大阪中之島美術館で、「フェルメール《真珠の耳飾りの少女》展 17世紀オランダ絵画の名品、奇跡の再来日」が開幕した。会期は9月27日まで。監修はマウリッツハイス美術館 コレクション・研究部長のユーディト・ニーセン、日本側監修は神戸大学大学院人文学研究科教授の宮下規久朗、担当は大阪中之島美術館主任学芸員の小川知子。
本展は、17世紀オランダ絵画を代表する画家ヨハネス・フェルメール(1632〜75)の傑作を中心に、オランダのマウリッツハイス美術館所蔵の名品を紹介するもの。フェルメール作品2点に加え、レンブラント・ファン・レイン、ヤン・ステーン、パウルス・ポッテル、エマヌエル・デ・ウィッテ、マリア・ファン・オーステルウェイクらによる10点の作品も展示されている貴重な機会となっている。
会場は大きく3つのエリアに分かれている。まずは、本展の表題として掲げられているフェルメールの作品がどのように展示されているのかを紹介したい。
全長20メートルに及ぶ「フェルメール・シアター」
フェルメール作品の展示の前段では、全長20メートルに及ぶ大型映像が紹介される「フェルメール・シアター」が登場する。生涯でわずか37点ほどしか作品を残さなかったとされるフェルメール。ここで上映される約8分間の映像では、フェルメールの生涯と作中で描かれたモチーフをたどるほか、普段の鑑賞では決して見ることのできない拡大投影によって《真珠の耳飾りの少女》のディテールや魅力を多角的に解き明かしていく。また、会場には全37作品の実物大複製画も展示されており、フェルメールの画業の全貌を体系的にたどることができる。
14年ぶりに来日したフェルメール作品
そして、本展の最大の目玉であるフェルメールの2作品は、展覧会の最後を飾る。最初に紹介されるのは、フェルメール最初期の代表作《ディアナとニンフたち》(1653〜54頃)。フェルメールが描いた唯一の歴史画であり、風俗画で評価を確立する以前の20代前半に制作されたとされる。中央に配された月の女神ディアナと、彼女に付き従うニンフ(森の精)たちが森の空き地で静かに過ごす、穏やかな一瞬が描かれている。



青いターバンを思わせる色調の通路を抜けた先に展示されているのが、フェルメールの代名詞とも言える最高傑作《真珠の耳飾りの少女》(1665頃)だ。じつに14年ぶりの来日となる。フェルメールが33歳頃に描いたとされる本作は、特定の人物の肖像ではなく、特定のタイプや性格を表現する「トローニー」に分類される。理想化された表情と異国風の装いが神秘的な雰囲気を醸し出し、少女が頭に巻く青いターバンには、当時「金より高価」とされた鉱物のラピスラズリからつくられる「ウルトラマリン」という絵具が使われている。広い展示室に本作1点のみが飾られた空間には、作品を読み解く鍵となる、モチーフや技法の詳細な解説に加え、制作に用いられた顔料も展示されており、多角的に鑑賞を深められる工夫が施されている。なお、本作は撮影が可能であり、会期中は多くの人が撮影に興じることも予想できる。
同館のマルティネ・ゴッセリンク館長は、「当館にとって、この『少女』の旅は、日本の皆さまに彼女を送り届けられる、おそらくは最後となるであろう特別な機会です」とメッセージを寄せている。国内で本作を目にする機会がこれで最後になるかもしれないことを考えれば、この再来日自体は非常に価値のある出来事と言える。
今回のこの再来日は、マウリッツハイス美術館の改修工事による臨時休館に伴い実現したものだ。通常、海外の美術館から作品を招聘する際は3年ほどの準備期間を要する。しかし本展においては、大阪中之島美術館が、2025年に主催の朝日新聞社から相談を受けたことをきっかけに、急遽企画が動き出したという。美術館側の展覧会スケジュール編成のタイミングと重なり、昨年の秋冬に開催が急遽決定。複数回にわたる会場視察を重ね、異例の速さでこの展覧会が結実したという。
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