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前橋国際芸術祭2026で見るべき10作品。マルジェラから蜷川実花まで、初開催を歩くためのアートガイド【4/6ページ】

山縣良和《Where the story ends – つづく よ つづく– 》──終わりの見えない「行列」が空間を占拠する

 アーツ前橋の展示で、強い視覚的インパクトを放っていたのが、ファッションデザイナー・山縣良和による《Where the story ends – つづく よ つづく–》(2026)だ。

山縣良和《Where the story ends – つづく よ つづく– 》(2026)

 山縣はファッションレーベル「writtenafterwards」を主宰し、神話や物語、社会や歴史への問いをファッションの枠組みを越えて展開してきた。本作では「行列」をテーマに、玩具、剥製、石膏像など、異なる時間をまとった無数の物が一本の列となって展示空間を進んでいく。

 小さなアヒルのおもちゃやミニカー、ぬいぐるみの列から始まり、石膏像や動物の剥製、家具へ。そしてその先には巨大な遊具のような構造物までが現れる。一つひとつのものは、玩具店や博物館、学校、家庭など、まったく異なる文脈に属するものだ。しかし「並べる」という単純な行為によって、それらは不思議な秩序を持ちはじめる。

山縣良和《Where the story ends – つづく よ つづく– 》(2026)

 何より面白いのは、美術館の展示室を作品が大胆に横断していることだ。作品は壁面に収まるのではなく、空間そのものを占拠するように長大な列をつくる。鑑賞者はその外側から全体を眺めることもできれば、列に沿って歩き、まるで自分自身も行進の一部になったような感覚を味わうこともできる。

 山縣の3歳の息子が無心におもちゃを一列に並べる姿から着想を得たと言う本作。実際に目の前にすると、その印象はどこか祝祭的でありながら、不穏でもある。玩具も、古典彫刻も、動物も、家具も、価値や年代の違いを超えて同じ方向へ進んでいる。それが人間社会の縮図のようにも、時間そのものが連なっているようにも見える。タイトルが示すように、「物語が終わる場所」の先にも列はなお続いていく。

山縣良和《Where the story ends – つづく よ つづく– 》(2026)

山田紗子《outline bar》──建築は「見るもの」なのか?

 アーツ前橋のなかで、作品と人間の関係そのものに目を向けさせるのが建築家・山田紗子の《outline bar》(2026)だ。

山田紗子《outline bar》(2026)

 細いスチールバーによってつくられるこのインスタレーションは、空間を仕切る壁でもなければ、明確な用途を持つ家具でもない。むしろ重要なのは、人がその内部に入り、腰掛け、立ち止まり、誰かと話すことで初めて空間として立ち上がることだ。

 作品を「鑑賞する」のではなく、その一部になる。そうした身体的な体験は、本芸術祭における建築の位置づけを考えるうえでも興味深い。山田は前橋市内で実際の建築プロジェクトにも関わっており、作品と都市の実践が地続きになっている点にも注目したい。