「神戸六甲ミーツ・アート 2026 beyond」開幕レポート。観光をしながら「観光」という行為をアーティストとともに考える

神戸・六甲山上に点在する各施設を舞台にした芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート2026 beyond」が開幕した。会期は11月29日まで。その見どころをレポートする。

文・撮影:安原真広(編集部)

六甲ガーデンテラスから神戸市街を望む。わにぶちみき《Walking Scapes - 解像度 -》(2026)

 兵庫県神戸市の六甲山で、芸術祭「神戸六甲ミーツ・アート 2026 beyond」が開幕した。会期は11月29日まで。

 本芸術祭は、2010年に六甲山を舞台にスタート。毎年開催され、今年で17回目を迎えた。主催は六甲山観光と阪神電気鉄道。総合ディレクターを六甲山観光の山川佳乃が務め、エリア・キュレーターとして小國陽佑(特定非営利活動法人芸法 理事長)、高見澤清隆 (インディペンデント・キュレーター)、堀江紀子(インディペンデント・キュレーター)、鷲尾英玲奈(六甲山観光株式会社)が名を連ねる。本稿では各エリアの作品を紹介する。

六甲ケーブル/天覧台

 観光や登山で六甲山上へ向かう人々にとっての玄関口である六甲ケーブルは、ふもとの「六甲ケーブル下駅」と山上の「六甲山上駅」のあいだをつなぐ路線だ。六甲山上駅の駅舎は1932年に竣工しており、アール・デコ様式のモダンな建築は近代化産業遺産にも登録されている。

ニシハラ★ノリオ×北園組《とびだせ!! オレの部屋》(2026)。ケーブルカーと写真が撮れる撮影スポットとして機能する
ニシハラ★ノリオ×北園組《とびだせ!! オレの部屋》(2026)の映像作品。本芸術祭の見どころをミュージカル調で紹介

 造形作家のニシハラ★ノリオと、音楽家兄妹の北園組は、山上とふもとの両駅に作品を展開した。北園組は兄の優が作詞・作曲した楽曲と、妹のあかねがガイドに扮して出演する映像を組み合わせて上映。芸術祭の各会場をミュージカル調で紹介している。ここに、ニシハラ★ノリオによる立体作品が組み合わされ、観光地らしいフォトスポット《とびだせ!! オレの部屋》(2026)ができあがった。

 ケーブルカーを降りた六甲山上駅には、神戸の市街を眼下に望める眺望施設「天覧台」が付属している。ここでは、井上涼、ジュン・グエン=ハツシバ、宮嵜浩の作品が展示されている。

宮嵜浩《借景のヴァニタス》(2026)。屋外展示となっており、テーブルの皿の上では植物やゴミが美しく盛りつけられている

 宮嵜浩は屋外にあるベンチとテーブルに《借景のヴァニタス》(2026)を展開。六甲山で採取された植物や、都市から発生するゴミをテーブルの上に食器とともに盛りつけた。自然豊かな六甲の「生」の象徴である植物と、都市から廃棄される「死」であるゴミを、眼下の神戸市という大都市を見ながら食卓で「味わう」ことができる。

ジュン・グエン=ハツシバ《2つの山の会話 — 葬送にて —六甲山とバヴィ山が語る—》(2026)。展望台の一角をアカマツの姿で占めた

 日本人の母とベトナム人の父をもつアーティスト、ジュン・グエン=ハツシバは、《2つの山の会話 — 葬送にて —六甲山とバヴィ山が語る—》(2026)を天覧台の屋上スペースで展開。天覧台を昭和天皇が訪れていたという歴史を踏まえ、昭和天皇が第二次世界大戦の降伏文書に署名し、またホー・チ・ミンがベトナム独立宣言に署名した、1945年9月2日という日付に着目。母と父、それぞれの故郷の国の山である六甲山とバヴィ山の対話を、巨大なアカマツの姿に仮託して表現した。

井上涼《じーっと! つぶさに! 妖精ウォッチング》(2026)。街に住む妖精たちの生活を覗き見るような映像作品

 歌とアニメーションで美術のおもしろさを伝えるNHK Eテレの番組『びじゅチューン!』をはじめ、自作のアニメーションと楽曲による映像作品を制作してきたことで知られる井上涼。天覧台の屋内にある休憩スペースで上映される《じーっと! つぶさに! 妖精ウォッチング》(2026)は、架空の街に住む妖精たちの姿を覗き見ながら歌で紹介する作品だ。天覧台から見下ろした神戸の街で生きる無数の人々がきっと持っている、一人ひとりのユニークなエピソードを想像させる仕掛けといえるだろう。