2018.12.27

2018年のアートシーンをプレイバック!(7〜9月編)

様々なトピックスがあった2018年のアートシーン。美術手帖で取り上げたなかから、とくに振り返っておきたい出来事を4回に分けてお届けする。今回は7〜9月編。

9月に撤去されたヤノベケンジ《サン・チャイルド》
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7月

・人工霧による「霧の彫刻」で知られるアーティスト・中谷芙二子が世界的に顕著な業績をあげた芸術家に毎年授与される「高松宮殿下記念世界文化賞」の「彫刻部門」を受賞。なお、絵画部門はピエール・アレシンスキー、建築部門はクリスチャン・ド・ポルザンパルク、演劇・映像部門はカトリーヌ・ドヌーブ、音楽部門ではリッカルド・ムーティがそれぞれ賞を受賞した。

>>「霧の彫刻」の中谷芙二子が高松宮殿下記念世界文化賞を受賞

・第2次世界大戦での軍隊体験を原点に版画作品を制作。ウフィッツィ美術館(イタリア・フィレンツェ)で日本人として初めて個展が開催されるなど、国内のみならず世界的に高く評価された浜田知明が7月17日、老衰のため逝去した。享年100歳。自殺しようとする骸骨姿の兵士を描いた「初年兵哀歌」シリーズなどの代表作を残した。

>>戦争体験の哀しみに風刺を込めて。版画家、彫刻家の浜田知明が100歳で逝去

・滋賀県内唯一の公立である、滋賀県立近代美術館を「新生美術館」(呼称)として2020年に開館させる計画が凍結。本体工事費の上限額に設定した47億円の範囲内で整備を進めることが困難となったことが原因。

>>滋賀県立新生美術館計画、白紙へ。現行の「近代美術館」として再オープンの方針を固める

「新生美術館」俯瞰パース(SANAAによる現行の設計イメージ)

8月

・ウィーン世紀末を代表する画家であるグスタフ・クリムトの展覧会「クリムト展 ウィーンと日本 1900」が2019年4月23日から7月10日まで上野・東京都美術館で、その後7月23日から10月14日の会期で豊田市美術館にて開催されることが発表された。展覧会には日本の展覧会としては過去最大級となる油彩画約20点などが集結する。

>>待望の「クリムト展」が2019年春に東京都美術館で開催。過去最大級となる油彩画の展示でその官能的な世界に迫る

・ベルリンを拠点にする中国人アーティスト、アイ・ウェイウェイ(艾未未)の北京郊外にある制作スタジオが政府によって取り壊された。事前通告なしで行われたという工事の様子を、アイが自身のインスタグラムに投稿し、事態が発覚した。

>>アイ・ウェイウェイの北京郊外のスタジオ、取り壊しへ

・オークションハウスのサザビーズジャパンは、2005年から14年にかけて同社代表取締役社長を務めていた石坂泰章が同社代表取締役会長兼社長に就任することを発表した。

>>サザビーズジャパンに石坂泰章が復帰。代表取締役会長兼社長に就任へ

石坂泰章

・2018年8月3日に福島市の子育て支援施設「こむこむ館」前に設置されたヤノベケンジによる立体作品《サン・チャイルド》が、同施設前から撤去されることが発表された。撤去の理由として福島市長は「風評への懸念、作品への違和感、設置する場所の問題など設置に反対する声も多く、このように賛否が分かれる作品を『復興の象徴』として、このまま市民の皆様の前に設置し続けることは困難と判断しました」とコメントした。

>>福島に設置のヤノベケンジ《サン・チャイルド》が撤去へ。時期と収蔵先などは未定

9月

・品川の原美術館とその別館である群馬・伊香保のハラ ミュージアム アークの館長が交代。2館の館長を兼任していた原俊夫が退任し、7月1日付で新館長にそれぞれ内田洋子と青野和子が就任した。なお原俊夫は、両館の運営母体である公益財団法人アルカンシェール美術財団の理事長に就任した。

>>原美術館とハラ ミュージアム アークの館長が交代。原俊夫は財団理事長へ

・1952年にブリヂストンの創業者・石橋正二郎が収集した美術作品を展示するため開館したブリヂストン美術館が、20年1月のリニューアル開館を発表。同時に新館名を「アーティゾン美術館(ARTIZON MUSEUM)」とすることも明らかにされた。

>>新ブリヂストン美術館は「アーティゾン美術館」として2020年オープン。コンセプトは「創造の体感」

「アーティゾン美術館」外観イメージ

・9月12日、香川県丸亀市にある丸亀市猪熊弦一郎現代美術館の野外に設置された猪熊弦一郎《シェルの歌》の一部が人為的に折られる事件が発生。また同16日には、六甲ケーブル六甲山上駅近くにある飲食店のテラスに設置されていた笠井祐輔の作品《動物たちも景色を見ている》も設置された3体のうち1体は現場からなくなり、残る2体は足が折られるなどの被害を受けた。

>>相次ぐ作品破壊。六甲ミーツ・アートや猪熊弦一郎現代美術館で発生
>>「六甲ミーツ・アート」で破壊された作品が修復。展示再開へ

・ZOZO代表の前澤友作が9月18日、「#dearMoon」と名付けられたプロジェクトを発表。イーロン・マスクが設立したSpaceX社による完全再利用型次世代ロケットBFRを利用し、2023年に月へ向かうというこのプロジェクトには、前澤自身に加えて、画家、音楽家、映像作家、ファッションデザイナーなど、クリエイティブな分野で活動する人々が1週間の宇宙滞在に加わることが明らかにされた。

>>前澤友作、アーティストとともに月へ。「#dearMoon」プロジェクトを2023年に実行

・福島市の子育て支援施設「こむこむ館」前に設置されたヤノベケンジによる立体作品《サン・チャイルド》の撤去作業が行われた。この件に関し、美術手帖では彫刻家であり彫刻研究者の小田原のどかによる論考を掲載した。

>>拒絶から公共彫刻への問いをひらく:ヤノベケンジ《サン・チャイルド》撤去をめぐって

解体される《サン・チャイルド》 撮影=小田原のどか

・9月23日、マリーナ・アブラモヴィッチがイタリア・フィレンツェで開催された展覧会のサイン会後、51歳のチェコ人の男に襲撃される事件が発生。「自分のアートのため」という動機のもと、アブラモヴィッチの肖像画を手にした男は、キャンバスでアブラモヴィッチの頭に打ちつけようとして取り押さえられた。

>>マリーナ・アブラモヴィッチが襲撃被害に。フィレンツェの個展で発生