「企画書」は最良のコミュニケーションツール。BUGが取り組むアートワーカーのためのプログラム「CRAWL」とは何か

アートワーカーのキャリア支援の一環として、アートセンターBUGが2024年より取り組んでいるプログラム「CRAWL(クロール)」。企画書のブラッシュアップから企画の実践までを視野に入れた本プログラムの狙いとは。2025年度のプログラムに参加し、同スペースでの展覧会「キベラ“スラム”から見つめる世界 語られてきた私から、語る私へ。」の実施へと結びつけた坂田ミギーと、BUGのキュレーター・檜山真有に話を聞いた。

聞き手・構成=山内宏泰 ポートレイト撮影=手塚なつめ

左から、坂田ミギー(2025年度「CRAWL」採択者)、檜山真有(BUGキュレーター)

「企画書」の作成から実現まで。BUGのアートワーカー向けプログラム「CRAWL」とは何か

──まず、「CRAWL」とはどのようなプログラムでしょうか。

檜山真有(以下、檜山) アートワーカーのなかでも、とくにキュレーターやプロデューサー、演出家といった「企画者」と呼ぶべき方々に向けたインキュベーションプログラムです。

 文化芸術分野の企画者には、これまで十分なサポート体制や育成プログラム、領域横断的なネットワークを構築する場所がありませんでした。参画の間口を広げるために、どのように支援すべきかと考えていた際に注目したのが、「企画書」です。企画書はジャンル問わず作成しますし、企画のコンセプトのみならず、具体的なスケジュールや予算など、ほかの協働者の仕事も生み出すもっとも大切な指針となるもの。これをブラッシュアップすれば、よりよい企画が生まれてくるはずです。そのためのプログラムをつくろうと思いました。

インタビューの様子

 私自身も仕事で企画書を書くことが多く、おおさか創造千島財団の選考委員としてほかの人の助成金の申請書を読む機会もあり、大変勉強になっています。そうした経験から、CRAWLでも「ほかの人の企画をたくさん読める」という設計にしています。

──文化芸術領域ならではの企画書の特性や重要性はあるのでしょうか。

檜山 まだ実現していないものなので、アドバイスをすること自体が非常に難しいという側面があります。さらに、ビジネスとは違いゴールや達成目標が画一化されていないので、アイデアに対してジャッジや指摘をしようにも、評価するための客観的な基準が設けづらいのです。また書類に慣れていない苦手意識から機会を逸している人も多い印象です。企画書の書き方さえ身につければ、自分がどこに向かっているのか、何を評価されたいのかを冷静に客観視できるのではないかと考えています。

──坂田ミギーさんは2025年度のCRAWLに参加しました。応募のきっかけはなんだったのでしょうか。

坂田ミギー(以下、坂田) SNSで告知を見かけて、挑戦してみたいと思ったのが最初です。アート分野に足を踏み入れたいけれど入り口がわからず困っていたところだったので、これはまさに私のためのプログラムだと感じました。

 もともと私は、ケニアのナイロビにある「キベラ」と呼ばれるスラムに通い、現地の人たちと活動するプロジェクトを行っていました。ビジネスコンテストやスタートアップ助成金の獲得など、ビジネス文脈ではある程度の評価をいただいていましたが、これをアート分野でも展開できないかと考えるようになったんです。

 ただ、アート界に知り合いはいないし、知識もなければ流儀も知らない。そんなタイミングでCRAWLを見つけました。参加してアートの企画書が書けるようになれば、アートの世界の人たちとも関わりを持てるのではないかと期待しました。

インタビューの様子

──坂田さんのような応募者は想定通りでしたか。

檜山 当初は若手キュレーターをコアターゲットに定めていましたが、そもそも若手キュレーターは潜在的な志望者も含めて母数は少なく、参加する人の属性やジャンルもより広がりを持ったプログラムにしていきたいという思いはありました。そこへ、まったく異なる業界で実績を持つ坂田さんが応募してきてくださったのは、うれしい想定外でした。他分野の方がアート業界に足を踏み入れるきっかけになれるのなら、それは何よりの喜びです。

坂田 私としては、敷居の高いアート業界への入り口を示していただけただけで、ありがたかったです。加えて、「他者の企画書を読む機会がある」というのも大きな魅力でした。私はかつて広告業界で働いていて、企画書には馴染みがありましたが、業界が変われば作法も変わると思います。アート業界におけるその作法を垣間見ることができるだけでも、参加する価値があると思いました。

編集部