代表作の数々を余すところなく展示
「タイムマシーン」。このタイトルほど、今回のエキシビションを明確に物語っている言葉はないのではないだろうか。原始から変わらないであろう風景、歴史上の人物、長い年月を経ていまなおそびえ立つ建築物など、杉本博司がそれらをとらえた作品の前に立つと、まさにタイムマシーンで別の時代や見知らぬ場所に誘われたような錯覚に陥る。そして本物と偽物の境界線はあやふやとなり、白昼夢を見ているようでもあり、同時に時空をひねったような、めまいのような不思議な感覚すら覚える。
杉本の半世紀を超える活動のなかでも代表作ともいえる連作の数々を一堂に並べた今回の展覧会は、1970年半ばにスタートして以来現在も続くシリーズ「ジオラマ」で幕をあける。