巧みな会場設計とそこに込められたメッセージ
「Threads of Beauty」の作品はすべてモノクローム・フィルムで撮影されており、色彩の情報を除いたことで洋服のディテールや質感、人々の表情をつくり出す筋肉の動きなどがありありと伝わってくる。作品は手でちぎった竹和紙にインクジェットでプリントされており、それが小松マテーレの開発したナイロン生地「KONBU®」にミシン縫いによって取りつけられた。この「KONBU®」は高木が調色した泥で染められ、独特の風合いを醸し出している。その上にはさらにニスが塗られ、近づけばハケの跡を見つけることもできる。このように、写真の物質感を強く感じられるのも、本展の大きな特徴だ。

会場に敷かれた赤茶色の絨毯は、別のビルで廃棄される予定のものを敷き詰めたもので、高木が踏みしめてきた土の質感を連想させる。会場奥にある高木のオリジナルプリントや世界各地で集めてきた私物を展示するスペースのアクリルのボックスも、本館でかつて使われていた什器を再利用している。布に縫い付けられた写真もすべて丸めて片付けることができるようになっており、こうした工夫は高木が本展で目指した「ノマディック(遊牧の/漂流の)」というコンセプトを体現するとともに、展覧会のゴミを最小限にすることにも寄与しているという。


本展唯一の映像作品《同時多発的装飾》(2026)は、現代の東京を生きる来場者と、高木が撮影した世界各地の人々とを結びつける役割を果たす。本作は高木が2000年代半ば頃に撮影した渋谷のスクランブル交差点の映像と、「Threads of Beauty」シリーズの写真を同時に映し出している。高木はここで「現代の都市を生きる我々も、『Threads of Beauty』で捉えた人々と同じ地平にあることを感じてもらいたい」と語る。
本展は渋谷ファッションウィークとの共催であり、国内のブランドが渋谷で様々な発表をするなかで行われる。入場料は無料で、若い世代が来場しやすいことも大きな特徴だ。目まぐるしい速度でファッションが消費され、また無限の映像イメージが高速でやり取りされる現代の人々に、『写真』と『衣服』の物質感、そしてそこに宿る「かっこよさ」を感じてもらいたい。そんな高木の意図が強く表れた展覧会となっている。




















