平⾯美術の領域で国際的にも通⽤するような将来性のある若い作家の⽀援を⽬的に1994年より毎年開催されている「VOCA展」。その領域から40歳以下の作家を、全国のアートの現場に精通した美術館学芸員、研究者、美術評論家らが推薦するもので、過去の出展者には奈良美智、村上隆など現在日本のアートシーンを牽引する現代美術家たちが名を連ねてきた。また近年は大東忍(2024)、永沢碧衣(2023)、川内理香子(2022)、尾花賢一(2021)がグランプリである「VOCA賞」に選ばれている。
今年で32回目となる「VOCA展2025」のVOCA賞を受賞したのは、熊本在住の宮本華子。宮本は 「家」や「家族」「他者」とのコミュニケーションをテーマに作品を制作しており、受賞作品《在る家の日常》は、家をかたどるパネルの中に映像を組み込み、様々な日常や家族の様子を映し出し、複合的な表現方法が評価された。なお同作家の推薦者は関岡絵梨花(キュレーター)。
また、「VOCA奨励賞」には諫山元貴の《Objects#21》、小林万里子の《The Five Domains》 が選出。「VOCA佳作賞」は、鮫島ゆいの《Ritual Room (Pretend to be happy) 》と𠮷田芙希子の《Go into the medaillon》となった。
今回選考委員を務めたのは、植松由佳(委員長 / 国立国際美術館学芸課長)、丹羽晴美(東京都現代美術館事業企画課長)、拝戸雅彦(キュレーター) 、服部浩之(キュレーター/東京藝術大学大学院准教授、国際芸術センター青森館長)。なお、大原美術館が独自の選考で決定する大原美術館賞は髙木優希の《Room》となった。
これらの作品を一堂に展示する「VOCA展2025」は、2025年3月15日〜30日に東京・上野の上野の森美術館で開催される。
なお 「VOCA展」をめぐっては、同展実行委員会と上野の森美術館が今年、「『VOCA展』に関するハラスメント防止のためのガイドライン」を制定。キュレーターが推薦委員となり、1人(組)の作家を推薦するという独自の構造が孕みうる様々なハラスメントを防止することも「推薦委員の行動規範」として定められた。