2023.9.23

なぜ別府でアートフェアなのか? 「Art Fair Beppu 2023」が目指すもの

大分・別府市の混浴温泉世界実行委員会が、別府を舞台とするアートフェア「Art Fair Beppu 2023」が初開催を迎えた。アーティストが主体となるこのフェアは、なぜ開催に至ったのか?

文・撮影=橋爪勇介(ウェブ版「美術手帖」編集長)

フェア会場より、西野達のブース
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 国内で相次いでアートフェアが生まれるなか、大分県別府市にも新たなアートフェアが誕生した。

 「Art Fair Beppu 2023」は別府で様々なアートプロジェクトを手がける混浴温泉世界実行委員会が主催となるもの。会場は「別府国際観光港 旧フェリーさんふらわあ乗り場」をメインに、別府市中心市街地に約 90 年前に建てられた別荘建築を活用した温泉旅館「山田別荘」、戦後すぐに建てられた3棟 22 室からなる元下宿アパート「清島アパート」の3会場。通常のアートフェアのフォーマットであるギャラリーブースではなく、アーティストが主体となって作品を展示販売するという形式をとるのが大きな特徴だ。

フェア会場より、中﨑透のブース

 別府市はこれまで、2009年から15年までトリエンナーレ形式の芸術祭「混浴温泉世界」を、16年から21年までは個展形式の芸術祭「in Beppu」を開催するなど、現代美術に注力してきた経緯がある。また昨年度からは、半年ごとに1組のアーティストを招聘して4年間で8つの作品を制作するという新たなアートプロジェクト「Alternative-State」もスタートさせた。

 こうしたなか、市では「芸術文化実施計画 文化観光の推進とアーティスト・クリエイター移住・定住計画」を推進しており、アート関係者の移住を促進する姿勢を打ち出している。

 NPO法人Beppu Project代表理事で本フェアのディレクターを務める中村恭子は、こうした背景を踏まえ、「温泉だけでなくアーティストの存在が別府の魅力で強み。本フェアはそれを加速させるための試みだ」と話す。

 多くのアーティストをフェアに一気に招聘することで、別府の魅力をアピールするとともに、アーティストが活動するためには欠かすことができない売買の場を形成する狙いがあるという。同フェアの本開催は2025年が予定されている。今回はその土台を固める段階だ。

フェア会場より
フェア会場より
フェア会場より