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「杉本博司 絶滅写真」展(東京国立近代美術館)開幕レポート。杉本博司の原点とこれからを見る【2/5ページ】

第1章「時間・光・記憶」

 本展は3章で構成。ほぼ時系列に沿いながら13シリーズを紹介することで、杉本の思考と表現の変遷をたどっていく。

 また会場では作品解説の代わりに、杉本自身による和歌や狂歌が添えられている。学術的な解説ではなく、詩的な言葉によって作品世界へと誘う趣向は、本展の特徴のひとつだ。そこには写真を技術やメディアとしてだけではなく、より根源的な人間の営みとして捉えようとする杉本の姿勢がうかがえる。

作品に添えられた杉本の和歌・狂歌
「劇場」シリーズの展示風景 ©︎Hiroshi Sugimoto / Courtesy pf Gallery Koyanagi

 第1章「時間・光・記憶」では、1970年代から80年代にかけて制作され、杉本の評価を確立することになった「ジオラマ」「劇場」「海景」、そして「華厳滝」の4シリーズが紹介される。なかでも本展の見どころとなるのが「ジオラマ」シリーズだ。

第1章の展示風景より、《ガラパゴス》(1980) ©︎Hiroshi Sugimoto / Courtesy pf Gallery Koyanagi
第1章の展示風景より、《類人》(1994)と《ゴリラ》(1994) ©︎Hiroshi Sugimoto / Courtesy pf Gallery Koyanagi

 1975年に始まったこのシリーズは、ニューヨークのアメリカ自然史博物館に設置された動物や人類のジオラマを大判カメラで撮影したもの。巧妙につくり込まれた展示空間を撮影することで、剥製や模型であるはずの対象が、まるで生きているかのようなリアリティを獲得している。

「ジオラマ」シリーズ新作の《ポコット族》(2025) ©︎Hiroshi Sugimoto / Courtesy pf Gallery Koyanagi

 本展では、新作として《ホモ・エレクトス》(2025)や《ポコット族》(2025)などが初公開された。これまで博物館の許可が得られなかった作品が加わったことで、「ジオラマ」が伝える人類史のストーリーが初めて提示された。

 続く「海景」は、世界各地の海と空の境界を撮影した杉本の代表作であり、現在も継続されているシリーズ。杉本はかつて、このシリーズについて「人類が最初に見た風景」を探ろうとしたと語っている。画面には海と空、そして水平線しか存在しない。場所や時代を特定する情報は徹底して排除され、鑑賞者は太古から変わらない風景と向き合うことになる。

「海景」シリーズの展示風景 ©︎Hiroshi Sugimoto / Courtesy pf Gallery Koyanagi

 会場では7点の作品が円弧状の展示空間に配置されている。中央のベンチに腰掛けると、それぞれ異なる海でありながら、どこか同じ景色にも見える水平線が静かに立ち上がる。写真というメディアを通じて、時間そのものを体感させる展示となっていた。

編集部

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