コラテラル・イベント
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* Gaza - No Words - See the Exhibit

パレスチナ・ミュージアムUSがパラッツォ・モラで展開する本展では、「ガザ・ジェノサイド・タペストリー」と題された大規模な刺繍作品が紹介される。本作は、パレスチナの伝統的刺繍「タトリーズ」を用い、ガザにおける近年の出来事を記録する共同制作プロジェクトである。
100枚のパネルから構成されるタペストリーは、ラマッラーやレバノンの難民キャンプをはじめ、世界各地に暮らすパレスチナ人女性によって制作され、それぞれが戦争の記憶や喪失の経験を縫い込んでいる。もともと祝祭や衣装装飾として用いられてきた刺繍は、本作においては大量死や破壊の記録を担う媒体へと転換されている。
言葉では表現しきれない暴力の記録を、時間と労働を伴う手仕事によって可視化する本プロジェクトは、記憶の継承とアートの社会的役割を強く問いかけるものとなっている。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:Palazzo Mora, Strada Nova, Cannaregio 3659
Baile, Botella y Baraja
プエルトリコ出身の画家ホセ・ルイスの作品を軸とする展覧会「Baile, Botella y Baraja」が、REM Projectで開催される。本展は、素朴派的な絵画表現を通じて、カリブ地域における植民地主義の歴史と、そのなかで形成された文化的記憶を読み解く試みである。
ルイスの作品には、祝祭や音楽、酒宴といった日常的な場面が繰り返し描かれるが、それらは風俗表現にとどまらず、強制労働や奴隷制度といった歴史的暴力の痕跡を内包している。本展では、こうした「祝祭」と「支配」の関係に着目し、文化がいかにして抑圧の記憶を保持しつつ再構成されてきたのかを問い直す。
展示は絵画に加え、音楽やパフォーマンスを取り入れたインスタレーションとして構成され、観客は身体的な経験を通して歴史と現在の交錯を体感する。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:REM Project, Castello 1735
Lee Ufan

「もの派」を代表する作家として知られる李禹煥(リ・ウファン)による大規模個展が、ヴェネチアのサン・マルコ・アートセンター(SMAC)にて開催される。リは1960年代後半から、石や鉄板といった素材を用い、物質と空間、そして観る者との関係性を問い続けてきた。
本展では、初期から現在に至るまでの代表作に加え、新たなサイトスペシフィック・インスタレーションも発表される。展示は複数の展示室にまたがり、余白や距離といった要素を通じて、作品と鑑賞者のあいだに静かな緊張関係を生み出す構成となる。
東アジアの思想と西洋ミニマリズムの対話のなかで形成されたリの実践は、ヴェネチアという歴史的都市の文脈において、空間の知覚そのものを再考させる契機となるだろう。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:SMAC – San Marco Art Centre, Piazza San Marco 105
Nalini Malani – Of Woman Born

インドのアーティスト、ナリニ・マラニによる新作インスタレーション《Of Woman Born》が、「Magazzini del Sale n.5」を会場に発表される。本作は、神話と現代社会を交差させながら、女性の身体や暴力、戦争の記憶を主題とする大規模な映像作品だ。
マラニはこれまで、回転するシリンダーや多層的な映像投影を用いた「影の劇場」とも呼ばれる表現で知られており、本展でも複数のアニメーションと音響が重なり合う没入型空間が構築される。古代神話の物語は、現代の紛争やジェンダーに関わる暴力と呼応し、時間を横断するナラティブとして提示される。
観客は映像の重なりのなかを歩きながら、それぞれの視点で物語を読み解くことができ、単一の視点では捉えきれない歴史と記憶の層を体験する。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:Magazzini del Sale n. 5, Fondamenta Zattere ai Saloni, Dorsoduro 262
Screen Melancholy: Li Yi-Fan

台湾のアーティスト・李亦凡(リー・イーファン)による個展「Screen Melancholy」が、プリジオーニ宮殿で開催される。本展は、デジタル時代における視覚体験と身体感覚の乖離をテーマに、映像インスタレーションを中心に構成される。
李はこれまで、ゲームエンジンや3Dアニメーションなどの技術を用いながら、スクリーンを介した認識の変容や、情報過多の状況下で生じる不安や疎外感を描いてきた。本作では「スクリーン・メランコリー」という概念を軸に、鑑賞者が映像に没入しつつも、同時にその外部に置かれるような感覚を生み出す。
展示空間には映像と彫刻が組み合わされ、「見る主体」と「見られる対象」の関係が揺らぐ構造がつくられることで、デジタル環境における主体の不安定さが浮かび上がる。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:Palazzo delle Prigioni, Castello 4209
Still Joy — From Ukraine into the World

ウクライナの現代美術センター「PinchukArtCentre」によるグループ展「Still Joy — From Ukraine into the World」が、コンタリーニ・ポリニャック宮殿で開催される。本展は戦時下における「喜び」という感情に焦点を当て、ウクライナ国内外のアーティストによる多様な作品を通じて、人間の回復力と連帯を探る。
展示は、捕虜経験を持つ人物や戦地のジャーナリストによる証言を出発点とし、映像、インスタレーション、絵画などを通じて個人の記憶と集団的経験を交差させる。戦争という極限状況においてもなお持続する感情としての「喜び」は、希望だけではなく、抵抗や生の証として提示される。
会場内では、日常の断片や失われたコミュニティの記憶が重ねられ、鑑賞者は多層的なナラティブをたどりながら、現在進行形の現実に向き合うことになる。
会期:2026年5月9日〜8月1日
会場:Palazzo Contarini-Polignac, Dorsoduro 874
The Spirits of Maritime Crossing 2026

バンコク・アートビエンナーレ財団によるグループ展「The Spirits of Maritime Crossing 2026」は、ロッカ・コンタリーニ・コルフ宮殿で開催される。本展は海を地理的な境界だけではなく、移動、離散、記憶の継承、そして精神的な通路として捉え、海洋をメタファーに複数の歴史と経験を交差させる試みである。
東南アジアを中心に、アイルランドやセルビアなどから参加する20名のアーティストは、植民地主義の歴史や戦争、環境危機、移民の経験を背景に、個人と共同体の記憶を重ね合わせる。展示では、マリーナ・アブラモヴィッチによる海をめぐる映像作品をはじめ、パフォーマンス、映像、絵画、彫刻、インスタレーションなど多様な表現を通して、海を越える身体と精神の移動が可視化される。
また、海に囲まれた都市であるヴェネチアそのものが、本展のテーマと強く共鳴する点も見逃せない。多様な文化的視点を交差させながら、海をめぐる記憶と想像力を媒介に、グローバル化時代における新たなつながりの可能性を提示する展覧会となりそうだ。
会期:2026年5月9日〜8月2日
会場:Palazzo Rocca Contarini Corfù, Dorsoduro 1057/D
Turandot: To the Daughters of the East

ロンドンのパラソル・ユニット現代美術財団によるグループ展「Turandot: To the Daughters of the East」が、ACP–パラッツォ・フランケッティで開催される。本展は「トゥーランドット」という物語の変遷を手がかりに、女性の視点から「東洋」という表象そのものを再考しようとする試みである。
アフガニスタン、イラン、パキスタン、トルコ、レバノン、ウズベキスタン、カザフスタン、タジキスタンなど、中東や中央アジアを含む広範な地域にルーツを持つ11名の女性アーティストが参加し、映像、彫刻、絵画、テキスタイル、音響作品などを通じて、歴史、神話、移動、アイデンティティといった主題を提示する。西洋によって繰り返し再構成されてきた「東洋」のイメージに対し、当事者の側から複数の語りを差し込むことで、固定化された文化的視線を揺さぶる構成となっている。
また、本展は2020年にロンドンの常設スペースを閉じたパラソル・ユニットにとって、本格的な国際再始動の場でもある。女性たちの歴史と創造性を前景化しながら、文化的ステレオタイプを問い直す展覧会として注目される。
会期:2026年5月9日〜10月31日
会場:Palazzo Franchetti, San Marco 2847
同時開催
Anish Kapoor: Palazzo Manfrin

イギリスを代表する現代美術家アニッシュ・カプーアによる大規模個展「Anish Kapoor: Palazzo Manfrin」が、パラッツォ・マンフリンで開催される。本展では、約50年にわたる制作を横断し、彫刻、インスタレーション、建築的プロジェクトの模型などを含む作品群が紹介される。会場となるパラッツォ・マンフリンは、カプーア財団の拠点でもあり、一般公開されるのは今回で2度目となる。
カプーアはこれまで、空間の歪みや無限性、空洞や反射の感覚を喚起する作品を通じて、知覚の限界を問い続けてきた。会場では、過去50年にわたる建築的構想を示す約100点の模型に加え、新たな大規模インスタレーションやステンレス作品、黒色顔料を用いた《At the Edge of the World》の新バージョン、《Descent into Limbo》などが並ぶ。さらに、「ヴァンタブラック」を用いた作品群も再び紹介され、可視と不可視の境界に対する関心があらためて示される。
歴史的建築であるパラッツォ・マンフリンの空間を再構成しながら、作品は内部と外部、物質と非物質、彫刻と建築の境界を曖昧にしていく。カプーアの空間感覚を総合的に体験できる重要な機会となるだろう。
会期:2026年5月6日〜8月9日
会場:Palazzo Manfrin, Cannaregio 342/43
Gabrielle Goliath: Elegy

南アフリカ出身のアーティスト、ガブリエル・ゴリアスによる個展「Elegy」が、サントニン教会で開催される。本展では、性暴力や戦争といった暴力の被害者に捧げられてきた長期プロジェクト「Elegy」が、多面映像と声を中心としたインスタレーションとして展開される。なお本展は、南アフリカ館の出展中止を受けて独立開催されるプロジェクトとしても注目を集めている。
ゴリアスはこれまで、歌や呼吸、沈黙といった要素を用い、個々の声が重なり合う「集団的な哀悼」の場を創出してきた。本展においても、南アフリカにおけるフェミサイドの問題、ナミビアにおける歴史的暴力、さらにはパレスチナにおける女性や市民の死が参照され、複数の文脈にまたがる喪失の記憶が編み込まれる。観客は声の響きに包まれながら、悲嘆と連帯の感覚を共有することになる。
会場には8基の映像モニスが葬送的に配置され、展示空間は宗教的儀式を想起させる構成となる。鑑賞体験は視覚にとどまらず、身体的・感情的なレベルへと拡張され、哀悼がいかにして共同体の想像力を生みうるかを問いかける。
会期:2026年5月5日〜7月31日
会場:Chiesa di Sant’Antonin, Salizada S. Antonin 3477
GO FOR KOGEI:身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ

日本発のプロジェクト「GO FOR KOGEI」は、パラッツォ・ピザーニ・サンタ・マリーナで、秋元雄史のキュレーションによる展覧会「身体と物質のエスノグラフィー―加速社会における遅さと深さ」を開催する。本展は工芸と現代美術の境界を横断し、身体性や素材、制作プロセスに焦点を当てた作品群を紹介するもので、北陸を拠点に継続してきた活動をヴェネチアへと拡張する試みでもある。
参加作家は、沖潤子、川井雄仁、桑田卓郎、コムロタカヒロ、シゲ・フジシロ、舘鼻則孝、中田真裕、三嶋りつ惠、牟田陽日、綿結。伝統的な工芸技術を出発点としながら、それを現代的な表現へと拡張し、時間や労働、物質の持つ意味を問い直す。大量生産と高速消費が前提となった社会のなかで、「つくること」の持続性や深度、さらには身体と素材が結びつく感覚の重要性を再考する内容となる。
展示構成は建築家クラパット・ヤントラサストが担当し、触覚や身体感覚を喚起する空間体験が重視される。日本の工芸的思考を国際的な文脈で提示する場としても注目される。
会期:2026年5月9日〜11月22日
会場:Palazzo Pisani Santa Marina, Cannaregio 6104
Natasha Tontey: The Phantom Combatants

インドネシアのアーティスト、ナターシャ・トンテイによる個展「The Phantom Combatants」が、ヴェネト科学・文学・芸術大学(Ateneo Veneto)を会場に開催される。本展では、神話やローカル文化、そしてテクノロジーを交差させながら、身体と権力の関係を探る大規模なインスタレーションが発表される。
作品は、1950年代のインドネシアにおける女性抵抗者の存在を参照しつつ、熱感知カメラやLiDARスキャンといった現代的な視覚技術を取り込み、監視社会における可視/不可視の問題を浮かび上がらせる。身体は固定されたものではなく、変容し続ける存在として提示され、アイデンティティや主体性の不安定さが強調される。
映像、音響、彫刻が複合する空間において、観客はフィクションと現実、過去と未来のあいだを行き来する体験を得る。ポストコロニアルな視点とSF的想像力を結びつけた、近年の動向を象徴する展示といえるだろう。
会期:2026年5月9日〜10月25日
会場:Ateneo Veneto di Scienze, Lettere ed Arti, San Marco 1897
Nowruz: Images, Sounds and Voices from Contemporary Iran

イランの現代文化に焦点を当てたグループ展「Nowruz: Images, Sounds and Voices from Contemporary Iran」が、ヴェネチアのBea Vitaで開催されている。本展は、イラン新年「ノウルーズ」を手がかりに、現代社会における記憶、移動、アイデンティティを多角的に探る試みである。
参加作家には国内外で活動するイラン出身アーティストが名を連ね、映像、音響、インスタレーションを通じて、政治的抑圧やディアスポラの経験、文化的断絶と再生といったテーマが提示される。展示は固定された構成ではなく、会期中に段階的に拡張されていく形式を採用し、不確実性そのものを表現の一部として取り込んでいる。
また、音楽や詩、パフォーマンスといった要素も組み込まれ、展示を超える複合的な文化空間が立ち上がる。分断された状況のなかでいかに文化が継承され、更新されていくのかを示す重要なプロジェクトである。
会期:2026年3月20日〜11月22日
会場:Bea Vita, Fondamenta de le Capuzine 3082
Pinault Collection

フランソワ・ピノーのコレクションによる展覧会が、グラッシ館およびプンタ・デラ・ドガーナで同時開催されている。本プロジェクトでは、マイケル・アーミテージ、アマル・カンワル、ローナ・シンプソン、パウロ・ナザレといった異なる文化的背景をもつ4名のアーティストによる個展形式の展示が展開される。
アーミテージは東アフリカの社会や歴史を絵画を通じて描き、カンワルは映像によって政治的暴力や記憶の問題を詩的に提示する。シンプソンは写真や映像を通じてアフリカ系アメリカ人女性の身体と歴史を問い、ナザレは移動や労働をテーマにしたパフォーマティブな実践を展開する。
絵画、映像、インスタレーションなど多様なメディアを通じて、各作家は地域や文化に根ざした視点からグローバルな問題に応答し、2つの会場を横断することで複層的な物語が立ち上がる構成となっている。
会期:[グラッシ館]2026年3月29日〜2027年1月10日、[プンタ・デラ・ドガーナ]2026年3月29日〜11月22日
会場:Palazzo Grassi, Campo San Samuele 3231/ Punta della Dogana, Dorsoduro 2
SPIRAL ECONOMY: CHARRIÈRE AND CANOVA

スイスのアーティスト、ジュリアン・シャリエールと18世紀のイタリア新古典主義彫刻家アントニオ・カノーヴァの作品を対置する展覧会「SPIRAL ECONOMY」が、コッレール博物館で開催される。本展は、異なる時代の芸術を並置することで、物質、時間、自然の関係を再考する試みである。
シャリエールは映像やインスタレーションを通じて、地質学的時間や環境問題、エネルギーの循環をテーマに制作を行ってきた。本展では、カノーヴァの理想化された人体彫刻と対話するかたちで、素材の変容や環境の脆弱性を提示する。
両者の作品は、永続性と変化、保存と消失といった相反する価値のあいだに緊張関係を生み出し、鑑賞者に時間のスケールを再考させる。歴史的美術館空間を舞台に、過去と現在が交差するダイナミックな展示となるだろう。
会期:2026年4月29日〜11月22日
会場:Museo Correr, P.za San Marco 52
Wallace Chan: Vessels of Other Worlds

香港のアーティスト、ウォレス・チャンによる個展「Vessels of Other Worlds」が、ヴェネチアと上海の2都市を結ぶプロジェクトとして展開される。ヴェネチア会場であるサンタ・マリア・デッラ・ピエタ教会では、チタンを用いた大型彫刻が発表される。
作品はキリスト教の聖油に着想を得ており、「誕生・成長・死/再生」という循環的なテーマを内包する。チャンは宝飾作家としても知られ、素材の革新性と精神性を融合させた独自の表現を展開してきた。本展でも、光を反射する金属と建築空間の関係によって、彫刻はたんなる物体から没入的な空間体験へと変容する。
また、映像によって上海会場と接続される構成により、地理的距離を超えた鑑賞体験が提示される。宗教的空間と現代彫刻の関係を再考させるプロジェクトとしても注目される。
会期:2026年5月8日〜10月18日
会場:Santa Maria della Pietà, Riva degli Schiavoni, Castello 3701
※詳細および最新情報は、展覧会公式サイトにてご確認ください。




































