17世紀オランダ絵画の名品
フェルメールの前段となる、展覧会前半のパートも紹介したい。ここは「歴史画」「肖像画・トローニー」「風俗画」「静物画」「教会内景画」「風景画」という6つの章で構成されており、マウリッツハイス美術館側の選定により厳選された作品が各章1〜2点ずつ、計10作品紹介されている。日本初来日となる作品は全4点だ。

「歴史画」では、レンブラントに大きな影響を与えたとされるピーテル・ラストマンの《ラザロの復活》(1622)に加え、セイザル・ファン・エーフェルディンヘンの《正直者を探すディオゲネス(ある家族の擬意的肖像画)》(1652)が並ぶ。両作品とも来日するのは初めてだ。

「肖像画・トローニー」では、フェルメールと並び17世紀オランダ美術を代表する芸術家、レンブラント・ファン・レイン(1606〜69)の《笑う男》(1629〜30頃)が紹介されている。肖像画やトローニーの名手として知られるレンブラントの若き日の傑作であり、小ぶりな画面でありながら、金箔を貼った銅板を支持体に用いた実験的な手法や大胆な筆致など、後年のスタイルへとつながる絵画の要素が凝縮されている。

「風俗画」では、賑やかな群像画で知られる巨匠ヤン・ステーン(1629〜79)の《老いが歌えば若きが笛吹く》(1663〜65頃)が登場。本作は、「老人が歌うように、若者は笛を吹く」というオランダの諺を題材に、世代を超えた家族が音楽や酒、喫煙を楽しむ姿を描いたもの。ステーンの全盛期にあたる1660〜70年代に制作された代表作で、力強い構図と細やかな人間味あふれる描写は、当時から高い評価を受けてきた。

「静物画」の章では、当時としては珍しくヨーロッパ全域で高い名声を獲得した女性画家マリア・ファン・オーステルウェイクによる《装飾的な壺の花》(1670〜75頃)を展示。神を象徴するヒマワリ、闇を表すケシ、神への服従を示すヴィーナス像などが配置され、作中に宗教的なメッセージが込められている。タイムやトリカブトといった当時めったに描かれなかった珍しい植物の描写も見どころだ。
久々の《真珠の耳飾りの少女》の来日ということもあり話題となっている本展だが、いっぽうで作品数12点に対して一般チケット3000円という高額の設定や、抽選制による鑑賞枠の制限など、鑑賞に至るまでのハードルの高さも感じずにはいられない。展示規模と価格のバランス、そして展示を見たくても見られない人が多く生まれてしまう構造には、課題があるとも言えるだろう。
特定の目玉作品に大きな注目が集まる大型展覧会において、いかに充実した鑑賞体験と開かれた空間を両立させていくか。本展は、17世紀オランダ絵画の魅力を伝えるとともに、これからの展覧会のあり方を考える契機にもなり得るだろう。
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