夜の光州で流れる、約11時間の「謝罪」
第3ギャラリーのプログラムであるジェームズ・T・ホンの《Apologies》(2012〜)は、展示室、展示時間の枠を越えて展示される作品だ。

Gallery, Supported by Empty Gallery
約10時間43分に及ぶこの映像作品は、政治家をはじめとする権力者が公に行った「謝罪」の映像を収集したもの。会期中は毎晩19時から21時まで、その一部が光州ビエンナーレ展示館の外壁3面にも投影される。展覧会場の内部で蓄積された権力、責任、後悔をめぐる言葉が、夜になるとビエンナーレ広場へ流れ出す仕組みだ。
1980年の光州民主化運動の記憶を抱える都市において、誰が、誰に対して、どのような言葉で責任を表明するのかという問題が、都市空間のなかへ置かれることになる。
最後に残る「空気」
5つのギャラリーをめぐる旅の終点となるのが「Air and Articulations」だ。ここでは、それまで展示を構成していた物質や身体、土地といった明確な対象は希薄になり、空気、呼吸、音、言語といった、目に見えないものへと変化していく。

中心となるのは、ジャクリーン・キヨミ・ゴークの《Not Exactly BPM(Variation Rrose)》(2026)。透明なビニール製の構造物、送風機、音響、マイクロコントローラーなどによって構成された大型インスタレーションで、テクノ・アーティストのRroseが本作のために制作した楽曲が用いられている。
透明な壁面は空気によって膨らみ、収縮し、内部を進む鑑賞者の身体と音との関係を変化させる。鑑賞者は音を外部から聞くのではなく、空気と音によって構成された空間そのものの内部へ入っていくことになる。

Instruments Lab (Immanuel Yang, Suhyun Lim, Hyewon Yang, Jaeyeon Kim), Supported by the
Gwangju Biennale Foundation and BVLGARI
さらに第5ギャラリー脇のロビーでは、本展のヴィジュアル・アイデンティティも手がけたE・ルーン・カンによる《Image-Poems》(2026)が展開される。参加作家から提供された作品画像を、大量のK-POPの曲の歌詞をインプットしたAIが分析、作品ごとにK-POP風の詩を作成した。写真と詩と73枚のポスターとして掲示するとともに、AI生成の音声によって読み上げる作品だ。これらは公式のイメージとして光州市内各所の屋外バナーや出版物、デジタルプラットフォーム、公式グッズを通して多くの場で目にすることができる。
「より多く」ではなく、それぞれの作品をゆっくりと注意を向ける
今回の光州ビエンナーレは、規模の拡大によって国際展の意義を示すのではなく、限定された空間のなかで作品同士の関係と鑑賞時間を組み立て直そうとするものだ。ホーが「注意の持続可能性」と呼ぶこの問題は、作品をどれだけ多く見ることができるかではなく、ひとつの作品にどのような時間を渡せるのかという問いでもある。「You Must Change Your Life」と名付けられたこの展覧会は、鑑賞者に単純な変化を要求するものではない。見る速度や距離、身体の置き方を少しずつ変えながら、すでに進行している変化を感知するための場を提示していた。



















