Amazon Prime Video
『ターナー、光に愛を求めて』
19世紀イギリスを代表するロマン主義の巨匠であり、「光の画家」と称されたジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの晩年を描いた映画が『ターナー、光に愛された画家』だ。
風景画を芸術の極みへと高めた天才でありながら、人づきあいが苦手で偏屈、欲望に忠実なターナーの複雑な人間性を、マイク・リー監督がリアルに描き出す。嵐の海を体感するために自らを船の用船に縛りつけさせたという有名なエピソードをはじめ、光と色を追い求め続けた彼の情熱の根源に迫る。主演のティモシー・スポールが第67回カンヌ国際映画祭で男優賞を受賞した、圧倒的なリアリティと美しさに満ちた伝記ドラマだ。
『エッシャー 視覚の魔術師』
水が永遠に流れ続ける滝、どこまでも無限に続く階段など、一度見たら忘れられない「だまし絵(トリックアート)」で世界中を魅了し続けるオランダの版画家マウリッツ・コルネリス・エッシャー。彼の知られざる複雑な半生と創造の秘密に迫るドキュメンタリーが『エッシャー 視覚の魔術師』だ。
日記や手紙、講義録といった本人の遺した言葉をナレーションに仕立て、遺族や数学者らの証言、さらにCGアニメーションなどを交えて彼の思考プロセスを立体的に紐解いていく。芸術家でありながら数学や結晶学に情熱を注ぎ、幾何学的な美を追求し続けた異色のキャリア。一見すると理知的でクールな「無限の世界」の裏にあった、彼自身の飽くなき探求心と葛藤が浮かび上がる1本となっている。
『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』
フィンランド・ヘルシンキで美術店を営む老人・オラヴィは、顧客リストは手書きで管理、領収書はタイプライターで発行するなど、いまだに古い商いを続けている老美術商。しかし最近はオンラインギャラリーの勢いにおされ、客足も遠のき資金繰りも悪化、店を畳む事も考え始めていた。
ある日、美術商仲間に誘われ訪れたオークションハウスの下見会で、オラヴィは1枚の肖像画に目を奪われる。「男の肖像」と名づけられたその絵は署名もなく出所も不明で、仲間からも購入するにはリスクが高い絵画だと止められてしまう。だがこれまでの経験で価値ある作品と確信したオラヴィは、絵の背面に残された少ない情報を頼りに、2日後のオークションに向け調査を開始する。
アートの売買における現代事情を物語に組み込みつつ、スリリングなエンターテインメントとして仕立てられた『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』。美術に魅入られた人々の異常なまでの情熱の描写も見どころだ。
『レンブラントは誰の手に』
2018年、44年ぶりにレンブラントが描いた肖像画が発見されたニュースが、世界に衝撃を与えた。競売で落札した絵が実はレンブラントの作品だったと発表したのは、野心に燃える若き画商のヤン・シックス(11世)。
それは果たして本物のレンブラント作品なのか、はたまた無名の画家の作品か。一枚の肖像画をめぐる議論は、やがて真犯人を探すミステリーのような展開となる。本件をとらえたドキュメンタリーが『レンブラントは誰の手に』だ。
『おーい、応為』
江戸時代を代表する絵師・葛飾北斎の娘、葛飾応為を主役に据えた作品が『おーい、応為』だ。お栄はある絵師のもとに嫁ぐが、かっこうばかりの夫の絵を見下したことで離縁となり、父のもとへと出戻る。父娘にして師弟。描きかけの絵が散乱したボロボロの長屋で始まった二人暮らしだが、やがて父親譲りの才能を発揮していくお栄は、いつも「おーい!」と呼ばれることから北斎から「葛飾応為(おうい)」という名を授かる。
長澤まさみ演じる応為が、一人の浮世絵師として時代を駆け抜けていく様を史実織り交ぜながらドラマチックに描いた作品。お栄のよき理解者でもある善次郎との友情や、兄弟子の初五郎への淡い恋心、そして愛犬のさくらとの日常など、江戸文化への憧れがあふれた作品だ。
『皮膚を売った男』
『皮膚を売った男』 は、シリア当局から過激思想を疑われ隣国レバノンへ亡命したサムの物語。サムは愛する女性・アビールの住むベルギーへの渡航を望むものの、手段がなかった。そんななか、サムが出会ったのは、著名な芸術家・ジェフリー。ジェフリーはサムに「自身の背中にタトゥーを施して、ジェフリーの『アート』となる」ということを提案し、サムはこれを承諾する。
ジェフリーの作品として美術館に展示されるサムだが、やがて自由と大金以上に、失ったものが大きいことを悟る。現代美術の先鋭のなかにある攻撃性も想起させる本作『皮膚を売った男』はオスカーにノミネートされたのも納得の緊張感ある物語が魅力だ。
『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』
若き日のル・コルビュジエの制作をめぐる嫉妬や葛藤を描く『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』。近代建築の巨匠ル・コルビュジエは、1920年代の若き日に、家具デザイナーとして活躍していたアイリーン・グレイに出会う。彼女は恋人である建築家兼評論家のジャン・バドヴィッチとともに、南フランスのカップ・マルタンで海辺のヴィラ「E.1027」を建築家デビューの作品として設計した。
完成したその家はル・コルビュジエが提唱してきた「近代建築の5原則」を具現化し、モダニズムの記念碑といえる完成度の高い傑作となる。当初はアイリーンに惹かれ絶賛していたル・コルビュジエだが、称賛の想いは徐々に嫉妬へと変化していく。
『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』
オートクチュール(高級注文服)の世界から飛び出し、プレタポルテ(高級既製服)の市場を開拓したファッショニスタであり、稀代のビジネスマンでもあったピエール・カルダン。90代を迎えても第一線で挑戦を続けた彼の天才的なひらめきと、破天荒な知られざる半生に迫るドキュメンタリーが『ライフ・イズ・カラフル! 未来をデザインする男 ピエール・カルダン』だ。
建築的なアプローチから生み出された「宇宙的(コスモコール)」な幾何学デザインや、衣服にとどまらず生活空間すべてをデザイン対象としたビジネス帝国構築の裏側が描かれる。さらに、ナオミ・キャンベルやジャン=ポール・ゴルチエといった著名人の証言とともに、彼の自由奔放な美学とファッション業界に革新をもたらし続けたパイオニア精神を鮮ややかに解き明かす一作だ。
『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』
1988年にパリでファッションブランド「マルタン・マルジェラ」を興し、服の概念を解体し続けたデザイナー、マルタン・マルジェラ。2009年に発表された10年春夏コレクションの際にはすでに引退していたとされており、キャリアを通して公の場に姿を現さず取材や撮影を断り続け、そのすべてが謎に包まれていた。
そのマルジェラ本人が初めて制作に協力したドキュメンタリー映画が『マルジェラが語る“マルタン・マルジェラ”』(原題:『Martin Margiela: In His Own Words』)だ。マルジェラは「顔は写さない」という条件のもと、同作で謎に包まれてきた自身について語る。初めて公表するドローイングや膨大なメモ、7歳でつくったという人形の服などのプライベートな記録のほか、ドレスメーカーだった祖母からの影響、ジャン=ポール・ゴルチエのアシスタント時代、足袋ブーツの誕生の、世界的ハイブランド、エルメスのデザイナーへの抜擢、そして突然の引退などの全容を、カメラの前でマルジェラ自身が明かしている。
『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』
ゴッホと志を同じくしながらも、やがて袂を分かつことになったポール・ゴーギャンに焦点を当てた作品がエドゥアルド・デルック監督『ゴーギャン タヒチ、楽園への旅』(2017)だ。
画家として名をなしながらも、作品が売れず行き場を失っていたゴーギャンは、絵画制作の場をフランス領タヒチに求めてひとり旅立つ。ゴーギャンが島の奥地の森で少女・テフラと運命の出会いを果たす。代表作を次々に生み出していくゴーギャンだが、やがてこの地でもゴーギャンを苛む苦悩の日々を描く。
『ゴッホ:天才の絵筆』
世界でもっとも有名な画家と言っても過言ではない、ポスト印象派の画家、フィンセント・ファン・ゴッホ。『ゴッホ:天才の絵筆』は、そんな彼が絵画を制作した9年間の足跡をたどるドキュメンタリー。
IMAXでの上映を前提に制作されており、ゴッホ作品の強烈な色彩や筆触を臨場感あふれる映像でたどることができる本作。すでに多くの人に知られているゴッホの生涯だが、あらためてそのリアリティを感じることができる一本だ。
NETFLIX
『アンディ・ウォーホル ダイアリーズ』
1968年、アンディ・ウォーホルは、ヴァレリー・ソラナスに銃撃され、瀕死の重傷を負った。その後、ウォーホルは日々の出来事や心情を日記として記録し始める。本作は、その日記をひも解きながら、関係者のインタビューとともにウォーホルの素顔に迫るドキュメンタリー・シリーズが『アンディ・ウォーホル ダイアリーズ』だ。
20世紀美術における最大の巨匠と言ってもいいウォーホル。いっぽうで日記には日々の心情や悩みの吐露もつづられている。人間・・ウォーホルに迫る興味深いドキュメンタリーだ。
『ズカルスキーの苦悩』
第二次世界大戦の戦火で母国ポーランドにおける名声と全作品を失い、戦後はアメリカで隠遁生活を送っていた「忘れ去られた天才彫刻家」スタニスラフ・ズカルスキーの数奇な半生を描いたドキュメンタリーが『ズカルスキーの苦悩』だ。
晩年に彼を見出した若き芸術家たちとの交流や、独創的すぎる人類起源説、そしてレオナルド・ディカプリオの父を巻き込んだ数多の逸話を通して描く本作は、圧倒的な造形美の裏に潜む戦争の悲劇と個人の狂気、そして芸術が持つ不滅の魂を鮮烈に映し出す。
『ヘルター・スケルター』
岡崎京子による90年代のマンガ史に残る傑作『ヘルター・スケルター』。本作の映画化に際して監督を務めたのが、写真家/アーティストとして活躍する蜷川実花だ。全身を美容整形することによって手に入れた美貌でトップモデルとなった主人公・りりこ。しかし、その副作用と人間関係のストレスは、徐々にりりこの心身を蝕んでいく。
沢尻エリカを主演に迎え、この残酷で美しい世界を、強烈な色彩表現とともに撮り下ろした蜷川。退廃に向かうからこそ惹かれてしまうその美しさの構造は、現代においても強烈なメッセージを発している。
『ガードナー美術館盗難事件 -消えた5億ドルの至宝』
美術史上最大の盗難事件と言われる「ガードナー美術館盗難事件」。イザベラ・スチュワートによって集められたヨーロッパ絵画の傑作の数々を収蔵するボストンのガードナー美術館で発生した盗難事件だ。

警官姿の男たちによってレンブラントやフェルメールの貴重な絵画を含む13点が持ち去られ、被害総額は5億ドルともされるこの事件は現在も未解決。『ガードナー美術館盗難事件 -消えた5億ドルの至宝』は、この大胆不敵な強盗事件の真相を追うドキュメンタリー・シリーズだ。人類の財産ともいえる絵画はどこへ消えたのか。本作を見ながら推理してみてはいかがだろう。
『空のハシゴ』
火薬を用いた作品を多く手がけ、「爆発のアーティスト」とも称される中国人アーティスト・蔡國強のドキュメンタリー『空のハシゴ』。本作では、祖母の100歳の誕生日を記念して発表した《スカイ・ラダー》(2016)の制作過程と、蔡の人生が交差して映し出される。
著名な書家である父との関係、文化大革命の影響を受けた幼少期、作品を開花させるきっかけとなった日本での生活、現在の中国への思い、そして、妻と子供と暮らす現在のニューヨークでの日々。
ジャーナリストらによる冷静な考察も織り込まれた79分の映像は、ひとりの人物がどのようにアーティストとして成功したか、その輪郭をはっきりと描き出している。クライマックスでの《スカイ・ラダー》の美しい成功シーンも必見だ。






















