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「椋尾篁:アニメ背景美術の先駆者」(佐世保市博物館島瀬美術センター)会場レポート。背景美術の巨匠の仕事を「美術」の歴史に刻み込む

長崎県佐世保市の佐世保市博物館島瀬美術センターで、アニメの背景美術で活躍した椋尾篁の仕事を振り返る展覧会「椋尾篁:アニメ背景美術の先駆者」が開催されている。会場の様子をレポートする。

文・撮影=安原真広(編集部)

 長崎県佐世保市の佐世保市博物館島瀬美術センターで、アニメの背景美術で活躍した椋尾篁(むくお・たかむら)の仕事を振り返る展覧会「椋尾篁:アニメ背景美術の先駆者」が開催されている。会期は4月25日~5月24日。企画はインディペンデント・キュレーターでアーキビストの明貫紘子。

 椋尾篁は1938年長崎県佐世保市三川内町生まれ。三川内町は「三川内焼(みかわちやき)」の産地であり、椋尾の父・菊五郎はその絵付師だった。高校卒業後、大手印刷会社に勤務するも、画家を目指して武蔵野美術学校(現武蔵野美術大学)洋画科に入学。その後、手塚治虫が設立した虫プロダクションでアニメーションの美術監督を務めていた半藤克美に誘われ、国産初のテレビアニメ『鉄腕アトム』(1963〜66)の背景を描くようになる。これをきっかけに、椋尾はアニメーションの世界での活動を本格的に始め、ムクオスタジオを設立した。りんたろう監督の『銀河鉄道999』(1979)、『さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅』(1981)、『幻魔大戦』(1983)、『火の鳥・鳳凰編』(1986)、高畑勲監督の『セロ弾きのゴーシュ』(1982)といった劇場作品の美術監督を務めたほか、高畑勲監督の『母をたずねて三千里』(1979)、佐藤順一がシリーズディレクターを手がけた『悪魔くん』(1989〜90)や『美少女戦士セーラームーン』(1992〜93)などのテレビシリーズの背景も数多く手がけた。1992年没。

椋尾とりんたろう監督が初めてふたりで手がけたテレビアニメ作品『善太と三郎』のパイロット版のための美術ボードなど(1973頃)。結果的にパイロットフィルムをつくったのみで放映には至らなかった

 本展は、椋尾の故郷である佐世保市にて、椋尾が遺し、妻が保存していたという手描きの背景画、美術設定、スケッチなど約100点を展示し、その仕事の全容を紹介するものだ。企画した明貫は、開催に至るまでの経緯を次のように語った。「『アニメ背景美術に描かれた都市』(谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館、金沢、2023)を企画した際も同じ思いだったが、アニメの背景美術をアーカイブし研究していくことの重要性をつねに感じている。大きな功績を残したものの、いまだ取り上げられていない背景美術の重要人物も多く、椋尾はそのひとりだった。スタジオジブリ作品で活躍した男鹿和雄や山本二三は展覧会が企画され、全国に巡回して人気を集めているが、それは同スタジオがスタッフの仕事を積極的に記録してきたからともいえる。まだまだ記録と研究が追いついていない、重要な美術スタッフの仕事を取り上げなければならず、今回の椋尾展は大きな一歩。今後もこうした展覧会が増えていくことを願っている」。

編集部

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