東京・天王洲アイルにあるギャラリーYUKIKOMIZUTANIで、彫刻家・稲葉友宏の個展「A STORY THAT YOU SEE」が開催される。会期は7月19日〜8月31日。
稲葉は1984年栃木県出身。2011年に文星芸術大学大学院博士課程を修了し、その後ミラノサローネへの出展をきっかけに国際的に活躍している。
同ギャラリーで2度目の開催となる今回の個展では、バイソンや羊、鹿や犬などの動物モチーフの新作が登場。さらに、人物をモチーフとした新たな作品も公開されるという。
稲葉が生み出す動物の彫刻作品のなかには意図的に設けられた「空白」が存在する。鑑賞者がその空白を想像力によって補完することで、その動物たちに自律性と生命力が宿されるという。
また、これらの彫刻作品は、鉄のワイヤーを用いて空中に描写をするように制作されており、立体と平面の境界を行き来するような鑑賞体験が見どころだろう。作中にしばしば登場する「星」のモチーフは、鑑賞者それぞれの宗教観や死生観、宇宙科学や物語の記憶などに結びつくようなイメージとして用いられており、「四角形」のモチーフは作家自身のイメージする社会の規則や秩序など、現実世界の目に見えない大きな存在を感じさせるシンボルとなっているようだ。
個展の開催に際し、稲葉は次のようにコメントしている。
私は、「鑑賞者と想像を介した関わりを持ち続ける」彫刻作品を制作しています。目には見えない物事を創造する「豊かな時間」のきっかけになることが、芸術作品の一つの在り方と考えているためです。彫刻作品においては、物体のフォルムや存在感により想いを表現しますが、形のない「空白」を造形することで鑑賞者の想像力を想起し、それぞれの物語を紡ぐ余白が生まれます。そうして鑑賞者の想像力に触れた作品は、造形のみにとどまらない豊かな彫刻表現となります。また、作品を前にして感じたことを他者と共有することで、多様な解釈があるということの豊かさを感じていただければと考えております。
多様性、寛容性が問われる今、私は作品を通してお互いが理解しあえる寛容で豊かな日々が続くことを祈ります。
稲葉友宏(プレスリリースより抜粋)