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「椋尾篁:アニメ背景美術の先駆者」(佐世保市博物館島瀬美術センター)会場レポート。背景美術の巨匠の仕事を「美術」の歴史に刻み込む【3/3ページ】

背景美術を評価するための道のり

 大友克洋の原作をりんたろうが映画化した『幻魔大戦』や、大友が監督と脚本を務めた劇場オムニバス作品『迷宮物語』の1篇である『工事中止命令』(1987)の背景も椋尾が手がけている。世界的に高い評価を得ている大友作品の舞台となった、廃墟と化した新宿や、ロボットたちが作業を続ける近未来の工場は、椋尾の仕事によって下支えされていたことがわかる。

『悪魔くん』(1989〜90)の美術ボード(右上2つ)と美術設定。明るく彩度の高い色調が目を引く

 椋尾は1992年、54歳の若さで世を去ったため、80年代後半から90年代前半にかけてのアニメが最後の仕事となった。この時期の仕事に、佐藤順一がシリーズディレクターを手がけた『悪魔くん』や『美少女戦士セーラームーン』などが挙げられる。会場では『悪魔くん』の美術ボードや美術設定(背景の構造をアニメスタッフに共有する設定資料)を見ることができる。本作の美術ボードは子供たちを対象にした東映動画(現東映アニメーション)のアニメらしい、コントラストのはっきりとした明るい色彩が目を引く。水木しげるによる原作をアップデートしながら、子供たちを魅惑する不思議な世界をつくり上げていったことを伝える、貴重な資料と言えるだろう。

 本展の開催にあたってはクラウドファンディングが実施され、椋尾が関わった作品の監督、あるいは椋尾に影響を受けた美術スタッフをはじめ、多くのアニメ関係者たちが支援に名を連ねたという。椋尾の「絵を描く仕事」はアニメの歴史にどのような貢献をし、いかなる技術によって作品の骨子を支えていたのかを克明に伝える展覧会だ。作品のために描かれてきた職人の絵が、作品として「美術」の新たな語りをつくり出していくダイナミズムを感じることができるだろう。

編集部

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