「おとぎの国のモードをさがして/Fairy Tale MODE」(千葉市美術館)開幕レポート。おとぎ話のイメージに息づく「モード」を探る【3/3ページ】

第5章「異国の世界へ」

 第5章では、18〜19世紀にかけてヨーロッパで関心が高まった東洋(オリエント)の表象を紐解く。ナポレオンのエジプト遠征や植民地帝国の拡大を背景に、異国への関心は文学や美術に広く向けられ、『千夜一夜物語(アラビアン・ナイト)』をはじめとするオリエンタリズムの潮流を形成した。会場では、エドマンド・デュラックによる『千夜一夜物語』の書籍などが紹介され、豪奢な衣装や装飾に彩られた当時の「東洋」のイメージが立ち現れる。

第5章「異国の世界へ」の展示風景

第6章「おとぎ話の想像力」

 最終章となる第6章では、おとぎ話に描かれる「異なる存在同士の結びつきや変身」を取り上げる。おとぎ話では、現実の論理を超え、動物が人間に変身するといった、異なる領域を越境する場面が描かれる。例えば「美女と野獣」に代表される異類婚姻譚では、人間が動物や魔法的な姿の存在と結びつく世界がごく自然に描かれる。また、動物が衣服を着て言葉を話す世界観は、イソップ寓話をはじめとする様々な物語へと展開されていった。

手前は、E.V.B『美女と野獣』(1875)リトグラフ、多色刷 鶴見大学図書館
第6章「おとぎ話の想像力」の展示風景

 このような境界を超える想像力は、20世紀以降の芸術作品にも受け継がれている。会場ではマックス・エルンストや岡上淑子によるコラージュ、マルク・シャガールによる作品などが紹介されている。本章はおとぎ話に見られる想像力を、たんに幻想的な物語を生み出すものとしてだけでなく、世界を分節する境界そのものを問い直し、異なるものを結びつける力として捉え直している。

 17世紀頃からサロンを中心に育まれたおとぎ話は、象徴的なモチーフをまといながら、挿絵や装飾、舞台芸術、ファッションなど多様な視覚文化を伴って展開してきた。その存在が、いまなお様々な境界を越えていく想像力を私たちに与え続けていることを再確認できる展覧会だ。

編集部

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