「高木由利子 写真展 Threads of Beauty 1995-2025 ― 時をまとい、風をまとう。」(Bunkamuraザ・ミュージアム)開幕レポート。写真と衣服、「かっこいい」を生み出す物質【2/3ページ】

身体と衣服、一体となり生きる人々

 本展は、高木が1990年代よりアジア、アフリカ、南米など13ヶ国をめぐり撮影してきたシリーズ「Threads of Beauty」を展示するものだ。本シリーズは、各地の伝統的な衣装をまとい生活する人々のポートレートで構成されている。

 デザイナーとして、そして写真家として、長くファッションを仕事にしてきた高木だが、90年代半ばに転機が訪れる。「スーパーモデルの台頭をはじめ、人間と衣服がそれぞれ独立して主張し合うものになっていくことに違和感を憶えていた。一度ファッションから離れたいと思った」と語る高木。そのときに出会ったのが、世界各地で出会う民族衣装をまとい生活する人々だった。身体と衣服が一体化したその姿に『かっこよさ』を感じたという高木。当時すでに失われつつあった民族衣装をまとう人々を被写体に、民俗史的な記録ではなく、そこにある『かっこよさ』を写し取ろうと試みたシリーズが「Threads of Beauty」だ。

左手前が《Iran, 2006》。高木はイランでの撮影も行っている。イスラエルとアメリカによるイランへの攻撃が続く現在、被写体となった人々の現在に思いを馳せずにはいられない
左から《China, 2002》《Nepal, 1999》《Japan, 2025》《China, 2002》。場所も時代も異なる女性のポートレートが集合した空間がここにできあがっている

 会場はパネルによる仕切りは設けず、ひとつの空間で構成。プリントされた作品群がスポットでいくつも照らし出されている。作品は撮影地や撮影年でまとめられることなく配置されているが、いっぽうで「女性」「親子」「老人」といったテーマを感じさせるゆるやかなまとまりも意識されている。

 高木は超望遠レンズを使用し、人々の姿を遠くから切り取る。ファション写真にも似たその対象との距離感は、失われゆく伝統衣装に対するノスタルジーを過剰に演出せず、衣服と一体となった人物の実存を前景化させている。ここに、時代を超えた普遍的な「かっこよさ」が宿っていると言えるだろう。

 田根による会場設計により、展示室には自由な導線が生まれている。来場者は作品の合間を縫うように歩きながら、様々なルートで多彩な「かっこいい」人々に出会うことになる。これは「大きな道が文明を均質化していく」という高木の経験を受け、会場内に細く入り組んだ道をつくり出した田根の手腕によるものだ。

《Iran, 2007》。遠景の山々とそこに生きる人々の姿が、望遠レンズの圧縮効果で一体的に捉えられている
作品点数は多く導線は複雑だが、鑑賞者の視界がつねに先まで見通せるように工夫されている会場

編集部

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