「六本木アートナイト2024」はここに注目【3/3ページ】

 アートナイトの会場のひとつでもある国立新美術館に向かうと、不思議な看板を掲げた看板持ちに出会うだろう。「いる派」を名乗る小寺創太は、六本木駅から国立新美術館の路上に配置された6名の看板持ちと館内の芝生、そして《フィラー》の看板で構成された作品を展開している。

 フィラーとは、Adobeなどのクリエイティブソフトでレイアウト検討の際にダミーで出てくる意味を持たないテキストを指す。このフィラーテキストのひとつを機械翻訳にかけて日本語にしたものを、看板持ちは看板として掲げている。無意味なテキストを掲げるための労働の意味とは何か? 行為を通じて行為の意味を問いかけている。

展示風景より、小寺創太《フィラー》(2024)。看板持ちは時給1480円、10時間の看板持ちを2人で5時間ずつ交代しているらしい
展示風景より、小寺創太《フィラー》(2024)。「いる派」を名乗る小寺自身は会場にはいないようだ

 東京ミッドタウン プラザB1階には、「TOKYO MIDTOWN AWARD 2024」からアートコンペ、デザインコンペのファイナリストによる作品が紹介されている。こちらは10月9日までで、10月10日からは受賞・入選作品の展示が行われる予定だ。

展示風景より、さとうくみ子《一周まわる》
展示風景より、REMA《Untitled (Cocoon mechanism)》

 また、ミッドタウン プラザ1階には「TOKYO MIDTOWN AWARD 2021」のアートコンペグランプリを受賞した丹羽優太の《疫病合戦図絵巻》がテナントの仮囲いとして展示。コロナと戦う民衆の様子をユニークな姿で描き出している。

展示風景より、丹羽優太《疫病合戦図絵巻》

 六本木アートナイトについてひとつ課題を挙げるとするならば、会場のアクセシビリティだ。プレスツアーに同席されていた車椅子利用者の方が、階段のみの展示スペースに入ることができない光景を何度か目の当たりにした。会場の選定もしくは、仮設のスロープ・サポートスタッフを設けるなど、誰もがアクセス可能となるよう、当事者の意見を取り入れながら改善していく必要があるだろう。

編集部

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