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2022.12.6

高騰する美術館の特別展料金。秋の入館料調査が示すもの

コロナ禍以降、上昇傾向にある日本の美術館・博物館の鑑賞料金。時には2000円を超えるような料金設定があるなか、その実態と背景を『日本の博物館はなぜ無料でないのか?―博物館法制定時までの議論を中心に― 』の著者で博物館制度に詳しい瀧端真理子(追手門学院大学教授)が分析する。

文=瀧端真理子(追手門学院大学教授)

(C)Unsplash

 コロナ禍以降、日本のミュージアムの料金が上昇傾向にあり、時に2000円を超える入館料が発生するなか、美術館がこれまで以上に「遠い存在」になるのではないか──編集部からの問題提起を受け、国内美術館の料金(常設展、特別展)を調査してみた。

調査対象と手法

 調査対象には全国美術館会議正会員406館(2022年6月2日現在)のなかから、各地を代表すると思われる111館を選んだ。選択が主観的であることはお許しいただきたいが、おおむね、現在の日本の美術館の料金事情は把握できたと思う。111館中、改修工事等のために長期休館中の館が7館あり、コロナ禍で人出の少ないこの時期が改修休館の好機とされていることがうかがえる。調査には各館の公式サイトに10月末に記載されていたデータを用い、今回は大人一般当日券(前売りのみの場合は前売り)の金額を対象とした。特別展については、11月3日(文化の日)を含むものを対象とした。集計し分析に用いたデータはリンクからご覧いただきたい。

料金設定──タイプ分け

 料金の徴収方法は、大きく①入館料のみの設定、②常設(コレクション)展と特別展の二本立ての設定、の2タイプに分けられる。

①入館料のみのタイプ

 入館料が1500円を超える館は、北から十和田市現代美術館1800円(企画展閉場時は1000円)、ポーラ美術館1800円、静嘉堂文庫美術館1500円、MOA美術館1600円、大原美術館1500円、足立美術館2300円、大塚国際美術館3300円、地中美術館2100円の8館で、その多くは観光地型の美術館である。①タイプで入館料が1000円以上1500円未満の館は、本間美術館1000円、原美術館ARC1100円、出光美術館1200円、大倉集古館1000円、日本民藝館1200円、徳川美術館1400円の6館で、歴史ある公益財団法人立の美術館がこの価格帯に収まっている。

②常設(コレクション)展と特別展の二本立てのタイプ

 まず美術館(建物)への入館を無料としているのは、八戸市美術館、秋田県立近代美術館、秋田県立美術館、埼玉県立近代美術館、東京都美術館、 金沢21世紀美術館、高松市美術館、福岡アジア美術館、佐賀県立美術館、熊本市現代美術館の10館である。

常設展の料金設定

 ②タイプで、休館中の館を除き、常設(コレクション)展が有料の館は59館で、その金額は、東京国立博物館の総合文化展1,000円を筆頭に、山形美術館800円、京都市京セラ美術館730円(市外在住者)、長野県立美術館700円、京都国立博物館700円、奈良国立博物館700円、奈義町現代美術館700円、九州国立博物館700円と続く。

 全59館の常設展料金は、平均値395円、中央値335円となる。地域的には、例外はあるものの、北海道・青森の510円、宮城から関東までの200〜300円台、東京の500円、東海の300円台、近畿の300〜500円台、四国の200〜300円台といったある程度のまとまりが存在する。料金を周辺の館を参照して決めているのではないかと推測される。また、全国レベルで同規模の館を参考にしているケースも考えられる。

特別展の料金設定