川俣正《Tree Hut in Maebashi 2026》──まずは芸術祭の「目印」から
メイン会場のひとつであるアーツ前橋を訪れたら、まず見上げたいのが川俣正による《Tree Hut in Maebashi 2026》(2026)だ。

都市や建築に木材や廃材を介入させ、その場所の見え方そのものを変えてきた川俣。「Tree Hut」は2007年にノルウェーで始まり、世界各地で展開されてきた代表的シリーズだ。前橋ではアーツ前橋正面のケヤキなど、街に存在する樹木を舞台として作品が設置されている。
美術館の内部ではなく、街にすでに存在する樹木そのものを支持体とするところが重要だ。何気なく通り過ぎていた街路樹に小さな建築物が出現することで、普段の前橋の風景がわずかにずれて見えてくる。
作品を見るために立ち止まった瞬間、それまで背景だった街路樹や建物、道路そのものが意識の前景へと浮かび上がる、本芸術祭の入口として象徴的な作品だ。なお、本作は芸術祭終了後も継続して展示される予定だという。

アレクサ・クミコ・ハタナカ《儚い》──アーツ前橋の吹き抜けを満たす和紙
アーツ前橋の館内ではまず、カナダを拠点とするアレクサ・クミコ・ハタナカの《儚い》(2026)に注目したい。


手漉き和紙を染め、刷り、縫い合わせながら作品を制作してきたハタナカ。本作では何百もの和紙の断片から身体のシルエットや魚の形態を生み出し、鯉のぼりや地元の鮎の魚拓などのイメージを重ね合わせる。
作品はアーツ前橋の吹き抜けを生かして大きく展開されており、同館の空間的な特徴と強く呼応する。公式サイトでも本作は前橋国際芸術祭の主要作品のひとつとして紹介されている。
紙という軽やかな素材は空間のなかで重力から解き放たれ、上下階を貫くように漂う。近くで見ると和紙の質感や染めの繊細さが際立ついっぽう、離れて眺めれば、複数の断片がひとつの巨大な身体や生命体のようにも見えてくる。



















