「企画書」は最良のコミュニケーションツール。BUGが取り組むアートワーカーのためのプログラム「CRAWL」とは何か【2/3ページ】

──実際に参加してみた感触はいかがでしたか。

坂田 最初のメニューは、参加者同士の「ピアレビュー」でした。4人でグループをつくり、お互いの企画書にコメントし合うのですが、私が最初に出したのは「こんな感じかな」というフワッとした企画書でした。それを読んだグループ内のひとりが、「この企画って本当にそうなりますか?」と指摘してくださったんです。このまま実施しても、書いてある通りの結果は得られないのではないか、というのです。見直してみると、たしかにアウトプットの最終形がぼんやりとしていて、企画として成立していなかったことに気づき、そこから丸ごと書き直しました。逆に、私もほかの人の企画書を読んでいると、「ここがわからない」「飛躍しているのでは」と感じることがありました。予備知識がないフラットな状態で読むからこそ、企画書の「穴」がよく見えてくるものです。

檜山 展覧会や公演、アートプロジェクトに関する企画書は、実物がまだない状態で書かなければいけないことが多いので、内容が抽象的になりがちです。それをいかに具体的にして、説得力のあるものにしていくかがポイントとなります。

坂田 その点に気づけたのはよかったです。また、並行して行われた、メンターの方との1on1「オフィスアワー」も貴重な経験でした。アート業界で活躍している人と企画の壁打ちをできるのが、私にとってはとにかくありがたかったです。ここでは企画書の書き方のみならず、キベラの人々と来場者のあいだにインタラクションを設けたほうが良いのではないか、といった体験をより豊かに設計するための視点を教わりました。

──参加者同士の交流やつながりはありますか。

檜山 プログラムの定員は40名です。「ネットワークミーティング」というオンライン交流の場を数回用意しており、参加者同士が自由に意見交換などをすることができます。

──この40人のなかから、BUGで実際にプロジェクトを実施できる人はどのようにして選ばれるのでしょう。

檜山 ブラッシュアップした企画書を提出してもらい、参加者とメンター、BUGがそれぞれが良いと思う企画に投票します。そこで上位2名に選ばれた方が、企画を実施する権利を得る仕組みです。

坂田 40本の企画書に目を通すのは楽しく、得難い経験ですが、ジャンルもやりたいこともバラバラなので選ぶのは難しい。結局、自分が「これ見てみたいな」と素直に思えるものに投票しました。自分の企画が選出されるとは予想していませんでしたが、企画書を練り上げるなかで完成イメージをわかりやすく伝えられるようになった感触はあったので、そこが評価されたのかもしれません。

檜山 坂田さんの企画は、社会的な意義やインパクトに加え、東京駅直結のBUGという「都心のオフィスビル街」で「キベラスラム」の展示を実施するという対比の妙も評価されていました。

──これからCRAWLへ応募を考えている人へのアドバイスはありますか。

檜山 まずは気負わず、気軽な気持ちで参加していただきたいです。坂田さんのように企画がBUGでの実施へつながるのもCRAWLのひとつのゴールですが、それだけに限らず、参加者がその後、様々な場所で自らの企画を実現していく状態が理想だと思っています。

坂田 私はすでにこのプログラムを周りに勧めまくっています。企画書は、優れたコミュニケーションツールのひとつです。自身の活動内容を口頭で説明するのは難しいですが、企画書があれば、「なるほど、この人はこういう思いで活動しているんだ」と理解がスムーズに進みます。企画書を通して人と人がつながっていくCRAWLは、大変面白いプログラムだと改めて思います。

対談の様子

編集部