のテストプレイを呼びかけた際も、多様な属性の方がすぐに応じてくれて、改善のためのフィードバックをくれました。また、公的な場所だからこそ、普段は「我慢するものだ」と蓋をされている生々しい本音を、安心して吐露できる場として機能させることができるのだと感じています。

吉田 もしかすると今後は、平和的に意見を聴取するだけでなく、現実に存在する「痛み」や「難しい判断」といった負荷をゲーム内にあえて入れることで、より現実の問題に目を向けさせてみる、みたいな発展の仕方もあるのかもしれません。

 いずれにせよ藤嶋さんの試みは、アートと社会、そしてデジタルとアナログの境界を超えて、都市の沈黙を接続し、風通しを良くするための「装置」としてのゲームとなっているのではないでしょうか。社会がどのように反応するのか、楽しみですね。

編集部