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現実とシミュレーションのあわい。中尾拓哉評 相川勝「Sandy Shores」展

「複製芸術」や「著作権/違法コピ ー」をテーマに、ロックやメタルなどのCDアルバムを肉筆とアカペラにより完全コピーする「CDs」シリーズで知られる相川勝。本展では、ゲーム上の風景やAIが生成した人物といった被写体を、プロジェクターやタブレット端末から発せられる光によって印画した写真作品を発表。現実とシミュレーションのあいだにある「時間」を宿した作品群を、美術評論家の中尾拓哉が読み解く。

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VR作品は鑑賞者の身体をどこへ連れ去るのか? 大岩雄典評 小泉明郎個展「Dreamscapegoatfuck」

ドキュメンタリーと演劇的な要素を組み合わせた映像や、鑑賞者の心身に揺さぶりを掛けるような作品をてがける小泉明郎。無人島プロダクションで開催中の個展にて、ヴァーチャル・リアリティ(VR)用ヘッドセットを装着して体験する作品《Sacrifice》が日本初公開されている。同作品に内在する身体を徴集する力について、アーティストの大岩雄典が論じる。

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アニメーションでなければできなかったこと。藤田直哉評「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」展

2018年4月に惜しまれつつこの世を去った、高畑勲の没後初となる回顧展「高畑勲展─日本のアニメーションに遺したもの」。「絵を描かない」監督として知られる高畑の半世紀におよぶ仕事を紹介する本展から見える「思想」とはどのようなものなのか? 文芸評論家・藤田直哉が解き明かす。

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日本とアメリカのはざまで。中村史子評「山沢栄子 私の現代」展

日本とアメリカを行き来し、1930年代から半世紀以上にわたって日本における女性写真家の草分けとして活躍した山沢栄子。生誕120年を記念した回顧展「山沢栄子 私の現代」が、西宮市大谷記念美術館で開催された。これまで十分な調査、研究が行われてこなかった山沢作品をアメリカ写真史に接続することで読み解こうとする本展を、愛知県美術館学芸員の中村史子が考察する。

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新たな公共性へと思考を促す「エコ・クィア」なビジョン。はがみちこ評 鄭波(ジェン・ボー)「Dao is in Weeds」展

中国のソーシャリー・エンゲージド・アートの文脈で注目を集める鄭波(ジェン・ボー)の個展が、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUA(アクア)にて開催された。京都市立芸術大学が2023年に移転を予定している崇仁地域のリサーチや、ワークショップをもとにしたインスタレーションを発表した本展について、はがみちこがレビューする。

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誰もが何かのマイノリティ。工藤香澄評「彼女たちは叫ぶ、ささやく─ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」展

アーティストの一条美由紀、イトー・ターリ、碓井ゆい、岸かおる、ひらいゆう、松下誠子 、綿引展子、カリン・ピサリコヴァ、キュレーターの小勝禮子からなる「エゴイメ・コレクティヴ」は、ジェンダーやセクシュアリティ、民族間の格差が拡大する社会を、芸術を介して少しずつ変えることを目的に結成。コレクティブとして初の展覧会となった「彼女たちは叫ぶ、ささやく-ヴァルネラブルな集合体が世界を変える」を横須賀美術館学芸主査の工藤香澄がレビューする。

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古墳の町で表出される豊かな共感覚。荒木夏実評 山城大督「パラレル・トラベル」展

宮崎県の高鍋町で、山城大督による展覧会「パラレル・トラベル」が開催中だ。映像と空間における新しい表現を探求してきた山城は、古墳が点在する高鍋町の風景と、そこで過ごした経験や時間にインスピレーションを受け、上演型の新作インスタレーションなどを発表。音楽家の角銅真実をゲストパフォーマーに迎えるなど、様々な試みによって鑑賞者の五感を刺激する本展について、荒木夏実がレビューする。

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第五福竜丸展示館における「展示」のあり方とは。長谷川新評 「なぜ?ベン・シャーンが見た福竜丸-13点のデッサンと漁師たち」展

遠洋マグロ漁船がアメリカ軍による水爆実験で被ばくした「第五福竜丸事件」の資料を保存する第五福竜丸展示館(東京)にて、事件に関するルポルタージュの挿絵などを手がけたアメリカの画家・ベン・シャーンの原画展が開催されている。展覧会を含む館での展示について、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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近代絵画に描かれた夕景をたどる。副田一穂評「黄昏の絵画たち」展

黄昏時にうつろう独特の光。17世紀に成立した「風景画」をはじめ、東西の絵画に古来から描かれてきた夕暮れ時の風景の世界をひもとく展覧会「黄昏の絵画たち 近代絵画に描かれた夕日・夕景」が、山梨県立美術館で開催中だ。19世紀から20世紀にかけての西洋と日本の絵画と版画約160点から「黄昏の絵画」をたどる本展を、愛知県美術館学芸員の副田一穂がレビューする。

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都市計画がはらむ「とん挫性」を告発する。井上幸治評「東京計画2019 vol.2 風間サチコ バベル」展

オリンピック開催を来年に控え、画一化・均質化を目指し解体と開発が日々進行される東京。藪前知子がキュレーターを務めるプロジェクト「東京計画2019」では、5組のアーティストがそうした都市のあり方に対する諸問題に言及しつつ、別の可能性の提示を試みる。第2回となる本展は風間サチコ。第15回芸術評論において「風間サチコ論」で入選した井上幸治が、本展のねらいを読みとく。

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花には人間の何が映し出されるのか。中尾英恵評「第13回 shiseido art egg:見えない庭 今村文」展

「第13回 shiseido art egg」の入選者のひとり、今村文の個展が開催された。今村は、花や植物を主要なモチーフとし、古代エジプトでも使われていた「エンコスティック」という蜜蝋を用いた技法の絵画と、水彩画で描いた植物を切り絵として用いる作品を制作してきた。生命が循環する自然界の一部としての人間を想起させた本展を、小山市立車屋美術館学芸員の中尾英恵が読み解く。

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セクシュアリティを問う作品の周縁で。菅原伸也評「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」

現在、東京国立近代美術館では、洋画家・丸木俊による裸婦像《解放され行く人間性》(1947)に着想を得てセクシャリティを問う展覧会「解放され行く人間性 女性アーティストによる作品を中心に」を開催中だ。時代とともに様々な人間性が徐々に「解放され行く」流れをとらえた本展を、美術批評家の菅原伸也がレビューする。

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「意志のオプティミズム」から生まれるもの。毛利嘉孝評「ティン・リン展」

反政府活動の容疑で約7年刑務所に収監され、囚われた独房でアート作品を制作し続けたという特異な経験を持つミャンマーの現代美術を代表するアーティスト、ティン・リン。その日本初個展が、銀座メディカルビル1階にあるShinwa ARTEXのギャラリーで開催された。独房内で制作された作品をはじめ、ミャンマーのジェンダー問題をテーマにした作品などが一堂に会した本展を、東京藝術大学大学院国際芸術創造研究科教授・毛利嘉孝がレビューする。

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フレームを超えた新たなマンガ体験。塚田優評 尾焼津早織「ハイパーフレーミング・コミック」展

1995年生まれの尾焼津早織は、自らの造語である「ハイパーフレーミング・コミック」という手法を用いた新たな表現を模索している。ページというフレームがない自由なコマ構成による静止画のマンガと、カメラワークを組み合わせた映像作品は、マンガのシステムを問い直し、「読む」という体験の新たな可能性を引き出そうとする。3作品を展示した個展を、視覚文化評論家の塚田優が論じる。

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言語とイメージを問う、ヴィデオ・アート草創期の実践。長谷川新評 ケティ・ラ・ロッカ「Appendice per una supplica」展

1960〜70年代のイタリアで活動した女性アーティスト、ケティ・ラ・ロッカ。ヴェネチア・ビエンナーレ開催中のイタリアでは、トリノにて近年国際的に再評価される彼女の個展が開催された。ヴェネチア・ビエンナーレで発表された代表作を中心とした本展を、インディペンデント・キュレーターの長谷川新がレビューする。

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作家、美術館、観客における肯定の視座。服部浩之評「ウソから出た、まこと―地域を超えていま生まれ出るアート」展

地域の人々の参加や協働を軸とした表現の課題と可能性とは? 地域に根ざした実験的な活動を続けてきた3組の作家、北澤潤、Nadegata Instant Party、藤浩志による新作を取り上げ、その実践に迫った本展をインディペンデント・キュレーターの服部浩之がレビューする。

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光の演出は何を生み出したか。仲山ひふみ評 「クリスチャン・ボルタンスキー─Lifetime」展

現代フランスを代表するアーティスト、クリスチャン・ボルタンスキーの大規模個展が、国立国際美術館(大阪)から巡回し、国立新美術館(東京)にて開催されている。歴史や記憶、人間の存在の痕跡をテーマとしてきた作家の「演出」の手法とはいかなるものなのか、新進批評家として注目される仲山ひふみが論じる。

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身体をめぐる切実な希求がかたちになるとき。中村佑子評「塩田千春展:魂がふるえる」

糸を用いた大規模なインスタレーション作品などで、世界的に高い評価を得ている塩田千春。25年にわたる活動を網羅的に見せる過去最大規模の個展が森美術館で開催中だ。一昨年にがんが再発し、死と寄り添いながら治療と制作を進めてきたという作家は、いま、身体や魂の存在とどのように向き合い、かたちにするのか。映像作家の中村佑子がその軌跡を論じる。

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戦後日本の彫刻を牽引し、彫刻教育の礎を築いた一人。佐原しおり評「清水多嘉示資料展―石膏原型の全てと戦後資料(第Ⅲ期)」

戦後の具象彫刻を牽引するいっぽうで、帝国美術学校(現・武蔵野美術大学)の創設にも関わり、以降40年間にわたり同学で教鞭を執り続けた清水多嘉示(しみず・たかし)。武蔵野美術大学美術館では、そんな清水の功績をたどる「資料展」として、清水資料の全容を可能な限り展示することが試みられた。資料調査のワーク・イン・プログレスを「展覧会」というフレームで提示した本展を、埼玉県立近代美術館学芸員の佐原しおりがレビューする。

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