東京・六本木の森美術館で「ロン・ミュエク」展が開幕した。会期は9月23日まで。
ロン・ミュエクは、1958年オーストラリア・メルボルン生まれ。革新的な素材や技法、表現方法を用いて人物を中心とした具象彫刻の可能性を押し広げてきた現代美術作家だ。実際の人物よりもはるかに大きく、または小さく造られる彫刻作品が特徴で、まるで生きているようなリアリティのなかに、鑑賞者一人ひとりの解釈や思索を促す余白を持たせる。ロンドンのロイヤル・アカデミー・オブ・アーツで開催された「センセーション:サーチ・コレクションのヤング・ブリティッシュ・アーティスト」展(1997)への参加で注目を集めて以来、世界各地で個展を開催してきた。近年ではソウル、オランダのハーグで個展を開催。日本では、十和田市現代美術館で《スタンディング・ウーマン》(2007)が常設展示されている。一作品を制作するために数ヵ月から数年を要することもあり、過去30年間に制作された作品総数は49点に留まる。
本展は、ミュエクとカルティエ現代美術財団との長きに渡る関係性によって企画されたもの。2023年パリの同財団での開催を起点とし、ミラノとソウルを経て、今回同館での開催が決定した。日本では、2008年に金沢21世紀美術館で回顧展が開催されて以来、18年ぶり、2度目の個展となっている。日本初公開の6点を含む、初期の代表作から近作まで11点が展示され、作品の発展の軌跡を辿ることができる内容だ。

本展は、日本初公開作品のひとつ、《杖を持つ女》(2009)からはじまる。裸の女性が自身よりも大きい木の枝の束をなんとか抱えようと持ち上げている姿が印象的だ。皮膚の質感などはリアルないっぽう、なぜ裸なのか、どのようなシチュエーションなのか、その背景は明かされない。自身の言葉でほとんど作品について語らず、鑑賞者の想像に委ねるミュエクの創作姿勢が伝わってくる。

続く展示室では、巨大な女性がベッドに横たわっている《イン・ベッド》(2005)を展示。長さ6.5メートル、幅約4メートルの大型作品だ。日常の一コマのようでありながら、そのスケールゆえに鑑賞する人間が小さくなり、おとぎ話の世界に迷い込んだような感覚に陥る。また、彼女の物憂げな視線は、その思惑を様々に想像する余地を生んでいる。






























