エルメス財団が主催する「スキル・アカデミー」のプログラムの一環として、「金属に学ぶ、五感で考える:夏のオープンクラス」が東京・葛飾区のSKAC(SKWAT KAMEARI ART CENTRE)で開催される。会期は7月15日〜8月16日。

自然素材に関わる職人技術や手わざを伝承、拡張、共有することを目指し、エルメス財団が2014年にパリで始動した「スキル・アカデミー」。日本では2021年より木や土をテーマに展開されてきたが、2025年から26年にかけては「金属(メタル)」に焦点が当てられている。本企画「夏のオープンクラス」は、中高生を対象に開催された「春のワークショップ」の報告展示と、3組のアーティストによるグループ展「結合」から構成され、様々な視点から金属という素材の探求を深めるプラットフォームとなる。
有機物やテクノロジーとの交流。3組のアーティストが提示する新たな生態系
中心となるグループ展「結合」では、金属のミクロな構造やメカニズムの探究を参照しつつ、実験的な手つきで金属と対話を行う3組のアーティストの実践が紹介される。金属と非金属、人工と自然、生命と非生命といった対立する要素が、互いの可能性を補完し合う「結合」の姿が展示される。


スペイン生まれのレオノール・セラーノ・リヴァスは、無機物である金属と有機物である植物が結合したハイブリッドな生態系を提示する。電解溶液のなかで金属の被膜を生成する電気鋳造を応用し、朽ちゆく植物の身体を金属の「第二の皮膚」で保護した《Where We Expect to Find Flowers n3》や《Where We Expect to Find Flowers n17》、そして空間体験を構築する《Here Be Dragons》(いずれも2025)などを通じて、人間以外の存在との関係性を変容させる可能性を見出す。


アート・デザインユニットのPlayfoolは、金属の甲羅に覆われたカメ型ロボット《a re(imitation) of Life》(2024)を展示。ロボットは周囲の環境に呼応しながら自律的に動き、鑑賞者に接近する。ボディに手で触れ、コミュニケーションを図ろうとする時、ロボットは内部の電子回路を通して反応を返す。この体験は、人が電子機器の表面的な操作の裏側で「金属が電気を通す」といった不可視の物理現象に関わっているという事実を示唆する。


花火師としても活動する島田清夏は、熱を加えられた電子が安定した軌道に戻る瞬間に知覚される「色(光の波長)」である炎色反応の原理を応用した花火をテーマに作品を制作する。《Fireworks for another world that never came》(2022)、《here/there》(2025)、《R9+C9QP》(2020)などの作品を通じ、人々の想いを投影するスペクタクルとなってきた花火の背景にある物質性や、土壌中の微生物の働きによって有機物とカリウム(金属)を結合させてきた日本の歴史的背景を問いかける。
ジュエリー・デザイナーによる空間構成と、身体的な感性を育む体験
本展のセノグラフィー(会場構成)は、長崎を拠点に活動するジュエリー・デザイナーの奥山慎が担当している。伝統的な技法や手仕事を軸に、素材とのコミュニケーションから生み出される重厚感と現代的な軽やかさが共存する奥山の視点が、本展の空間を立ち上げる。
また、10組の専門家を迎え、橋やタワーといった建築や、職人の手わざ、芸術表現などの「金属のスキル」を紹介した中学・高校生向けの催し「春のワークショップ」の成果も報告される。さらに会期中には、レオノール・セラーノ・リヴァスやPlayfoolによるアーティスト・トークのほか、DAIKEI MILLSを講師に迎える「スチールの足場で、建築する」や、奥山慎と鍛⾦を体験できる「素材がジュエリーになるまで」といった実践的なワークショップも企画されており、多角的なアプローチで金属への探求を深める機会となっている。




























