固有の身体から眼差される社会の歪み。飯岡陸評 「MOTアニュアル2021 海、リビングルーム、頭蓋骨」
日本の若手作家によるテーマ展として、東京都現代美術館にて1999年より毎年開催されている「MOTアニュアル」。第17回を迎える今回は、映像を主なメディアとしながら、自らや他者の身体をとらえた作品で、国や地域を超えて共鳴する3名の作家を取り上げている。複数の社会問題が顕在化した世界で、アーティストによる同時代的な表現を提示する本展の試みを、キュレーターの飯岡陸がレビューする。
日本の若手作家によるテーマ展として、東京都現代美術館にて1999年より毎年開催されている「MOTアニュアル」。第17回を迎える今回は、映像を主なメディアとしながら、自らや他者の身体をとらえた作品で、国や地域を超えて共鳴する3名の作家を取り上げている。複数の社会問題が顕在化した世界で、アーティストによる同時代的な表現を提示する本展の試みを、キュレーターの飯岡陸がレビューする。
ASAKUSA(東京)にて、香港を拠点とするメディア・アーティスト、ロイス・アンの国内初個展が開催されている。「満州国」をテーマとした2つの映像作品が公開された本展を、文化研究者の山本浩貴がレビューする。
2021年6月から7月にかけ、府中市美術館にて開催された本展では、日本の観光地や景勝地がどのように描かれ広まっていったのかを、絵画をはじめ写真や版画、ポスターなどから探った。歌川広重「名所江戸百景」から、川瀬巴水の新版画、吉田初三郎の鳥瞰図など、時代に沿って変遷をみていく。これらの作品たちは、名所に、人々に、そして作家にどのような影響を与え関係を築いてきたのか。東京ステーションギャラリー学芸員の若山満大が論じる。
6名のアーティストが参加するグループ展「Face Up」が、昨年12月から今年5月にかけて開催された。会場情報を公開しない本展が持つ意味とは何か。コロナ禍における展覧会のあり方から、インディペンデントな活動とその消費にいたるまで、擬態と物流をキーワードに画家・永瀬恭一が読み解く。
現代陶芸家として国内外で高い評価を得る川端健太郎の個展「Knee Bridge」が、京都の現代美術 艸居で開催された。本展で川端は新作の磁器作品約30点を発表。現代陶芸が注目を集める現在のマーケットの状況と照らし合わせながら、器/オブジェの境界を超える川端の造形について清水穣が論じる。
1968年に結成された前衛グループ「集団蜘蛛」のメンバーであった森山安英は、80年代後半から銀一色の絵画作品の制作を開始。今年4月、連作「光ノ表面トシテノ銀色」などを紹介する同名の展覧会が開催された。森山の絵画における「銀色」は何を意味するのか? 同時期に新宿のWHITEHOUSEで行われた、予約制レストランの形式をとるuraunyの個展とあわせて椹木野衣が論じる。
銀座メゾンエルメス フォーラム(東京)にて、ロンドンを拠点とするキュレーター、マチュウ・コプランによる展覧会「エキシビジョン・カッティングス」が開催された。展覧会の枠組みを問い直してきたキュレーターが、「カッティング」というキーワードから構想した2つのパートから成る本展を、若手キュレーターとして活動する黒沢がレビューする。
Chim↑Pomの卯城竜太らが運営する新宿のアートスペース「WHITE HOUSE」で開催された磯崎隼士の個展「今生」。独自の死生観と世界の素朴さを追求し、身体的な感覚や皮膚感をシリコン製の人工皮膚や、絵画で表現する磯崎が発表したのは自身の血で描いた絵画作品だ。本展を東京・根津のキュラトリアルスペース「The 5th Floor」キュレーターの髙木遊がレビューする。
武蔵野美術大学の共同研究「日本画の伝統素材『膠(にかわ)』に関する調査研究」の成果発表展として、同大学の美術館・図書館で 「膠を旅する──表現をつなぐ文化の源流」が開催された。膠づくりの歴史的・社会的背景を見つめ直す本展では、現地調査のドキュメントを中心に、実物資料や同館所蔵の日本画を紹介。膠という素材を通して見えてくるものとは何か、キュレーターの小金沢智がレビューする。
美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、7月に公開された全6本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。
2018年、東京大学中央食堂に展示されていた宇佐美圭司の絵画作品《きずな》が、過失により廃棄されたことが発覚した。この件の反省を経て、同大学にて本作の再制作を含む宇佐美の回顧展が開催された。本展について、芸術の保存・継承研究を専門とする筆者が論じる。
敗戦後、アメリカの統治下にあった沖縄に生まれ、本土復帰を求める抵抗運動の嵐が吹き荒れるなか、カメラを通して同地の人々をとらえ始めた石川真生。ドキュメンタリーからフィクションまで、多様な手法を用いるそのスタイルを総数500点あまりで紹介した本展について、批評家・北澤周也がレビューする。
港区で開催された「シアターコモンズ ’21」にて、2月にリモート公開とゲーテ・インスティトゥート東京ドイツ文化センターのリアル会場でのARリモート体験型映画として発表された、中村佑子《サスペンデッド》。病の親を持つ子供の視点から、観客がかつてある家族が住んでいたであろう家を一人ひとり訪ね、二重化された世界を体験する本作について、アーティストのサエボーグが論じる。
東京オペラシティ アートギャラリーで「ライアン・ガンダーが選ぶ収蔵品展」が開催された。会場は、モノトーンの作品のみを集めた「色を想像する」と、薄暗い空間に展示された作品を手元のライトで照らしながら鑑賞する「ストーリーはいつも不完全……」というふたつの展示室で構成。本展をコロナ禍におけるもうひとつの「オンライン展覧会」と位置づけ、ともに見ることの(不)可能性を横浜美術館学芸員の南島興が論じる。
4〜6月、京都国立近代美術館にて「ピピロッティ・リスト:Your Eye Is My Island-あなたの眼はわたしの島-」展が開催された。初期作から最新作にわたる、身体、女性、自然、エコロジーをテーマとした作品約40点で構成。近年特徴的な、ダイナミックなプロジェクションによる映像をソファやベッド、クッションといった親密な空間のなかで鑑賞する本展を、愛知県美術館学芸員の中村史子がレビューする。
リボンや布、木、ビーズなど身の回りにある素材で作品を制作し、光や風など、自然現象のうつろいを繊細にとらえた作品で知られる藤田道子の個展「ほどく前提でむすぶ」が、茅ケ崎市美術館で開催された。新作インスタレーションで用いたリボンに意味づけた作家の新しい試みとは? 美術批評家の中島水緒がレビューする。
ホンマエリとナブチによる二人組アートユニット・キュンチョメの個展が、神奈川県の民家2軒を舞台に3〜4月にかけて開催された。2011年の結成から10年間に制作した、震災に関わる作品のうち16点を展示。キュレーターの荒木夏実が、本展を通して、キュンチョメの震災をテーマにした活動を総覧する。
アーティスト鈴木ヒラクと、デザイナー大原大次郎の発案によるプロジェクト「ドローイング・オーケストラ」。異なる背景を持つ8名のアーティストが集まり、線を「かく(描く/書く/掻く/⽋く/画く)」という⾏為を通して協働の空間を切り拓く、広義での「ドローイング」セッションだ。この試みから見出されるものとはなにか? キュレーターの檜山真有がレビューする。
美術手帖では、批評家や学芸員らによる展覧会レビューを毎月掲載。そのなかから、6月に公開された全7本をお届けする。各レビューの詳細はリンクから全文をチェックしてほしい。
あいちトリエンナーレ2019にて、豊田市の旅館を舞台に映像インスタレーションを展開したホー・ツーニェン。シンガポールを拠点に国際的に活躍する作家の最新作が、山口情報芸術センター[YCAM]で展示中だ。1930〜40年代、日本で大きな影響力を保持した「京都学派」をテーマに、VRとアニメーションを組み合わせた本作について、あいちで同作家のキュレーションを担当した、豊田市美術館学芸員の能勢陽子が論じる。