清川あさみと名和晃平、初の二人展「Invisible Garden」が開幕。9メートルの共作が描く「みえないにわ」【2/3ページ】

9メートルの共作が描く「現代の神話」

 白を基調とした3階の展示室で中心的な位置を占めるのが、清川と名和による大型新作《PixCell-Our New World》(2026)だ。全幅は約9メートル。今回の二人展を象徴する作品と言える。ベースとなっているのは、清川による《Our New World》。箱根の自然風景や生成AIによって生み出されたイメージなどを組み合わせ、ひとつの風景を構築したものだ。その表面全体を、名和による無数の透明な大小の球体=セルが覆っている。

清川あさみ・名和晃平《PixCell-Our New World》(2026)
清川あさみ・名和晃平《PixCell-Our New World》(2026、部分)

 清川はこの作品について、「現代の神話」を残したいという自身の関心から生まれたものだと語る。「この時代も、もしかしたら未来における古代になるかもしれない」と考え、神話や自然、日常で目にした風景、そしてAIによって生成した見たことのない生物までをひとつの画面へとつないだ。

 近づけば、セルのひとつひとつがレンズのように背後のイメージを拡大し、歪め、分断する。いっぽうで距離を取ると、それらは再び巨大なひとつの風景として結びついて見える。清川によって編まれたイメージは、名和の手によって物質としての厚みを与えられ、「見る」という行為そのものを揺さぶる存在へと変化している。

清川あさみ・名和晃平《PixCell-Our New World》(2026、部分)

 名和自身も、今回セルを通して清川のイメージを拡大することで、画面のなかに含まれる細かなテクスチャーや情報を改めて発見したという。図像を記号や象徴として論理的に理解するだけではなく、「知覚して感じて受け取っていく」ような作品を目指したと説明。また、セルによって光そのものが画面へ取り込まれていく今回の試みを、絵画への新たなアプローチとしてとらえている。

 とりわけ注目したいのは、本作に生成AIによるイメージが組み込まれていることだ。現実世界の記録と、AIが生成した「存在しなかったかもしれない風景」が同一の画面に共存し、さらにその表面が透明なセルによって再度変換される。現実と非現実の境界だけでなく、それを見分けようとする私たち自身の視覚や認識もまた、ここでは作品の一部として問い直される。