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2018.12.21

1位はレアンドロ・エルリッヒ展の61万人。2018年美術展覧会入場者数 TOP10

2018年の美術館展覧会を数字で回顧。日本全国の美術館・博物館で行われた展覧会のなかから、入場者数TOP10を紹介する。※対象展覧会は2018年1月1日〜12月3日の期間に開催されていたもので、2017年から会期がまたいでいるものも含む。12月18日時点で回答がなかったもの、ウェブサイト公開不可のもの、入場者数を公表していないものは含まない。またジャンルは美術、あるいはそれに準ずるものに限る。

「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」より《建物》(2004/17)
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レアンドロ・エルリッヒが61万人で圧倒

 2018年上半期の入場者数ランキングでも1位に輝いた、森美術館の「レアンドロ・エルリッヒ展:見ることのリアル」(2017年11月18日〜2018年4月1日)が、そのまま2018年のトップの座を維持した。入場者数は、今年唯一の60万人超えとなった61万4411人(六本木ヒルズ展望台 東京シティビューとの共通チケット)だ。

 アルゼンチン出身のアーティスト、レアンドロ・エルリッヒによる世界初の大規模個展となった同展では、全44作品のうち8割が日本初公開。当初の動員目標は40万人だったが、これを大きく上回る結果となった。この数字は、森美術館にとって開館記念展「ハピネス」(73万985人)に次ぐ歴代2位。

 作品の多くが参加型であったこと、またすべての作品が写真撮影可能だったことなど、「シェアしたくなる展覧会」として広く認知されたことがこの動員につながったと言えるだろう。

2位も森美術館。「建築の日本展」が50万人超え

キャプション

 今年は森美術館の展覧会が2位までを独占した。「建築の日本展:その遺伝子のもたらすもの」(4月25日~9月17日)は、53万8977人を記録。

 同展では日本の古代、古典建築の特徴を分析し、その「遺伝子」がいかに国際的に広がっていったのかを、100のプロジェクト、400の展示物を通して紹介するもの。その内容をめぐり、様々な批評が巻き起こった同展だったが、国宝《待庵》の原寸大再現や丹下健三自邸の巨大模型、齋藤精一+ライゾマティクス・アーキテクチャーによる体験型インスタレーション《パワー・オブ・スケール》など、目玉となる作品が効果的に散りばめられていたことがこの数宇に影響していることは間違いないだろう。

根強いルーヴル美術館人気。「ルーヴル美術館展」が42万人を記録

「ルーヴル美術館展」より、右からジャック=ルイ・ダヴィッドと工房《マラーの死》(1794頃)、アンリ・ド・トリケティ《フランス王太子、オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアン(1810-1842)の墓碑肖像》(1843-44頃)

 ルーヴル美術館はやはり強い。国立新美術館で開催された「ルーヴル美術館展 肖像芸術–人は人をどう表現してきたか」(5月30日〜9月3日)は42万2067人を記録した。

 同展は、主催の日本テレビとルーヴル美術館が2018年以降の20年間で開催する全5回の「ルーヴル美術館展」の第1弾。ルーヴル美術館は2005年以降、日本で4つの展覧会(05年、06年、09年、15年)を開催してきたが、肖像芸術にフォーカスした展覧会はこれが初めてとなった。

 ルーヴル美術館の全8部門から選りすぐられた約110点の作品を通し、「肖像」の社会的役割や表現上の様々な特質を紹介した同展。テーマ自体はやや地味なものだったが、ジャック=ルイ・ダヴィッドと工房による《マラーの死》(1794頃)をはじめ、アンヌ=ルイ・ジロデ・ド・ルシー=トリオゾン(1767-1824)の工房による《戴冠式の正装のナポレオン1世の肖像》(1812以降)、27年ぶりの来日となったヴェロネーゼの《美しきナーニ》(1560頃)など、ルーヴルが誇る名品が多くの来場者を引き寄せた。

「ルーヴル美術館展」より、手前はフランリェスコ・マリア・スキアッフィーノ《リシュリュー公爵ルイ・フランソワ・アルマン・デュ・プレシ(1696-1788)》(1748)

 なお、1日あたりの入場者数で見ると、「第70回正倉院展」(10月27日〜11月12日)が1万4461人とダントツのトップ(総入場者数は24万5832)。また、東京国立博物館の特別展「仁和寺と御室派のみほとけー天平と真言密教の至宝ー」(1月16日〜3月11日)が6751人(総入場者数は32万4042人)、国立新美術館の「生誕110年 東山魁夷展」(10月24日〜12月3日)が6684人(総入場者数は24万623人)となっており、日本美術の根強い人気が見て取れる。

「生誕110年 東山魁夷展」より、唐招提寺御影堂障壁画《濤声》(1975)

気になる2019年の行方は?

 今回の集計対象外ではあるが、上野の森美術館で開催中の「フェルメール展」(10月5日〜2019年2月3日)は会期を1ヶ月以上残した12月18日に入場者数40万人を突破。また東京都美術館で開催中の「ムンク展」(10月27日〜2019年1月20日)も12月10日時点で入場者数30万人を突破している。これらの展覧会がラストスパートでどこまで数字を伸ばすのか。

 加えて、2019年は過去最多となる20点以上のグスタフ・クリムトの油彩画が揃う東京都美術館の「クリムト展 ウィーンと日本 1900」(4月23日〜7月10日)をはじめ、クリムトやエゴン・シーレらが活躍したウィーン黄金期に焦点を当てた国立新美術館の「ウィーン・モダン」展(4月24日〜8月5日)、森美術館の「塩田千春展:魂がふるえる」(6月20日〜10月27日)などの大型展が控えている。