文字が失われた石碑から不確実な現在を探る。YUKIKOMIZUTANIで坪本知恵の個展「間の形 – undetermined forms -」が開催
様々な政治的・歴史的背景から文字が削られたまま次世代に受け継がれ、その地域で「顔のない碑」と呼ばれる石碑から着想し、「伝わる」と「伝わらない」のあいだを模索するアーティスト・坪本知恵。その個展「間の形 – undetermined forms -」が東京・天王洲のYUKIKOMIZUTANIで開催される。
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東京・天王洲のYUKIKOMIZUTANIで、坪本知恵の個展「間の形 – undetermined forms -」が開催される。会期は6月16日〜7月8日。
坪本知恵は1997年愛媛県生まれ。2020年に京都芸術大学美術工芸学科を修了。「ULTRA GLOBAL AWARD 2017」で後藤繁雄賞を受賞、「OSTEN BIENNIAL of DRAWING Skopje 2018」ではファイナリストに選出された。2019年公益財団法人クマ財団3期生。コーポレートコレクションにおおさか創造千島財団(大阪)、OCA Tokyo(東京)、OSTEN(北マケドニア)がある。
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坪本は地元の小中学校の歴史教育や人権教材のなかで、県議会議員であり歴史学者だった安藤正楽(1866〜1953)により愛媛・四国中央市の八坂神社境内に建てられた「日露戦役記念碑」を知る。この石碑との出会いは坪本に強烈なインパクトを残したという。様々な政治的・歴史的背景から文字が削られたまま次世代に受け継がれ、その地域で「顔のない碑」と呼ばれる石碑が作品制作を喚起するようになった。
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坪本は京都芸術大学在学時から刻印された文字とその消失をテーマに作品を発表し、その無作為のなかに芸術性を見出してきた。ステンシルを用いて何度も塗り重ね意味が読み取れなくなった文字であるが、白い下地の間に見え隠れする「とめ・はね・はらい」からそれらが文字であると認識することができる。
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坪本は過去を「伝わる」と「伝わらない」の連続であるとして、その認識齟齬のうえにいまがあるのだと考えており、こうした不確定で不確実な現実とどう向き合うのか、制作の中で模索している。初の個展となる本展で、その文字と形の間で認識を揺さぶる作品から、坪本のフィロソフィーを垣間見てはいかがだろうか。