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なぜ、社会に「違和感」を問いかけることは重要なのか? 雑誌『IWAKAN』の編集チームに聞く

現代美術の可能性を拡張するアーティストやスペース、プロジェクトを取り上げるシリーズ「美術の新な目つきを探して」。第9回は、世のなかの当たり前に「違和感」を問いかけることをコンセプトに創刊され、「違和感」を抱く人たちに寄り添う雑誌『IWAKAN』の編集チームにインタビューを行った。

聞き手・文=王崇橋(ウェブ版「美術手帖」編集部)

『IWAKAN Volume 03|特集 政自』より、違和感瞬間「桜を見る会」。最前列左からエド・オリバー、中里虎鉄、ユリ・アボ、ジェレミー・ベンケムン、響ひびき (C) IWAKAN All Rights Reserved

  世のなかの当たり前に「違和感」を問いかけることをコンセプトに、2020年10月に創刊された雑誌『IWAKAN』(Creative Studio REING)。旧体制的な男女の枠組を問いかける創刊号「女男」をはじめ、これまでジェンダーやバイナリーにとらわれない様々な愛のあり方を提示する第2号「愛情」、ジェンダーと政治と個人の関係性について問い直す第3号「政自」を刊行してきた。

 ジェンダー問題に焦点を当てたクリエイティブスタジオ「REING」によってプロデュースされ、様々な「常識」に違和感を抱く人たちに寄り添うということから発想された同誌。創刊から1年以上の活動においては、ジェンダー問題に根ざしながら、ジェンダーを超えてアート、カルチャー、政治など今日の社会のあらゆる領域で変化を起こそうとしている。過去1年間の活動を振り返りながら、社会に「違和感」を問いかけ続ける意義や今後のプロジェクトについて同誌創刊メンバーの4人(エド・オリバー/REING、中里虎鉄、ジェレミー・ベンケムン、ユリ・アボ/REING)と、今年編集チームに加わった蔭山ラナに話を聞いた。

『IWAKAN Volume 01|特集 女男』表紙 © IWAKAN All Rights Reserved

──まず、皆さんがどのようなきっかけで集まったのかを聞かせてください。

エド・オリバー 私はクリエイティブスタジオ「REING」に所属しているので、2020年4月に新しいプロジェクトを考えたときに偶然、虎鉄がインスタで「日本最後のゲイ雑誌『サムソン』廃刊。誰か一緒に雑誌をつくりませんか」という内容のストーリーを見て、それをREINGでプロデュースすることを決めました。メンバー探しのとき、去年REINGのクィア映画イベント「Purple Screen(パープル・スクリーン)」を一緒に企画したジェレミーに声をかけて、そして創刊メンバーの4人が集まりました。その後アボのつながりで響ひびきも参加することとなり、さらにラナが今年5月にREINGのインターンとして入り、3号目から編集部に加わりました。

エド・オリバー

ユリ・アボ REINGは性別や人種など、二元論の色々な側面において世のなかのあり方や表現がとても偏ってしまっていることに違和感を持っています。二元論ではない表現を増やすことを活動のコアにしているので、それに共感してくれたメンバーたちで雑誌の編集チームを組みました。

ユリ・アボ

──雑誌『IWAKAN』は世のなかの様々な違和感を感じる人に寄り添うということから発想されたものですが、目指すものを教えて下さい。

エド 当初の目的は、虎鉄が提案したように雑誌を紙媒体でつくり、男性誌・女性誌のどちらにも入らない雑誌をつくることでした。いまは、例えば地方にジェンダーの情報を届けることや、毎号違う特集にすることで「ジェンダーは全員に影響がある」ということを伝えることです。ジェンダーはこれまでLGBTQや女性だけにまつわるトピックとして扱われてきましたが、「愛情」や「政治」とジェンダーとのつながりを探求するのは、すべてのジェンダーに関わっていることであり、それを考えるきっかけとなって関心を高めていけたらいいなと思います。

──ジェンダーだけではないですよね。

ジェレミー・ベンケムン ジェンダーだけではないですが、ジェンダーを通していろんなことについて探りたいです。エドが言ったように、ジェンダーはクィア当事者だけに影響があるのではなく、すべての人に影響があることを意識してほしい。普段聞こえない声やインビジブルとされている現実を取り上げることで、いろんな人々がずっと共存しているとことを伝えたいのです。

ジェレミー・ベンケムン

エド 例えば3号「政自」のときは、政治について話すよりも、ジェンダー問題に政治がどのような影響を与えているのかという文脈で企画しました。政治だけだと幅が広すぎて、何についても語れるので、ジェンダーといろんなトピックのつながりを探ってみました。

──社会に「違和感」を問いかけていくことはなぜ重要だと思いますか?

ジェレミー 既存のジェンダーロールから解放し、もっと自由に生きられるようになり、生活が楽になるのではないかと。

エド これまで「違和感」は嫌なものとして扱われており、それを感じることが良くないなど、モヤモヤしている人が多かったと思う。「違和感」があるからこそ、自分をより探求できるのではないかと思います。

 例えば、自分がゲイだと気づいたことも、ジェンダーアイデンティティに違和感を感じていて、男性に関するステレオタイプを考え始めた背景があります。違和感があるからこそ自分を問い直して、さらに自分らしくなれると思います。

中里虎鉄 「違和感」を社会に問い直すことは、もちろん現状や未来を変えていく希望の力になることだと思います。いままでずっと誰かが「違和感」を社会に問い続けてきてくれたおかげで少しずつ社会や歴史が変わっており、私たちも同様に問い続けることでいままで闘ってきた人たちとの連帯もできると思います。

中里虎鉄

コミュニティー拡張の感覚での雑誌づくり

──普段はどのようなキュレーションで雑誌を構成していますか? 

エド センスで(笑)。

アボ 大事にしているのは、さっき話したビジュアライズです。言葉で伝えることには限界がありますので、感覚的なビジュアルで伝えていることに『IWAKAN』は評価をもらっています。例えば3号の「違和感瞬間」では、見開きのページの「クィアのための桜を見る会」をやりましたが、言葉で説明すると陳腐でしょう。言葉よりアートや写真で伝えることは、与えられる情報のボリュームが違いますから。

 いっぽうで、それだけだと感覚で分かる人だけに限定されてしまいますので、テキストとのバランスをとることも大事にしています。感覚だけで伝えることと、感覚では伝えきれないことがありますから。時事問題や歴史など、主観では語れないトピックはとくに慎重に扱います。その両方がひとつの雑誌のなかにあることで、とっつきやすい側面と詳しく知りたい部分のフォローアップを構成上で気をつけています。雑誌のページをすべて印刷して壁に並べるなどページの流れも大事にしています。

──各号のテーマについて伺います。これまでの「女男」「愛情」「政自」をそれぞれ選んだ理由は何ですか?

ジェレミー 第1号「女男」では、マニフェストとして男女二元論を問いかけてみました。「政自」は、今年10月に選挙があるので、そのタイミングにあわせて政治の話をしたいという背景がありました。

エド 「愛情」を出した3月は、「愛」が頻繁に語られるバレンタインデーとホワイトデーの時期です。セクシュアリティの観点では、自分が誰を愛すべきかという問いがあり、ジェンダーを語るうえでは、自然と愛の話を語らないといけないです。1号で二元論(バイナリー)を問い直しているので、自然と次のステップは愛情だと思います。

『IWAKAN Volume 02|特集 愛情』より、違和感瞬間「泡沫の縁」 © IWAKAN & Edo Oliver All Rights Reserved

──これまでの特集には、様々なアーティストやクリエイターの方が参加しました。参加アーティストをどのように決めて招待していますか?

ジェレミー コンテンツ会議でそれぞれのメンバーが提案してディベートし、コンセプトと相性の良さそうな人を決めていくという感じです。

アボ アウトプットとしての作品を見て素敵だと思うことも大事ですが、つくり手自身がどのような考えを持っているか、どのような人がつくっているかをメンバーがキャッチアップしてプレゼンテーションします。

ジェレミー 知り合いのつながりで幅広いアーティストにアプローチしています。断られるケースもありますが、リサーチを繰り返したうえで何回も依頼書を送ります(笑)。

──具体的な例はありますか?

ジェレミー 3号「政自」では、ダムタイプにどうしてもインタビューしたかった。90年代後半の日本でHIVについて強く語っていたアーティストコレクティブで、政治のテーマにピッタリだったからです。メンバーの薮内美佐子さんは、「ウーマンズ・ダイアリー」など個人の活動でもフェミニズムと関わっており、3号に携わってくれたアキラ・ザ・ハスラーさんのおかげで薮内さんに依頼を受けていただきました。薮内さんはあまり取材を受けない人なので、依頼を送った最初のときは「間違いだ」と思っていたようです。日本の現代アートにおいては少し違う世代だからこそ、若い世代に伝えられることが多くあると思います。

虎鉄 この編集チームができたように、同じビジョンを見ている人にお願いすることが多いです。アーティストだけではなく、クリエイターやアクティビストの方もそうです。例えば3号の小玉さんとはコミュニティが近くて、『IWAKAN』で関わってもらったアーティストさんとつながりがありましたが、直接的なつながりはありませんでした。いろんな方法でアプローチしていますが、基本的には自分たちの周りのコミュニティを拡張していく感覚で参加してもらっていることが多いです。

『IWAKAN Volume 03|特集 政自』より、《触覚と横断》 © ⼩⽟智輝 All Rights Reserved

エド コミュニティや業界で知られているアーティストの作品ばかりを紹介するのは、『IWAKAN』でやる意味ないですから、まだ依頼していないアーティストや、あまり知られていないアーティストを応援していきたい。それが雑誌の力だと思います。

 3号では、初めての「オープンアートコンテスト」をやっていろんなかたちのアートを募集しました。このような機会は今後も『IWAKAN』で増えていき、自分たちのコミュニティを大きくしつつ、いろんなジャンルのアーティストを応援していきたいと思います。

『IWAKAN Volume 03|特集 政自』より、《ひとり妄想選挙ポスター》 © super-KIKI All Rights Reserved

それぞれの独特な色を持つ編集チーム

──創刊メンバー4人のそれぞれの役割は?

ジェレミー いまはなんでもやっていますね。毎号のコンテンツ制作が始まるときに、それぞれのメンバーがアイデアを持ってきてディベートしながら、内容を固めていくというプロセスです。

アボ ジェレミーとエドは海外で生まれ育っているので、日本へのジェンダー観に良い意味で批判を持っていて、虎鉄はノンバイナリーという視点を持っています。私はシスジェンダーの女性ですが、自分のなかには「クィアネスがないか」という疑問に、「そんなことはないよね」とこの編集部は気づかせてくれました。いっぽうで、マジョリティ性をもったひとりの女性である私の視点も取り入れて、ジェンダーのことをあまり知らない人にも触れられるようなコンテンツにしていくことを企画のプロセスのなかで釣り合わせています。

虎鉄 ほかの商業雑誌の制作体系やプロセスとはやり方が全然違うので、インデペンデントな雑誌だからこそ自由であり、挑戦して毎回変化させながらつくることができます。決まった役割分担はなくて、個人のアイデンティティやルーツをひとつの役割として持つことはこれからも共通しながらも、制作体系やプロセスは変化していくと思います。

『IWAKAN Volume 03|特集 政自』より、《Cambrian Explosion》 © ⾼⽥冬彦 All Rights Reserved

アボ 「これやりすぎるとニッチに見えすぎない?」とチューニングが得意な側と、逆に純度120パーセントで「これおかしい?面白いかな?」と思える側もいます。

エド それぞれのメンバーの得意なことがありますが、役割を決めないことで面白い話が生まれます。すべての企画に全員が関わっていますので、担当者の思いはそれぞれですが、全員の考えが溶け合わさった雑誌になっています。

──いまの編集チームは、雑誌の企画や編集のほかに、それぞれどのような個人的な活動をされていますか?

エド 写真家として活動しています。来年1月末に高円寺の「タタ bookshop / gallery」で初めての個展をやります。ほかには、ドラァグ・パフォーマンス・アーティストとしても活動しています。

──どのようなきっかけでドラァグ・パフォーマンスの活動を始めたのですか? 

エド 私は5〜6年前からドラァグメイクをやっていますが、パフォーマンスができる舞台がないことにずっとモヤモヤしていました。『IWAKAN』創刊のときにパフォーマンスナイトがあって、久しぶりにドラァグ・パフォーマンスをやりました。パフォーマンスをしたかった理由は、8歳の頃からずっと舞台に立っている人間なので、ダンスやパフォーマンス、カナダのテレビにも出演していたからです。 

──ドラァグ・パフォーマンスをしているとき、やはり力強さを感じますね。

エド そうです。さらに自分になる感じもします。ヒールを履いて背が高くなって、舞台からの目線を感じて、本当に普段できないことが表現できるようになります。自分はよく話すタイプですが、考えや気持ちを表す人ではありませんので、パフォーマンスのときは心にある感情を全部出せる瞬間でもあります。 

──虎鉄さんは? 

虎鉄 普段はフリーランスでフォトグラファーやライティング、映像コンテンツの企画プロデュースなどをしています。最近、東京と宮城県・気仙沼で2拠点生活を始めたので、地方でいろんなマイノリティー性を持った人たちがもっと生きやすい街づくりをしたくて、来年度からジェンダーに関するイベントや講座を街単位で開催できるように準備しています。 

──地方でのクィアコミュニティの実態はどうですか?

虎鉄 地方のクィアの人たちは、自分のことをオープンにして生きている人はほとんどいないです。オープンにして不条理と闘うことよりも、自分たちの生活水準を上げることを重要視している人が多いので、政治的な考えとして保守派の人がクイアのなかでも多いです。選挙でも保守的な政党を選び、街としてはマイノリティに対しての政策が全然進んでいかないのが現状です。知識やコミュニティ、コンテンツに出会えるハードルが非常に高いから、私たちが置かれている現状が不平等であり、変えていく必要、権利があると気づけていない人も多い。偏ったシスヘテロノーマティブな考えをもろに受けてしまっているクィア当事者もかなり多いという印象です。

──街単位でのイベントや講座では、具体的にどのようなことを考えていますか?

虎鉄 若者が参加できるようなカジュアルなものから、行政や街づくり団体、地域企業に向けたアカデミックなものまで、様々な方向からジェンダーやセクシュアリティについての知識と構造を知れるような勉強会やイベントを考えています。自分以外の当事者に出会う機会や、ロールモデルにできるようなクィア当事者のイベントなど、そうした場づくりをこれからしていきたいと思います。

ジェレミー 僕は『IWAKAN』以外で、コマーシャルフォトグラファーをフリーランスでやっています。同時に作品もつくっていて、アーティストとして展覧会をやりながら様々なプロジェクトにも関わっています。ジェンダーやアイデンティティのテーマも持ちながら、個人的なテーマも扱っていて、考え方としては『IWAKAN』と近いですね。

──普段はどのようなテーマで制作していますか?

ジェレミー 自分の作品では、ゲイ男性や異国人として考えさせることを取り上げています。感覚から生まれる気持ち、不安さや嬉しさ、美しさなど。暗い感覚が多いかもしれませんが、日常と距離をとってみると、ある人、景色、場所など、経験したことすべてが影響しあうことに気づいて、個人の経験もすこしずつ変わっていきます。人の身体には限界がありますが、精神がつねに限界なく変化し続けるようなことを考えながら作品をつくっています。

『IWAKAN Volume 02|特集 愛情』より、《愛情/服従》 © Jeremy Benkemoun All Rights Reserved

アボ 私は会社員をやっています(笑)。『IWAKAN』をプロデュースしているクリエイティブ・スタジオREINGの社員として、普段はプロデューサー業を務めています。普段のREINGでの仕事はクライアントとジェンダーやインクルーシブの文脈で広告やキャンペーンをつくったり、社内外での啓蒙活動やチームのマネジメントもやっています。私はやりたいことを自分が思いつくよりも、誰かがやりたいことを「やろう!」とサポートして始めていくのが得意です。

 『IWAKAN』では、巻頭のステートメントやインタビューを書いたり、「不完全な私のビューティーハンドブック」というコラムを毎号書かせてもらっていて、思いを言葉にする行為を自分に課し続けています。クリエイターとしての活動は専門ではないですが、『IWAKAN』が考えることを外側に伝えていくことや、自分のクリエイティビティを鍛えるための時間として大事にしています。

蔭山ラナ ジェレミーとすこし似ているかもしれませんが、自分探しの時間を長くとっています。今年3月に大学を卒業し、ギャップイヤーとして好きなことに挑戦する1年を過しています。そのひとつとして5月から『IWAKAN』の編集部で活動し、REINGの業務をアシストしています。また、就職活動と平行に日本の地方を駆け巡ったり、農業ボランティアを通じて人との出会いを大切にしています。

 私は唯一読者として入ってきたメンバーなんです。去年10月に『IWAKAN』の1号が創刊したときに、卒業論文で文学におけるセクシュアリティの検閲を研究していて、表現の自由が奪われたアーティストにフォーカスしていました。なので、すべてを自由に表現している『IWAKAN』に出会ったときはすごく感動しました。実際にメンバーに会ってみると、それぞれのマジョリティ性とマイノリティ性を活かしたユニークな人たちで、フラットな関係性で、お互いを信頼しあえるチームであることは『IWAKAN』の独特な色だと思います。

蔭山ラナ

コミュニティの壁を超えて発信し続ける

──『IWAKAN』が創刊してから1年以上経っていますが、この1年間を振り返ってどう思いますか?

ジェレミー 創刊のときはZINEのテンションでつくっていたのですが、反響があれだけあったことに驚きました。コンテンツややり方など『IWAKAN』自体も大分成長したと思います。

エド 反響が想像以上だったことに驚いたと同時に課題も感じています。コミュニティ内では1号からヒットしていますが、外に持っていくことにどうしても壁を感じます。アートやジェンダーに関心のない人にも読んでもらいたいと思います。

──コミュニティ内と外で、どのような反応がありましたか?

ラナ 『IWAKAN』へのアクセスのしやすさは、コミュニティ内の人やある程度ジェンダーについて知っている人に限られています。なるべくたくさんの人に手を差し伸べることを東京に限らずやっていきたいです。セールスとPRをやっているなかで、第一の読者となる書店さんの反応を見ると、「愛情」よりも「政自」への関心が強く感じられました。4号も期待に答えないといけないプレッシャーがありますが、さらにコミュニティを広げていきたいと思います。

エド 雑誌の取材を受けたときに、マス向けのメディアではジェンダーをメインに取り上げられないため、『IWAKAN』の存在を喜んでもらえました。『IWAKAN』のおかげでコミュニティ外のメディアでジェンダーについて触れるきっかけをつくっているのではないかと思います。

──今後、『IWAKAN』を通して変えたいことや実現したいことは何ですか?

ラナ 大小形異なる違和感を感じながらも逃してしまう感覚を雑誌として言語化・ビジュアル化・作品化することが『IWAKAN』の特色であり、読者には、自身や他人の心の呟きやため息に寄り添える人になれる勇気を届けたいです。

エド カルチャーを応援したいです。日本はほかの国と比べて、政府からの文化支援は少ないでしょう。だからこそ、カルチャーを生み出すハードルが高いのです。アーティストやアクティビスト、ライターが思っていることをアウトプットできる場所が『IWAKAN』を含めて増えるといいなと思います。

ジェレミー これまで『IWAKAN』を通して変えたいことはたくさんありました。コロナになってからは、大きな環境を変えたいより自分らしく生きることができれば、それはすでに大きな進歩なのではないかと思いました。『IWAKAN』は新しい考え方を広げるきっかけになったらいいなと思います。 

虎鉄 『IWAKAN』が誰かの居場所になってほしいです。10代のときに自分のセクシャリティーに気づいたのですが、大きな絶望を感じて未来に希望を感じられなかった時期がありました。これからを生きる世代や自分のアイデンティティと向き合っていく人たちに、同じように感じてほしくない。自分と向き合っていく過程のなかで、『IWAKAN』みたいな雑誌と出会えたら、誰かの居場所になれるんじゃないかなと思います。

アボ 100号まで『IWAKAN』が続いてほしい。『IWAKAN』は私たちのこの時代の違和感に寄り添う雑誌として存在していますが、社会は簡単に変わらないし、社会は本当に平気で個人の意思や声を潰してくると思います。だからこそ、時代の違和感につねに寄り添える雑誌であり続け、同じ思いを持つ人たちが連帯できるツールとなる必要があります。

『IWAKAN Volume 02|特集 愛情』より、《憧れ》 © Niko Wu All Rights Reserved

 LGBTQ当事者だけのための雑誌ではなく、マジョリティと呼ばれる側の人がこのようなコンセプトに触れるのも大事なことだと思います。私は幸運なことに、友達や身近な同僚が当事者であることで、自分のなかの「ふつう」という考え方が広くなりました。だけど、人と出会えるか出会えないかは運じゃないですか? もし、身近に人と接する機会がなかったとしても、雑誌というみんながアクセスしやすいものが誰かの考えをほぐすきっかけになるなら、そのために『IWAKAN』を使ってほしいです。まだ出会っていない人たちと出会うためのツールとして、この雑誌を盛り上げ続けていきたいと思っています。

──最後に、今後のプロジェクトや次号について伺いたいです。

アボ 次号は来年4月を目標に鋭意製作中です。テーマもいま絶賛議論中ですが、春に出すタイミングですので、日本のプライドウィーク直前に出す意義性のあるテーマを考えています。

エド ウェブサイトも制作中です! ウェブサイトは年明けに公開しますので、雑誌のコンセプトや新しいオンラインでしか見えないコンテンツを発信できるように準備しています。

ジェレミー 来年2月末に、3号の展覧会を名古屋のC7C gallery and shopに巡回する予定です。毎号の発売展覧会をずっと高円寺のタタ bookshop / galleryで開催していますが、東京以外でのイベントにも力を入れたいです。

──ありがとうございました。

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