「像は燃え、像は歪み、そして光に昇華する」(UESHIMA MUSEUM)開幕レポート。像はいかに消え、光へと変わるのか【3/4ページ】

顔を隠すこと、像を揺るがすこと

 3階「肖像と隠蔽」では、「人を描く」というもっとも古典的なイメージの形式が問い直される。

 象徴的なのが、エヴァ・ユシュキェヴィチの《Portrait with Cordyline》(2025)だ。歴史的な女性肖像画を思わせる華麗な衣装をまといながら、人物の顔は植物によって覆われている。長谷川は、伝統的な肖像画において女性が「見られる存在」として表象されてきたことに対し、ユシュキェヴィチの作品には、顔を隠すことで「見られないこと」を自ら選択するという反転があると説明する。装飾性や美しさを排除するのではなく、それらを最大限に保ちながら、見る側の視線から人物を後退させている点が重要だという(同作は現在、マドリードのティッセン=ボルネミッサ国立美術館で開催中のユシュキェヴィチ個展に貸し出されており、UESHIMA MUSEUMでの展示開始は9月20日頃を予定している)。

「肖像と隠蔽」の展示風景より、展示室中央の立体作品はアニカ・イ《Releasing the Human From The Human》(2019)

 同フロアでは、友沢こたおの《slime CLXXXIX》(2023)、小西紀行の《untitled》(2018)、アニカ・イの《Releasing the Human From The Human》(2019)、森本啓太アンディ・ウォーホルジュリアン・オピーら、まったく異なる方法で身体や人物像を扱う作品が並ぶ。

 4階「断片と都市」で、展示は再び都市へと戻る。ただし1階で提示された都市のポップな表層とは異なり、ここで扱われるのは、都市が個人の内部に残していく記憶や感情の断片だ。

「断片と都市」の展示風景より、エブリデイ・ホリデイ・スクワッド、篠原有司男、金氏徹平、桑田卓郎、森靖、ナイジェル・クックらの作品が並ぶ

 エブリデイ・ホリデイ・スクワッドの《patchwork my city / Shibuya》(2022)をはじめ、篠原有司男金氏徹平桑田卓郎、森靖、ナイジェル・クックらの作品が、渋谷という実際の都市空間とも呼応する。断片化された物体や既視感のあるイメージ、ノイズやグリッチが集積し、ひとつの都市像を形成していく。

「断片と都市」の展示風景より、左はナイジェル・クック《Nemesis》(2026)

編集部