千葉市美術館で「おとぎの国のモードをさがして/Fairy Tale MODE」が開幕した。会期は8月30日まで。担当は同館学芸員の山下彩華。
時代や地域を超えて語り継がれてきた「おとぎ話」は、妖精や魔法使い、森、変身といった象徴的なモチーフに彩られながら、挿絵や装飾、舞台芸術、ファッションなどの視覚文化を通して豊かなイメージをかたちづくってきた。
本展は、19〜20世紀のヨーロッパで花開いた挿絵本の世界を中心に、おとぎ話のイメージに息づく「モード」を探る試みだ。会場には、アーサー・ラッカム(1867〜1939)やウォルター・クレイン(1845〜1915)、カイ・ニールセン(1886〜1957)らによる『シンデレラ』『眠れる森の美女』『赤ずきん』などの挿絵本約90冊をはじめ、実際のドレスやバレエ衣裳、資料など約180点が一堂に会する。全6章の構成で、おとぎ話のイメージの変遷を辿っていく。
第1章「語りのとき」
第1章「語りのとき」は、シャルル・ペロー(1628〜1703)が1697年に刊行した散文集『ペローの物語ならびに教訓』(1724)の紹介からはじまる。現在も世界中で親しまれる本作の後刷には、「眠りの森の美女」「赤ずきん」「青ひげ」「長靴をはいた猫」など8篇が収録されている。17世紀フランスの宮廷サロンにおいて、おとぎ話は洗練された社交のなかで育まれ、ひとつの流行として定着していた。各物語の末尾にある「教訓」は、ペローが当時のサロンの流行を背景に、社交界の読者を意識して付け加えたものと考えられている。


サロンにおけるおとぎ話は、たんなる娯楽にとどまらず、社会的制約のもとで創作の自由を確保するための手段でもあった。そのため言葉で語るだけでなく、身振りや装いも含めて表現が展開された。さらにこれらの物語は、挿絵によって視覚的にも語られるようになる。モーリス・ブーテ=ド=モンヴェル(1851〜1913)による『ジャンヌ・ダルク』(1896)は、その展開を示す作品のひとつ。歴史的な物語が全44点の挿絵で描かれており、その繊細な人物描写は間近で見る者を魅了する。
第2章「妖精の国で」
第2章では、おとぎ話に度々登場する妖精や小人の表現に注目する。ヴィクトリア朝の挿絵画家リチャード・ドイル(1824〜83)がクリスマスのギフトブックとして制作した大判の豪華挿絵本『妖精の国で』(1870)は、多色刷木口木版によるものだ。森や水辺で戯れる妖精や小人たちの行列、舞踏、宴などが16枚の図版で展開され、これらのイメージは後世の妖精像の原型となった。また、アーサー・ラッカムによる『夏の夜の夢』(1908)は、シェイクスピア挿絵の新たな様式を確立した作品である。ここに登場する妖精や小人は、人間と自然のあいだに立つ特別な存在として、現実と幻想を行き来する。

































