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建築コレクティブ・GROUPはなぜ「都市と眠り」に着目するのか。模型を通じて読み解く「仮設的」な思考

東京・天王洲アイルのWHAT MUSEUMで開催中の​​グループ展「波板と珊瑚礁 - 建築を遠くに投げる八の実践」(4月21日〜9月13日)。領域横断的な活動で注目を集める建築コレクティブ・GROUPは、本展に「都市と眠り」という批評的なテーマを掲げて出展している。独自の着眼点を持つメンバーらに、テーマの背景や、異なるバックグラウンドを持ちながら流動的な協働を続けるコレクティブのあり方について話を聞いた。※本記事は7月4日24時まですべての方に全文お読みいただけます。

聞き手=檜山真有 構成=三澤麦(編集部) ポートレート撮影=稲葉真

マンションの1室にあるGROUPの小さなアトリエ

 建築の設計・施工から展覧会のセノグラフィー、自らのリサーチや提案をインスタレーションとして発表する展覧会の開催、さらには建築にまつわるサブスクリプション型プラットフォームの運営まで──。プロジェクトの幅広さゆえに、その実体のつかめない建築コレクティブ・GROUP。在籍するメンバーはそれぞれ異なるバックグラウンドを持ち、仮設的かつ継続的に協働できる場の構築を目指して活動している。

 2021年、のちにネオ・ダダの拠点ともなった「新宿ホワイトハウス」(設計:磯崎新、1957)の改修プロジェクトをきっかけに結成。その後、25年の大阪・関西万博では、「夢洲に人が入ることができない庭をつくる」をコンセプトとしたトイレ「夢洲の庭」の設計でも注目を集めた。そのいっぽうで、24年に開催された個展「島をつくる | Planning Another Island」(マイナビアートスクエア、東京)では、建物の解体や廃棄といった側面に着目したアプローチをインスタレーション形式で展開している。

 設計・施工はもちろん、領域横断的な活動を展開するGROUPを読み解くうえで重要となるのは、建築や都市開発に対する独自の着眼点だ。本インタビューでは、現在参加しているグループ展「波板と珊瑚礁」で新たに提案する「都市と眠り」に焦点を当てながら、その独自の視座や、コレクティブとしてのあり方に迫る。

左から、柏﨑健汰、片桐悠自、井上岳、赤塚健、坪田怜子、齋藤直紀、中井由梨、曽根巽。手前は聞き手の檜山真有。GROUPのアトリエにて

「模型」の概念を拡張し、現実を記録する

──GROUPは現在、WHAT MUSEUMで開催中の展覧会「波板と珊瑚礁 - 建築を遠くに投げる八の実践」に参加されています。キュレーションはSUNAKIの砂山太一さんとWHAT MUSEUM 建築倉庫が担当されていますが、どのようなオーダーがあったのでしょうか。

曽根巽(以下、曽根) 「模型の可能性」というテーマのもと、模型がメディウムとして指定されていました。それを踏まえて、「模型」という言葉の従来の枠にとらわれず、比較的自由に創作させていただきました。

井上岳(以下、井上) 「実際の建築プロジェクトの紹介にはしないでください」というオーダーは、出展者全員に共通して伝えられていました。私たちは普段、建築事務所として建築設計を行っていますが、そうした普段の仕事の模型をそのまま展示することは避けてほしいという意味だと受け止めました。

──アンビルドのような完成されていない・予定のない建築プロジェクトとも異なるものを想定されていたのでしょうか。

中井由梨(以下、中井) 「実在するプロジェクトの建築物の縮尺模型」ではなく、建築家それぞれが概念的であったり、理想として掲げている「建築的な思考」を可視化するためのアプローチとして模型を捉え直してほしい、という意図だったかと思います。

──WHAT MUSEUMには「建築倉庫」があります。建築家や設計事務所から預かった建築模型の一部が一般公開されており、それらはプレゼンテーションのためであったり、自分たちの思考を深める役割をもっています。いっぽうで、今回の展覧会では上記に述べたような模型にとらわれないアプローチも多く見受けられました。GROUPとしては「模型」という存在をどのように捉えているのですか。また、今回の展示作品にはその考え方がどのように反映されているのでしょうか。

井上 模型には長い歴史があります。例えば、古代エジプトではスフィンクスを建設するための模型が出土しています。その歴史のなかでも、模型の使われ方は変化してきました。基本的にはクライアントへのプレゼンテーション用であったり、施工のための確認であったりします。これは現代でも続いている仕組みです。ほかには、役所などに行くと都市模型が置いてあるのを目にします。あれは、訪れた市民に対して「公共性」を示す装置として機能しています。つまり、「ここは市民に開かれた場所である」という意思表示になっているんです。

 今回我々が出品している模型は、設計者や行政がつくるトップダウン式の模型ではなく、「現実を記録するための装置」として提示しています。

曽根 模型は本来、実物をプレゼンテーションするための代理的な存在ですが、砂山さんが今回の展示でテーマとしたのは、「私たち建築家の思考そのものをプレゼンテーションするために、模型という考え方をひとつの形式とする」ということです。その解釈自体は、それぞれの建築家に委ねられています。

──GROUPが展示している模型は1分の1の「マクドナルドの座席」ですよね。模型を模型たらしめる要素とは何にあると考えていますか。例えば、1分の1の模型は彫刻だともいうことができそうです。「マクドナルドの座席」を実寸大で再現したことには、どのような意図があったのでしょう。

赤塚健(以下、赤塚) 今回GROUPは「都市と眠り」というテーマで出展しています。「マクドナルドの座席」をあの会場に再現したのは、そこで起きている日常的な行為を抽象化し、ひとつの客観的なオブジェクトとして取り扱いたいという意図があったからです。模型自体は、実物の座席を3Dスキャンし、3Dプリンターを用いて出力して制作しました。

「波板と珊瑚礁 - 建築を遠くに投げる八の実践」の展示風景より、GROUP 「都市と眠り」  撮影:木奥惠三 写真提供:WHAT MUSEUM
マクドナルドの座席を1分の1スケールで出力した模型《ルーム|35.6603977, 139.6983940, 260311》(2026) 撮影:マ.psd 写真提供:GROUP

井上 建築模型の「模型らしさ」は素材に依存している部分が大きいかもしれません。ただ、それも国によってかなり異なるんです。例えば、ヨーロッパ、アメリカ、そして日本の模型では、それぞれ使われる素材の標準が違っています。

曽根 作業性(ワーカビリティ)の高さが素材の選定にも影響していると思います。彫刻とは異なり、模型はどこまでいっても「手段」です。対象に似せてつくるために、加工しやすい素材であることが重視されてきました。今回、GROUPが模型を使用する目的は、「遠くにある特定の環境を1分の1で記録すること」にありました。そのため、ディティールを可能なかぎり再現するため、人の手による加工ではなく3Dプリンターという技術を選択しました。

編集部