クリエイターの心の拠り所として残したいコミュニティのかたち
──共働で何かをつくるコレクティブではなく、それぞれ異なるものをつくる人が集まったコミュニティとして成立している青山二階では、メンバーとのつながりやこの空間で生まれる化学反応を大事にしているように感じました。そんな皆さんが昨年4月に実施した展覧会「青山二階展 高級街のノラ犬たち」は、メンバー全員での初の活動だとうかがいました。この展覧会を通じてお互いに影響を与えあった部分もあるのでしょうか?
Kosuke Kojima 当時メンバーのひとりだったkengoshimizは美大卒だったのですが、彼からはたくさんアドバイスをもらいました。僕は美大に通ったことがないので、自分にはなかった新しい考え方から学ぶことは多くありましたね。ほかのメンバーからも様々な意見をもらって、実際自分の作品も大きく変わりました。
Shinya Ogiwara あのときみんなここに来て徹夜で制作していたので、相互に影響を与えあって変化していったのだと思います。作品の内容以前に、お互いの人間性を理解し合っている部分もあるので、アドバイスも意図を汲みながら出てくるものが多かったのかな。
ただ、「それぞれの制作に影響を与えあっていた」という点は、僕にとっては正直ポジティブなことだとも言い切れない気がしています。僕がここで生活をしているというのもあるかもしれませんが、もっとひとりで考える時間や向き合う時間もほしいと感じることがありました。周りの声も大事だけど、それを聞きすぎると逆にその人に承認されるための創作になってしまう気もして、自分の芯をぶらさずに持ち続けることが難しいときもありました。みんなでひとつのことをやるにしても、距離感や関わり方については改めて考えたいと思います。


──コミュニティ全体で活動することに対してもそれぞれ考え方が異なるようですね。現在青山二階としてポッドキャストはじめたりと、新しい動きがあるようにも見受けられます。今後青山二階はどのようなコミュニティになっていくのでしょうか?
Shinya Ogiwara 2025年の1月頃にInstagramアカウントつくり、7月にSpotify上で「青山二階Radio」というポッドキャストをはじめました。ただポッドキャストは、あくまでここで展開される面白い会話をアーカイブとして残しながら、興味を持ってくれる人に届けばいいなと思ってはじめたものです。
HIRO 俺もそのイメージです。青山二階を広く知ってもらうための告知手段ではないというか。青山二階の認知度を上げて仕事を増やしたい、というようなことは考えていないですね。
Kosuke Kojima 僕はむしろ真逆の考えです。青山二階には面白い人がたくさんいて、それぞれがつくっているものにも価値があると思う。実際、東京が嫌になって地元に帰ろうと思っていたけれど、それでもたくさんの刺激をもらえるこの場所があったから、僕は東京に居続けることを選びました。そんな誰かの行動を変えるような面白いものがあるこの場所を、もっと世の中に知ってもらいたいという気持ちです。それが個々の活動につながっていけばより良いなと考えています。
Shinya Ogiwara 今回青山二階に対してみんなの意見をじっくり聞くのは初めてだったので、改めてこの場所の意義について思い出させてもらいました。ただ事実、オーナーの立場としてはそれに勝ってしまうくらい、運営自体が大変であるという課題もあります。持続可能性を探るためにも、生活空間との切り離しや運営体制の変化は必要になってきそう。この場所をなくしたくないという気持ちは僕も同じです。
HIRO 青山二階にいる人はみんな自分の専門領域を持っていて、それぞれのやりたいことに向き合い続けています。各々でなりたい像を持っているからこそ、あえてコレクティブというかたちは取っていない。でもやはりこのカルチャーやコミュニティはとても大事で、こういう場所を求めている人は必ずいると思っています。
Kosuke Kojima いまいるメンバーや場所が固定された「青山二階」が世の中に知られていくというよりは、東京のなかで生まれたひとつのカルチャー、コミュニティのかたちとして、「青山二階」という名前が続いていけばいいなと。それこそ、30年後に自分たちの知らないメンバーが「青山二階」という名前で活動を続けていたら面白い。そうやってクリエイティブ領域に関わりたい人たちの拠り所のひとつとして、このコミュニティが続いていけば嬉しいですね。
表参道という華やかな街の路地裏に、ひっそりと存在するクリエイターたちのコミュニティ「青山二階」。異なる分野で活動し、個々に目指す先があるからこそ、コレクティブのように共通の目的を持った集団ではなく、ゆるいつながりのうえで成り立つコミュニティというかたちをとる点が特徴的です。彼らの言葉からは、異分野で活動するもの同士だからこそ生まれる刺激や化学反応を大切にし、また悩みや葛藤を肩書き抜きで共有し語り合える場の価値を、強く感じていることが伝わってきました。「青山二階」という場所は、所属するクリエイターたちの今後の活動をどのように変化させていくのでしょうか。何十年後かにも、どのようなかたちであれ「青山二階」というコミュニティ、カルチャーが、そのときを生きるクリエイターたちの心の拠り所として存在し続けていることを願うばかりです。




















