それでも、ソウルに出展する理由
こうした物流コストの上昇は、アートフェアを運営する側からも実感されている。Kiaf運営委員会のチェアマンであり、韓国画廊協会の会長を務めるイ・ソンフンは、長期化する紛争や地政学的緊張を背景に、海外ギャラリーが以前にも増して慎重にアートフェアへの参加を検討するようになっていると話す。
「出展を決めたあとも、輸送・物流コストの上昇や地政学的リスクは、ギャラリーにとって継続的な懸念事項となっています」。こうした状況を受け、ギャラリーは参加するフェアをより選択的に見極め、それぞれの市場がもつ可能性や、出展によってどのような価値を生み出せるのかを慎重に判断するようになっているという。
イは、これはアート市場だけに特有の現象ではなく、地政学的・経済的環境の不安定化に対応する各産業に共通する傾向だと見る。しかし、そのような環境下でも、ソウル市場への関心は失われていない。「多くの海外ギャラリーは、ソウルのアート市場が持つ成長の可能性と、Kiaf SEOULがアジアを代表する重要なプラットフォームであることを認識しています」。今年は156軒のギャラリーがKiaf SEOULに再び出展し、そのうち34軒を海外ギャラリーが占めるという。

その背景を考えるうえで重要なのが、アートフェアへの出展価値を短期的な売上だけでは測れないという点だ。「アートフェアは作品を販売するためだけの場ではありません。新たなコレクターと出会い、国際的なネットワークを広げ、長期的な関係を築く重要な機会でもあります」とイは強調する。
輸送費や出展経費が上昇するほど、ギャラリーには「どのフェアに出るのか」「どの都市へ行くのか」をより厳しく選別することが求められる。その意味では、現在の物流環境は各アートフェア、ひいてはそれぞれの都市のアート市場に対して、国際的なプラットフォームとしてどのような価値を提供できるのかを、これまで以上に問いかけているとも言える。



















