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「セカイノコトワリ―私たちの時代の美術」(京都国立近代美術館)開幕レポート。90年以降の表現が示すもの【2/4ページ】

「失われた30年」で生み出されたもの

 今回の出品作家らはみな、1990年頃から2020年代、つまり日本社会における「失われた30年」とされる時代を共有している。その作品には、不景気や震災、戦争、急速なテクノロジーの変化により、大きく変化した時代背景が少なからず反映されていると言えるだろう。

 例えば、西宮市大谷記念美術館に収蔵されている藤本由紀夫《SUGAR 1》(1995)は、阪神淡路大震災や地下鉄サリン事件を背景に制作された作品。横向きに設置されたガラス管はモーターによって回転し続け、中にびっしりと詰められた角砂糖がじょじょに崩壊していく。これによって、日常の脆さ、あるいは日常と非日常が連続する現実を静かに示す。

ゆっくりと動く藤本由紀夫の《SUGAR 1》(1995)

 コロナ禍で強く意識されるようになったマスクや呼吸、あるいは他者との距離感。これらをモチーフに作品を生み出した作家もいる。青山悟の《喜びと恐れのマスク(Kissing)》(2020)は、2020年代の「ドレスコード」となったマスクを素材に、キスをする2人をモチーフにしたものであり、コロナ禍の記憶をそこにとどめている。

青山悟《喜びと恐れのマスク(Kissing)》(2020)
「身体性」を想起させる陶磁器と、そこに息や声を吹き込むパフォーマンスで知られる西條茜の作品群

編集部

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