エスパス ルイ・ヴィトン大阪で開催中のジェフ・クーンズの個展「PAINTINGS AND BANALITY - SELECTED WORKS FROM THE COLLECTION」は、フォンダシオン ルイ・ヴィトンによるキュレーションのもと、ジェフ・クーンズの1980年代の彫刻作品から2000年代の絵画作品までを紹介する展覧会である。本展のためにアメリカから来日したクーンズはメディアのイメージそのままの笑顔で、フレンドリーかつ紳士的な姿勢を崩さない。まるで彼自身がひとつの作品であるかのように──。
「凡庸さ」に美を見る──「BANALITY」シリーズをかたちづくる思想
本展においてまず特筆すべきは、1988年に発表された「BANALITY」シリーズから3点が展示されていることだろう。1977年に作家活動を開始したクーンズの初期から中期にかけての変化を象徴するこのシリーズは、現在の作家性に接続する重要な位置にある。「banality」とは、日本語では凡庸さや平凡さを示すが、なぜ彼はアーティストという独自性を求められる立場でありながら、「凡庸さ」に着目しているのだろうか。今回のインタビューでクーンズは、英語を母国語としない私たちにも伝わるよう、ゆっくりと、そして明瞭な言葉で答える。

© Jeff Koons Courtesy of the artist and Fondation Louis Vuitton, Paris Photo ©︎ Jérémie Souteyrat / Louis Vuitton

「もともとはレディ・メイドによる制作をしていたのですが、広告やポストカードなど日常的に私たちの目を引くイメージはアニメ的であったり鮮やかすぎるため、ヒエラルキーの中で価値の低いものとして捉えられていることに気づきました。しかし私はそれらのもつ美しさに惹かれ、人々にあなたが好きなものは完璧である、と伝えようと考えたんです。例えばピンク色や、かわいい猫のイメージが好きならそれでもいいのだと」。
クーンズの初期の作品といえば、掃除機をモチーフとした「THE NEW」(1979-87)、バスケットボールや広告写真がモチーフとなった「EQUILIBRIUM」(1983-93)などのシリーズが知られ、ここでは既製品を美術の文脈で提示している。既存のイメージを引用している点で「BANALITY」はこれらの実践と関連しつつも、ポップなイメージがいかに人々を惹きつけ、そして人々が惹きつけられているのかに焦点を当てている。
出展作品のひとつに、《Woman in Tub》(1988)がある。モチーフはポストカードのイメージで、女性の入浴中に何者かが侵入した、という場面を陶器で表現している。浴槽に見えるシュノーケルから想像される「侵入者」の視点と鑑賞者の視点がここで重なり合い、性的な欲望を掻き立てる。だが、目の前にあるのは、ポストカードのような容易に消費されるものではなく、精巧な「芸術作品」である。女性の唇、肢体は素材の転換によってそのキッチュな性質が一層強調され、鑑賞者は自らの欲望に向き合うよう促されると同時に、作品としてその感性が固定される。作家の表現は大衆文化への皮肉ではないか、という疑念を抱かせるほどに直接的だが、その姿勢は一貫している。作品は「セルフ・アクセプタンス」、すなわち人々が自らを受け入れるためのものであると。
「『BANALITY』では前シリーズの『STATUARY』(1986)で関心をもっていた、社会において人々をどのように惹きつけるか、という問いを引き継ぎつつ、どのように自分自身、そして人々が自らの力を発揮できるかについて扱っています」。
人の嗜好や感性は、生い立ちや経済的・教育的背景と関連しているため、それらを認めることは、自分自身を受け入れることにつながる。「BANALITY」から明確になったというこのコンセプトは、現在に至るまで引き継がれている。

























