2018年のアートシーンをプレイバック!(10〜12月編)

様々なトピックスがあった2018年のアートシーン。美術手帖で取り上げたなかから、とくに振り返っておきたい出来事を4回に分けてお届けする。今回は10〜12月編。

11月に閉館が発表された原美術館

10月

・バンクシーの代表作《Girl With Balloon》が10月5日、ロンドンのサザビーズに登場。100万ポンド(約1.5億円)での落札が告げられると同時に、額縁に内蔵された装置で作品が切り刻まれた。バンクシーは事件後、この特殊な額縁を制作する過程から、サザビーズで切り刻まれるまでの一連の流れをダイジェストで振り返る動画をInstagramで公開。またこの投稿に「The urge to destroy is also a creative urge(破壊衝動は創造衝動でもある)」というピカソの言葉をコメントし、大きな反響を呼んだ。

>>サザビーズで“事件”発生。1.5億円で落札のバンクシー作品、切り刻まれる
>>バンクシーは、なぜ作品を切り刻まなければならなかったのか?

バンクシーのInstagramより

・世界2大オークションハウスのひとつ、クリスティーズの日本法人であるクリスティーズジャパンの代表取締役社長に、東洋美術部門インターナショナル・ディレクターでシニア・バイス・プレジデントの山口桂が就任した。

>>日本美術のスペシャリスト・山口桂がクリスティーズジャパン代表取締役社長に就任。老舗オークションハウスの今後について聞く

・草間彌生が理事長を務める草間彌生記念芸術財団が、中国で開催されていた草間の贋作展について「草間彌生の作品展を名乗る贋作展覧会について」と題した声明を発表。主催側に抗議の意思を表明した。

>>草間彌生の贋作展に財団が抗議。中国各地で開催か
>>草間彌生の新たな贋作展が発覚。草間自らコメントを発表「本当に残念」

・大阪市が2021年度の開館を目指している新美術館。その正式名称が「大阪中之島美術館(Nakanoshima Museum of Art, Osaka)」に決定。江戸時代の中之島には蔵屋敷が建ち並び、現在も集客施設や文化施設が集積するなど、大阪を代表するエリアのひとつであることを踏まえ、「将来にわたって愛される名称となるようにというとの思いを込めて」決定された。

>>大阪新美術館、正式名称は「大阪中之島美術館」に決定。開館は2021年度

大阪中之島美術館外観イメージ 提供=大阪市

11月

・ジェフ・クーンズが1988年に発表した作品《Fait d'Hiver》の盗作疑惑について、訴訟からおよそ3年を経た11月8日、クーンズに有罪判決が下った。フランスの広告会社で重役を務めるフランク・ダビドビッチは《Fait d'Hiver》が自身がファッションブランドのために1980年代半ばに制作した広告写真の盗作であると主張。フランスの裁判所はジェフ・クーンズとその事務所、美術館に損害賠償として計15.3万ドル(約1750万円)の支払いを命じた。

>>ジェフ・クーンズ、盗作で有罪へ。約17万ドルの支払いを命じられる

・イギリスのアーティスト、デイヴィッド・ホックニーによる《芸術家の肖像画―プールと2人の人物―》が9031万2500ドル(約102億4459万円)で落札。現存アーティストの最高落札額を更新した。同作は事前予想の時点で8000万ドル(約90億円)という数字が出ていた。

>>約102億円で落札。ホックニーの《芸術家の肖像画》が現存アーティストの過去最高額を更新

デイヴィッド・ホックニー 芸術家の肖像画―プールと2人の人物― © Christie’s Images Limited 2018

・愛知県美術館が11月19日、同館のウェブサイトをリニューアル。これにともない、同館が所蔵するコレクション1200件以上を「パブリック・ドメイン」として開放。ユーザーは営利・非営利にかかわらず自由にダウンロードできるようになった。

>>愛知県美術館がウェブサイトをリニューアル。クリムトやボナールなど1200点以上のコレクション画像が自由ダウンロード可に

・1979年に開館した原美術館が2020年12月での閉館を発表。閉館の理由として、建物の老朽化と、ユニバーサルデザインやバリアフリーの観点からの問題があることなどを明らかにした。

>>原美術館、2020年に閉館へ。40年の歴史に幕

12月

・2023年度より京都駅東側の崇仁地域へ移転整備される京都市立芸術大学の基本設計が発表。クラシック演奏会やオペラのほか、幅広い演目に対応可能な約800席のホールを整備し、京都市立芸術大学ギャラリー@KCUAも移転することが明らかになった。

>>京都市立芸術の移転計画、2023年に向けた基本設計が明らかに

移転後の京都市立芸術大学イメージ図(高倉塩小路より)

・イギリスの現代美術アワード「ターナー賞」の受賞者が12月5日に決定、すべてiPhoneで撮影した32分の映像作品《BRIDGIT》でノミネートされていたシャーロット・プロジャーが受賞した。

>>今年のターナー賞は、シャーロット・プロジャーに決定。iPhoneで撮影した映像作品《BRIDGIT》などが評価

・10年以上にわたってブロンズ像《勝利した若者の像》の所有権を争ってきた、イタリア政府当局とアメリカのJ・ポール・ゲティ美術館に対して、イタリアの最高裁判所はJ・ポール・ゲティ美術館に作品の返還を命じる判断を下した。

>>所蔵作品をイタリアに返還か。アメリカのJ・ポール・ゲティ美術館に命令が下される

・シカゴのミレニアム・パークに設置された自身の作品《クラウド・ゲート》を勧誘ビデオに無許可で使用したとして、アニッシュ・カプーアが著作権侵害で全米ライフル協会(NRA)を提訴。12月6日にカプーアは自身のウェブサイトで「我々はNRAに勝利した」との声明を発表した。

>>勧誘ビデオに作品を無断使用。アニッシュ・カプーアが全米ライフル協会に勝訴

シカゴのミレニアム・パークにあるアニッシュ・カプーア《クラウド・ゲート》 (C) Pixabay

・滋賀県立近代美術館をリニューアルし、2020年の開館を目指していた「新生美術館」について、今年7月に明らかになった改修・新棟建設計画の凍結に加え、「新生美術館」の名称見直しが発表された。

>>滋賀「新生美術館」の名称も見直しに。再オープンは2021年を予定

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