どのように著作物の種類を判断すべきか?
まずは「絵画」「彫刻」「建築」といった文言から著作物の種類を判断できるのであれば、それで足りる。しかし、判断に迷うような微妙なケースでは、著作権法の効果から逆算して著作物の種類を判断するほかないだろう。多様な表現が展開される現代美術の世界では従来の枠組みには当てはまらないような判断に迷う作品も想定される。
「美術の著作物」と「建築の著作物」の区別について、中山信弘教授は、「居住等の実用目的から容易に改変を認める必要があるものや、展示や利用という観点から建築の著作物と認めることが妥当であるものが建築物であり、実用目的から離れているものが美術であると言えよう。つまり建築の著作物に関する著作権法上の効果から、逆に建築の著作物の範囲を判断すべきである」と述べている(*8)。
「建築の著作物」に分類されることの効果として見逃せないのが、同一性保持権の制限だ。著作権法は、「建築物の増築、改築、修繕又は模様替えによる改変」については同一性保持権を及ぼさないと定めている(*9)。建築物の所有者の経済的利用権と著作者の人格的利益を調整するための規定である。
したがって、《太陽の塔》が「建築の著作物」に当たるとすれば、所有者は、著作者の許諾がなくても増築・改築・修繕・模様替えを行うことができる。他方、「美術の著作物」とすればこの規定は適用されず、原則に戻って改築等にも著作者の同一性保持権が及ぶことになる。

それでは冒頭の問いに戻り、《太陽の塔》はどうだろうか。1つの作品でも複数の種類の著作物に当たることはある。そのため、「美術の著作物」か「建築の著作物」かの二者択一の判断をする必要はない。まず、《太陽の塔》は、外観自体からも大きな彫刻と捉えるほうが自然であるし、また、居住等の実用目的から容易に改変を認める必要性はなく、実用目的から離れているものとして「美術の著作物」に当たると考える。
次に、《太陽の塔》は内部に空間をもつ。内部空間も、基本的には居住や実用のために改変されることが想定されておらず、実用目的からは離れた鑑賞のための空間である。内部に人が出入りできる空間があるからといって直ちに「建築の著作物」に分類できるわけではない。そのため、《太陽の塔》の内部空間も「美術の著作物」に当たると考える。
もっとも、内部空間には階段、通路部分など人の移動のための構造も含まれており、この部分は実用目的から改変を認める必要性はあるだろう。そのため、これらの部分は「建築の著作物」に当たるとの解釈が妥当ではないだろうか(*10)。
このような筆者の解釈では、冒頭の問い、つまり、《太陽の塔》のミニチュアを販売できるかの答えは、ミニチュアとしての複製は「美術の著作物」である外観の複製になることから、「専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合」(4号)や「彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合」(1号)に当たり、著作権者の許諾が必要ということになる。
こうした複合的な性格判断は、《太陽の塔》のような半世紀前の作品だけでなく、映像、音、観客参加を組み込むといった今日の多様なパブリック・アートにおいてもますます切実な問いになっていくはずだ。
*8──中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)107頁。
*9──著作権法20条2項2号。
*10──中山信弘『著作権法〔第4版〕』(有斐閣、2023)106頁注32は、《太陽の塔》について、公園に聳え立ち、人が出入りする塔であり、改築等につき、自由度が高い方が好ましいであろう、としているため、少なくとも《太陽の塔》は「建築の著作物」にも該当する立場と思われる。



















