霧のなかに現れる「星」
8階のもうひとつの展示室では、《Rose》(2007)と《Calcium Carbonate》(2026)がひとつの空間を構成している。《Rose》は、7基のスポットライトと人工霧による作品。室内の中心へ向けて光を照射し、その光線が霧の粒子によって可視化されることで、複数の線が空中で交差する。特定の位置から見ると、それらは三次元の星形のような像を結ぶ。

星の像は固定されているわけではなく、鑑賞者が位置を変えれば線同士の関係も変わる。霧そのものも、近づくと透明に見える。外光が差し込む時間帯には光の線が淡くなり、室内の明るさによってもその見え方は変化する。捉えたと思った像が身体の移動や環境の変化によって失われるという状態が、ここでは光と霧によってつくられている。
その《Rose》を取り囲む壁面に施されたのが、《Calcium Carbonate》(2026)だ。炭酸カルシウムによって壁面を白く覆う本作は、この会場のためにつくられた新作という位置づけになっている。本作は《Rose》の展示空間を検討する際に、単純に暗くするのではなく、壁面にテクスチャーを残しながら光を受け止める方法として発案された。
「東京、銀座5丁目4-1」という特定の場所に集められた作品は、光や空気、身体の動きによって絶えず異なる状態を見せる。そこに現れる像は固定されることなく、鑑賞者が立つ位置や訪れる時間によって変化していく。本展は、そうした一時的な現象を通じて、私たちが空間をどのように見ているのかをあらためて意識させる構成となっている。



















