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「フェミニズムと映像表現」(東京国立近代美術館)追加レポート。ナンシー・ホルト、ロバート・スミッソン、出光真子による作品が新たに登場【2/4ページ】

社会や家族と「個」とのあいだで分裂する「私」

 出光真子は1940年東京生まれ。出光興産創業者・出光佐三の四女として、家父長制の根強い家庭における閉塞感を起点とし、社会や家族のなかで埋没させられる女性の「生(せい)」を描いてきた。1965年渡米し、翌年、画家サム・フランシスと結婚(81年に離婚)。69年に次男が誕生すると、成長まで待ってはいられないと8ミリフィルムカメラを購入し、独学で映像制作を開始。70年代前半に男女同権を求めて立ち上がったウーマン・リブの時代に、「女性は機械に弱い」という社会通念を払拭して16ミリも扱う。73年の帰国後にビデオカメラと出会い、自身の作風を確立。最初の映像制作から30年あまりで40本近い作品を発表してきた。

 出光作品の特徴として、現実を描写した画面のなかに、入れ子状にテレビモニターを配置し、個人の内面を描写するというスタイルがある。今回の3作品でもその手法を通じて、伝統的な社会や家庭での役割と自我の相克による「私」の分裂を映し出している。そして、あたかもそれは、人間の内面を「型」で表現する能楽的な演出法を思わせるようでもある。

展示風景より、左から出光真子《清子の場合》(1989)、《グレート・マザー 晴美》(1983) 撮影=筆者

 まず《シャドウ パート1》は、ユング心理学の概念にある元型のひとつ、シャドウ(厳密には見つめたくない自分自身の人格の側面)をコンセプトとしている。例えば、花びらをむしる女性と、むしった花びらを針で止めて修復しようとする女性。キャリアウーマンが部下の男性を叱咤する場面と、専業主婦が洗濯物を畳む場面の交差。この作品は「第三回東京ビデオフェスティバル」(1980)で特選賞を受賞している。

出光真子 シャドウ パート1 1980 
提供=東京国立近代美術館

編集部

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