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映画の言葉が紡ぎ出す叙情詩。大岩雄典評「平川祐樹 Rêve d’artiste La Magie à travers les âges」展

失われたフィルム映画のタイトルをモチーフとしたシリーズを手がける平川祐樹。本展ではフランス映画を対象としたシリーズ第5作目を発表。真っ黒なスクリーンに次々と現れるのは64本の映画の原題であり、展示室にはそれを読み上げる声だけが響く。この作品に潜む言葉の虚構性の問題を中心に、アーティストの大岩雄典が考察する。

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差異を超えてつながる「加勢」という態度。 荒木夏実評「パレードへようこそ」展

1969年生まれのアキラ・ザ・ハスラーと、1991年生まれのチョン・ユギョン。世代も作品の表現方法も異なる彼らが、「連帯」の旗印のもとに2人展を開催した。ゲイであるアキラ、在日コリアン3世であるチョンは、それぞれマイノリティ・グループに属する。東京藝術大学准教授でキュレーターの荒木夏実が、両作家へのインタビューをふまえ、本展をレビューする。

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建築家の手を離れたあとの「物語」を展示する。青木淳評「中山英之展 , and then」

気鋭の建築家中山英之の個展がギャラリー・間で開催中だ。本展は模型やスケッチ、テキストで解説するという従来の建築展のスタイルではなく、竣工後の建物を住み手の目線でとらえた映像で紹介するというもの。展示を通して見えてくる中山の制作と思考のプロセスを、建築家の青木淳がときほぐす。

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「絵画」はいかに機能するのか? 中村史子評「暗黙知の技術」展

「“絵画”の意味が露散した時代に、私たちはなぜ“絵画”を選び、制作するのか?」。その答えを探求するべく、岡本秀、木村翔馬、小山しおり、西原彩香、松平莉奈の5名が105x148mm以内の小品を出品した「暗黙知の技術」展が京都・FabCafe Kyoto / MTRL KYOTOで開催された。本展を愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。

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小谷元彦の作品群を通して見る、日本・彫刻の歴史。小田原のどか評「小谷元彦 Tulpa – Here is me」展

彫刻家・小谷元彦は、これまで「ファントム(幽体)」をキーワードに、人間の痛覚や異形のものなど幅広いテーマを取り上げ、作品を生み出してきた。今年4月から5月にかけて東京・天王洲のANOMALYで行われた個展「Tulpa – Here is me」では、2017年に患った心筋梗塞の経験を経た新作を発表。「人体像」にフォーカスした本展を通して、彫刻家で彫刻研究者の小田原のどかが「日本の彫刻の歴史」への問いを開く。

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60〜80年代、出版文化を押し上げた編集者。鈴木俊晴評「ある編集者のユートピア 小野二郎:ウィリアム・モリス、晶文社、高山建築学校」展

晶文社を立ち上げた編集者で、ウィリアム・モリスの研究者でもあった小野二郎の展覧会が、世田谷美術館で開催された。モリスの芸術運動をめぐる考察を日本で展開させ、ヴァルター・ベンヤミンやポール・ニザンなどの著作をいち早く紹介するほか、ジャズやロック、映画関連の書籍も数多く出版。60〜80年代の出版文化に少なからぬ影響を与えた。生涯を通して「ユートピアの思想」追い求めたいち編集者の活動をたどる本展を、豊田市美術館学芸員の鈴木俊晴が考察する。

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視覚と身体感覚の接合から、水平性を浮かび上がらせる。中尾拓哉評 水木塁「東下り」展

写真や平面、立体といった既存の表現方法を解体・再編しながら、スケートボーダーとしての身体感覚をもとに作品を制作してきた水木塁。身体感覚で絵画を表現することと、身体感覚を絵画で表現することのあいだが切り開く別次元とは? 中尾拓哉がレビューする。

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関川航平が自身のスタジオを舞台として展示を企画。「以外」が示唆するものとは何か。大岩雄典評「5月」展

「以外スタジオ」を舞台として展開されたグループ展「5月」は、多数のイベント開催や日々公式サイト上で「日報」が更新されるなど、変化に富む展示だった。企画したのは、これまで会期中に風邪をひいてなおすまでを見せるパフォーマンスや、「AではなくBでもありえた」と題した展示を行ってきたアーティスト関川航平。本展についてアーティストの大岩雄典が、関川の作品の「文法」に則りながら、レビューする。

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国交樹立100年の京都、他者との遭遇としての展覧会。長谷川新 評「セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」展

日本とポーランドのアーティストが出品するグループ展「セレブレーション-日本ポーランド現代美術展-」が、京都市内の4会場で開催されている。社会や歴史などをテーマに独自の視点で制作された作品が集まった本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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美術作品に「時間」はどう作用する? 高嶋慈 評「タイムライン 時間に触れるためのいくつかの方法」展

京都大学総合博物館で、「モノ」としての美術作品と時間をテーマにした企画展「タイムライン 時間に触れるためのいくつかの方法」が開催されている。インストーラー、修復士、美術史家が参加し、作品の科学分析結果や作家のインタビューも展示された本展について、美術批評家の高嶋慈がレビューする。

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“風景画”を再定義する画家。副田一穂評「吉本作次展 風景画論」

美術史上の絵画の技法や題材を参照しながら、現在の日本において可能な絵画を探求してきた吉本作次。自身の絵画体験や、日本文化としての落書きやマンガ的な要素をあえて取り入れている画家の最新作を含む展覧会「風景画論」が、名古屋のケンジタキギャラリーで開催された。愛知県美術館学芸員の副田一穂が、吉本の風景画を読み解いていく。

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「アウトサイド」と「アートのサイド」、どちらに立つか? 原田裕規評「櫛野展正のアウトサイド・ジャパン展」

日本唯一のアウトサイダー・キュレーター、櫛野展正による著書『アウトサイド・ジャパン 日本のアウトサイダー・アート』の刊行を記念した初の大規模展が東京・Gallery AaMo(ギャラリー アーモ)で開催された。会場に集まるのは櫛野によって発掘された、「障害がある・なしにかかわらず、表現せずには生きられない“表現者と呼ぶにふさわしい隠れた芸術家”」70名以上。本展から見えてくる、ある「せめぎあい」とは? アーティストの原田裕規が論じる。

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「ティーセレモニー」は「茶の湯」にあらず、しかし......。荒木悠評「トム・サックス ティーセレモニー」展

アートの分野のみならず、ファッション界などからも注目を集めるトム・サックス。その日本における美術館初個展「ティーセレモニー」は、大きな評判を呼んでいる。日本の「茶の湯」を換骨奪胎したようなこの展覧会からはユーモアとともにトム・サックスの真剣な眼差しが感じられる。本展とトム・サックスの制作姿勢を、アーティストの荒木悠が解き明かす。

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オリンピックを契機に、都市のシステムはどう変わりうるのか? 秋山佑太評「東京計画2019 vol.1 毒山凡太朗 RENT TOKYO」展

オリンピック開催を来年に控え加速度的に変貌する東京。だがその過程では、都市構造の画一化が進み、人々の行動や生態系にさえ影響を及ぼしている。藪前知子が1年を通してキュレーションする「東京計画2019」は、そうした諸問題にたいして5組の作家が実践を通して、別の可能性を提示する試みだ。その初回となった毒山凡太朗展を、建築家/美術家の秋山佑太が批評する。

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外皮/内部と心理的距離。松岡剛評 七搦綾乃「rainbows edge」展

自然現象や動植物の姿をモチーフに、木目やひび割れを生かした木彫作品などを制作する若手アーティスト、七搦綾乃(ななからげ・あやの)の個展が、アートギャラリーミヤウチ(広島)で開催された。干からびた野菜や果物、そして布に覆われた人体のような形態を組み合わせた作品群からなる「rainbows edge」シリーズが展開された本展を、広島市現代美術館学芸員の松岡剛がレビューする。

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分断と向き合い、多様な接続を生み出すために? 内海潤也評「六本木クロッシング2019展:つないでみる」

3年に1度、日本のアートシーンの新たな動向を探るシリーズ展として2004年以来開催されてきた「六本木クロッシング」。6回目となる本展は、現代美術の表現に見られる「つながり」に着目。テクノロジーの進化によって生活が便利になるいっぽうで様々な「分断」が顕在化するなか、多様な「つながり」を提示するアーティストの実践から見えてくるものとは。キュレーターの内海潤也が論じる。

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