ロンドン・オリンピック跡地に建設
V&Aイースト博物館(V&A East Museum、以下V&Aイースト)は、2012年のロンドン・オリンピック/パラリンピックの会場跡地に整備されたクイーン・エリザベス・オリンピック・パーク内、イースト・バンク地区の中心に位置している。周辺には、ダンスの公演を中心に行う劇場サドラーズ・ウェルズ・イーストや、ファッション専門大学のロンドン・カレッジ・オブ・ファッション、さらにメディア局BBCの拠点などが集まり、現在ではロンドンの新たなカルチャーハブとして注目を集めている。最寄駅のストラトフォードからは徒歩およそ10分で、姉妹施設であるV&Aイースト・ストアハウス(V&A East Storehouse)まではさらに徒歩10分程度の距離にある。

個性豊かな建物が立ち並ぶイースト・バンク地区のなかでも、一際目を引く独創的なV&Aイーストの建物は、アイルランド・ダブリンを拠点とする建築ユニット、オドネル+トゥミが設計を手がけた。同ユニットは、昨年アイルランド王立建築家協会(RIAI)による生涯功労賞であるガンドン・メダルを受賞している。V&A側からは、「若者を中心に、これまで博物館に親しみを感じてこなかった人たちにも開かれた建物」が求められたという。設計にあたっては、V&Aコレクションにあるバレンシアガの彫刻的なテーラリングや、衣服と身体のあいだの空間への関心、さらには日本の「間」の概念などがインスピレーション源となった。館内は、来館者を自然に上階へと導くドラマチックな動線が特徴となっている。
「制作」の背景に迫る常設展
エントランスを抜けた先の常設展示空間では、まずはイーストロンドンに拠点を置くデザイナー、モリー・ゴダードの鮮やかなピンクの《ダリアドレス》(2019)が目に飛び込んでくる。その先にはコム デ ギャルソンやヴィヴィアン・ウェストウッドの服が並ぶ。本館であるV&Aサウスケンジントンと比べると、よりポップで明るく、若い人々にも親しみやすい雰囲気が印象的だ。

常設展は「私たちはなぜ創作するのか」を全体のテーマとして、V&Aの所蔵品のなから選ばれたアート、建築、デザイン、パフォーミングアート、ファッションにまつわる品およそ500点を10のセクションに分けて紹介している。展示構成は、V&Aサウスケンジントンに比べてより具体的で、意図がダイレクトに伝わる内容となっている。例えば、前出のゴダードのドレスは「世界における私たちの場所」と題したセクションに配置され、自分のアイデンティティを見つめるなかで生み出された作品として展示されている。いっぽう、コム デ ギャルソンやヴィヴィアン・ウェストウッドの服、さらにはリー・バウリーによるバレエのコスチュームなど、新たな時代を切り拓いた斬新なデザインは「境界線を打ち破る」というセクションに置かれている。

とりわけ印象的なのは、現代社会の課題を反映したセクションだ。「システムを再考する」では、人と地球の双方にとってより良い社会を目指すためのデザイン例を示す。シンユ・ウェンによるアップサイクル自転車プロジェクトや、リチャード・マローンのリサイクルやデッドストック素材を用いたファッション、さらには日本にルーツを持つ技術として現在は国際的にも注目される金継ぎなどを並べる。
また、「デザインを通してのエンパワー」も目を引く。フェミニズムや人権などに関する声を伝えるためのシンプルながらも力強いデザインのポスターや旗を並べ、制作過程なども紹介している。


これらの展示は、地域社会とのコラボレーションによって文化施設の設計などを行っている「JAプロジェクト」、クリエイティブ・ディレクションスタジオ「ア・プラクティス・フォー・エブリデイ・ライフ」、アーティストのラリー・アチャムポン、そしてV&Aイースト・ユース・コレクティブによって共同制作された。V&Aイースト・ユース・コレクティブは、16歳から24歳までのイーストロンドン在住者を対象にした10ヶ月の有給プログラムで、企画からギャラリーデザイン、V&Aイーストのマニフェスト策定、展示や作品の共同制作までに関わりながら、V&Aイーストの発展に貢献するグループだ。現在は第6期生が活躍している。
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