有識者が選ぶ2023年の展覧会ベスト3:檜山真有(キュレーター)

数多く開催された2023年の展覧会のなかから、有識者にそれぞれもっとも印象に残った、あるいは重要だと思う展覧会を3つ選んでもらった。今回はキュレーター・檜山真有のテキストをお届けする。

文=檜山真有

「ねこのほそ道」展示風景より、正面が五月女哲平《black, white and others》(2023)
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「ねこのほそ道」(豊田市美術館/2月25日〜5月21日)

展示風景より、落合多武《大きいテーブル(丘)》(2023)

 キュレーターはどのような単語をテーマにしても展覧会をつくることはできるが、それを大喜利のように扱わず、かつ、対象の単語の新たな可能性をひらくこともせずに、展覧会の態度そのものを対象の単語にしてしまうバランス感覚の妙。日常に馴染んだ生き物をテーマに現代美術の展覧会をつくろうとしたキュレーターの着眼点と想像力、複数の作家に新作を制作してもらい、それを管理し、展覧会のなかでまとめ上げた手腕も評価されるべきだろう。それぞれの作家がリスペクトしながらも牽制し合う会場に張り詰めた緊張感と、しかし、風通しを感じるすこやかさが満ちていたことは、良いキュレーションがなされた何よりの証左である。

エディション・ノルト│ファクトリーdddd:被包摂、絡合、派生物  /[会場構成]秋山ブク│シチュエーションズ 7 番:京都 ddd ギャラリーの備品による(京都 ddd ギャラリー/3月21日~5月21日)